昨秋のことですが、最新のイマーシブオーディオシステム d&b Soundscape 360 を使ったJAZZライブコンサート、大西順子トリオ at 札幌文化芸術劇場Hitaru を聴きに行きました。SAPPORO CITY JAZZ 2020 のオープニング公演です。

 

 会場の様子

 実は全てHitaruの舞台上
 

写真のような下手側の端の席でしたが、イマーシブオーディオシステムの効果により、期待通りとても良く聞けました。

 

各楽器の音が、舞台の下手からドラム、ベース、ピアノの順に見たままの並びで聞こえます。特定の楽器が聞こえにくいということもありません。

また、演奏が盛り上がってきて各楽器が強く弾かれ音量が増しても、音が崩れずに解像度が保たれます

従来のステレオシステムでは体験できない音だと感じます。

 

PA分野でのイマーシブオーディオシステムというと、音像を動かすことや残響を増やすことが注目されがちですが、私は上に述べた、

”見たままの位置から音が聞こえることにより全ての客席で音が自然に聞こえるようになる”

ことと、

”オーディオバス内での各信号の干渉の影響が低減されることによる音質の向上”

が、本質的で大きなメリットだと思います。

 

実際、d&b Soundscape の開発者、Ralf Zuleeg氏は、ステレオシステムでのセンター以外の席の音の聞こえ方を改善することが開発のキッカケだと話しています。

 

更には、実際の楽器の位置とは異なる位置にオブジェクトをあえて配置したり、各オブジェクトのパラメータを細かく調整したりして、よりよい音や音響表現に至ることが期待されます。

 

多くの公演や会場にイマーシブオーディオシステムが採用されて、私達の音楽体験がもっと素晴らしいものになることを期待したいです。楽しみです。

 

ホール等のスピーカシステムの改修計画の際は、スピーカだけでなく前面パネルの改修も忘れてはなりません。
 

ホール等でスピーカが収納されている部分の開口(前面パネル)は、音を透過するクロスで仕上げられているものの、クロスを張る木枠を補強するための太い下地材も結構あると思います。

 

iPhoneImage.png 改修前のプロセニアムスピーカ開口部の例

 (壁の裏側から見る)

 右側の黒い箱がスピーカ(ウーハユニット)

 
 

iPhoneImage.png 同サイドスピーカ開口部の例

 右側のグレーのものがスピーカ(ホーンユニット)

 

 
 

改修が計画されるホールのスピーカシステムは、ほとんどが20〜30年前のポイントソースタイプと思われます。
このタイプのスピーカは音を発する位置が点状なので、特に高音を発するホーン部分の前にさえ邪魔物が無ければ、致命的な音質の劣化は避けられます。

ところが、最近主流のラインアレイタイプのスピーカは、高音を発する部分が線状になっていて、かつそれを延長するように複数のスピーカを連結して用います。連結したスピーカの上から下まで切れ目なく発音部が連続する事で、ラインアレイタイプの特徴である鋭い指向性や遠達性が得られるのです。

と言う事は、ラインアレイタイプのスピーカに更新しても、開口部の下地材が以前のままでは、以前に増して客席に格子状の音の影ができ障害となってしまいます。これではせっかくの改修も片手落ちと言わざるを得ません。

 

iPhoneImage.png 改修後のプロセニアムスピーカ開口部の例

 (上の写真と同じホール)

 右側の円弧上に連結された黒い箱がスピーカ

 (ラインアレイタイプ)

 

 縦桟を中止し、かつスピーカ前は横桟も細くしている

 
 

iPhoneImage.png 改修後のサイドスピーカ開口部の例

 (上の写真と同じホール)

 右側の円弧上に連結された黒い箱がスピーカ

 (ラインアレイタイプ)

 

 スピーカ前の桟を中止

 観客が触れられる位置のため、クロスを突き破らないようにワイヤーメッシュを入れている 
 

音響設備の改修ではとかく音響設備だけが注目されがちですが、実は音響的な品質は、音響設備だけでなく建築的な要素にも大きく影響されるのです。

 

スピーカ前面のクロスや桟以外に、スピーカ収納スペースの吸音が十分かどうかや、そもそもスピーカ用開口が客席全体へ音を届けるのに十分な寸法かどうかといった根本的な点もあります。

 

スピーカの改修計画の際には、新しいスピーカの能力を発揮させるためにも、スピーカ前面のパネルをはじめ建築的な部分についても忘れずに改修検討してください。

 

先日の現場のお相手はヤマハの固定設備向けスピーカのIFシリーズ君でした。

 

iPhoneImage.png サイドスピーカ

 上からサブウーハ、遠向き、中向き、近向き
 

今回はアンプにPowersoft社のOttocanaliをチョイスして、しかも200Vで鳴らしてます。(今までは100V駆動が普通)

200Vで鳴らしたらいつもよりエネルギーに満ち溢れ、肌艶もよくなった感じで、「おっ、いいじゃん!」な仕上がりになりました。

アンプを200V駆動するのは音が良いだけじゃなく、電源ケーブルも細く出来たり電圧降下にも有利だったりで、PAカンパニーではよくやられていますが、公共ホールや劇場などの固定設備での採用は最近見られるようになったばかりです。

これからのスタンダードでしょうね。

 

iPhoneImage.png プロセニアムスピーカ

 上から遠向き、中向き、近向き
 


 

先日、とある竣工間際の施設で、とても残念なスピーカに遭遇しました。

 

 音が邪魔されまくりのスピーカ
 

スピーカの真正面、音が放射される範囲に鉄骨と照明器具があり、音が邪魔されまくりです。観客席からスピーカがまともに見えません。8か所ほど設置されていましたが、すべてのスピーカが同様の納まりでした。

 

どうしてこんな事になるのか、私には理解不能です。これがスプリンクラーなら散水障害として所轄の消防署から是正指導が入るでしょう。これが照明器具なら誰もが不備を指摘するでしょう。

 

スピーカだって一緒です。明瞭な音声を聞き手に届けるという機能が十分に発揮されない設置は不備と言えます。ですが問題にされずに写真のようなことが往々にして起こっています。

 

実際にスピーカの取付をした音響会社の人は、拡声に支障が生じるがいいのか?と元請けの電気設備工事会社の担当者に確認したそうですが、図面通りに施工するようにとの指示だったそうです。図面は工事管理者だけでなく設計者・監理者も確認するはずですから、そういう人達が少しでも音響に関心をもち、適切に図面を見て判断してくれれば、こんな残念なスピーカは減るはずです。

 

とは言え、本当に可哀想なのは、税金払って建てたのにこんなスピーカな音を聞かされる市民ではないでしょうか。

 

学校体育館の拡声設備の実情について私が感じることを、日本音響学会の会誌74巻8号(2018年)の会員投稿欄に寄稿しましたので紹介します。寄稿は文章のみで写真はブログのみの掲載です。

 

  
 

卒業式。会場の体育館のスピーカは国内メーカが揃って標準とするメインスピーカ(舞台左右に各1台)+サブスピーカ(室の前から2/3付近の両側壁に各1台)。基本は間違っていないがなぜか室の奥行や幅に関係なくどこも同じ機種と台数で、音質補正やディレイの機能が不十分で空間に合せた音響調整ができない・されていないことが多い。そのため室の響きが抑制され、明瞭な言葉が十分な音量でマイクに入力されれば聞こえるが、声が小さい、滑舌が悪い、マイクが遠い、響きが長いなど拡声に不利な要因があると突然崩壊する。

 

私は会場最後部の下手にいたが、スタンドマイクの司会者の言葉は聞き取れたが、演壇の校長、来賓の挨拶、卒業生の答辞は隣の妻曰く「何を言ってるのか全然分からない」状況。演壇ではマイクと口が離れるし、来賓は早口でやや不明瞭な話し方だった。会場の響きは短めだが、室の奥行きに対してサブスピーカの数が足りていない。また音量が程々の時はサブスピーカの音が支配的でまだ良いが、声が大きくなるとメインスピーカの音も聞こえ、ディレイがない為にサブスピーカの音とずれて非常に聞き難くなる。声量が変化する度に聞き取れる・取れないが繰り返され、いっそずっと聞き取れなければ諦めがつくのにと思うほど。

 

このような拡声の実状は工事完了時に声量を一定に保つ訓練をしているNHKアナウンサーによる試聴用CDを再生しても確認できない。私の経験と知人の話を総合すると学校体育館の拡声が不良の事例は多い。拡声設備の基本は字の如く増幅装置だ。よって拡声品質はマイクで入力した音をいかに良い音に整え、空間に応じていかにスピーカを計画し、再生音をいかに明瞭なひとつの音に整えるかで決まる。空間での音の振る舞いの考慮とそれを適切に調整する機能がカギである。

 

学校体育館は拡声に不利な音響条件になりがちなのでその検討がより重要である。それにも拘らず、設計事務所が頼るメーカの無償の設計協力・提案システムは、空間の音響の考慮が皆無もしくは不十分で調整機能も不足の機器のことが多い。提案に添えられる直接音の音圧シミュレーションには室内音響は加味されない。しかしメーカも設計事務所も施主も皆それで十分だと思っている。

 

学校体育館などの拡声設備の設計・施工が長年このような状況で行われている為に残念な拡声設備が今も全国に蔓延し続けている。

 

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以上が寄稿文ですが、ブログでは知人の話もいくつか紹介します。

 

「同感です。自分の子供や孫の運動会の音たるやひどいものがあります。聞こえない場所や歪んでる音で演技させている。先生たちの努力が晴れ舞台では発揮されていないし父兄たちも当たり前のようになっている。お金のある幼稚園とか私立の学校では音響会社に頼んでいるところもあるようですが、予算の見直しを根本的に改善していかないと難しいように思われます。多感な幼少期にこそいい音でいい音楽を聴いて育つとまた違った力が発揮できるはずです。教育委員会に打診したこともありましたが、事なかれ主義でたらいまわしにされたこともありました。なんとかしたいのは本当に同感です。」

 

「昨日の卒業式の体育館は、校歌パネルの外側にスピーカで左右に離れすぎていました。先日あまりにひどい状態に校長先生直々に調整を依頼してきた母校はディレイが無い状態。新しい統合中学校はサブスピーカーにディレイも装備されていました。GEQやレベル調整でなんとかしのげるものの、ワイヤレスマイクなどはチャンネルがあったりグループもめちゃくちゃと言うところが多い。何度か調整しているところも次に行くと完全に無法状態。生徒や先生、それに時々訪れる学校公演の出演者があり得ない設定にしたりしている。アメリカの学園ドラマなどでは学生がPAの調整をしている姿を見かけますが、表現の手段としての音響技術は学習プログラムに入らないものだろうか?高校の音楽の教科書にPA装置の解説が載っていたものは見つけたのですが、まず先に先生を指導しなければ。」

 

「この問題は常々言い続けてる様に、一から順に、全てにおいて変えていかないとね。機材の問題もさる事ながら、体育館音響に関しての関心が無ければどうにもこうにも延々とこの問題は解消していかないのでは?と思ってます。」

 

どれもうなずけるコメントです。

 

学校というとよく「集会時に生徒が話を聞かない、集中しない」などと生徒を批判する声を聞きますが、そもそも聞こえ難くければ誰だって聞く気になれない、集中できないのは当然です。聞き手を一方的に批判する前に、「ストレスなく聞きとれる音声が提供できているか?」をまず考えるべきでしょう。これは音響設備の問題もありますし、話し手の話し方とマイクの使い方も大きく関係します。良い音質でストレスなく聞こえれば聞き手は自然と集中しますし、内容の理解度も増すことは容易に想像できます。何かに集中する状態はリラックスしているときに得られるもので、集中しろと強いられてできるものではありません。アスリートが本番前に大好きな音楽を聴いていることと同じです。

 

また、拡声設備はそこに集う人々に言葉を伝えるために設置されているはずです。さらにそこには何のために言葉を伝えるのかという大元の目的があるはずです。何のために生徒に発表させるのか。それが研究であれ歌であれスピーチであれ、自分の学習活動を他人に発表して伝えることと伝えられた他人から反応を得ること=すなわちコミュニケートによって、学習の喜びや手応えや達成感や楽しさや自信とか何かを得るためではないでしょうか?であれば学習の大切な場面を担う拡声設備の品質は、学習効果や学習意欲を左右する重要な要素です。拡声が不良であれば、頑張って準備した生徒のやる気が失われてしまうことだってあり得ます。

 

私は学校施設の拡声設備をこのように重視していますが、残念ながら非常に残念な設備が多いことは前述の通りです。子供たちの学校での学習活動がより本質的に充実したものになるように、本来の目的にかなった品質を提供できる拡声設備の普及に努めたいと日々思います。

 

 InterBEEでは昨年2016年も最新スピーカのデモが開催されました。会場のイベントホールでは、最新スピーカたちのデモを当時の最新スピーカが天井から静かに見守っていました。

 

 天井のセンタークラスタースピーカ
 

 当時の最新スピーカ
 

 「どれ位の人がこれを見るかなあ。高域ホーンの大きさ、低域ユニットもホーンロード、その数と配置を見ると、どれだけ真面目に計画していたかが分かります。今はどうだろうか?」と何気なくFacebookに投稿したところ、思いもよらずいろいろな方からコメントが入りました。

 

「高音域ホーンでエリアをカバーし、低音域を付け足すシステム。低音域と言ってもホーンロードがかかるのはせいぜい200Hz以上、ホーンロードがかかって能率が上がった分、その下の帯域は聞きにくくなる。おまけに低音域SPが引っ込んでいる分ホーン帯域とのつながりが悪い。このシステムが有効なのは英語圏の言語と思います。日本語はもっと低音域から造っていかないと。かつて苦労させられました。」(T.U.氏)

 

「私も同じ思いで見てました。何と言っても自分の原点ですから。」(A.M.氏)

 

「私も納入させて頂いた頃を、天井見て想い出しておりました。」(M.T.氏)

 

「苦労したんですよ、当事者なもんで。これ施工した時期はまだ手描きの時代です。ホーンは全て計算上同心点から振り出しています。構造物は野田市の鉄鋼屋さんで作ってもらい、細かいパーツは横浜和田町の金物屋さんで作ってもらいました。構造計算もしっかり行ってますよ。当然僕なんかが行ったら信用されませんから、一級建築士さんにお願いしました。ちゃんと計算書を提出しました。」(K.M.氏)

 

「単なる三面図もノイローゼになりそうになりながら紙と格闘してた時代でしたな(遠い目)」(H.N.氏)

 

「私も見上げてました。これを今のデジタルチャンデバでSmaartで判った人がチューニングすると最高です(≧∇≦)」(H.I.氏)

 

 当時の最新スピーカには多くの方が関わり、多くの思いが詰まっていました。

 

7月に音響設備の見学会に参加しました。

 

■カトリック東京カテドラル関口教会・聖マリア大聖堂

 

1件目は、その特徴的な建築形状と長い残響で有名な、カトリック東京カテドラル関口教会の聖マリア大聖堂です。代々木体育館や東京都庁を手掛けられた故丹下健三氏の設計で、1964年(昭和39年)の完成です。

 

関口教会 特徴的な外観の聖マリア大聖堂
大聖堂は、その特徴でもあるコンクリートの打ち放し仕上げによって残響時間が約7秒と非常に長いために、建設当初より言葉が聞き取りにくいとの指摘があったそうですが、まだ当時はラテン語でミサが行われていたために、それほど大きな問題にはならなかったそうです。

 

それがその後に、全世界的なカトリック教会の会議で、各国の言葉でミサを行うという方針に改められたことにより、言葉が聞き取れるかどうかが重視されるようになり、聖マリア大聖堂でもその対策に長年頭を悩ませてきたそうです。

 

「各国の言葉で」という方針転換により、儀式の音としての言葉でなく、意味のある情報としての言葉になったとたんに、聞き取りやすさの重要性が変わる・・・、拡声の本質を端的に示す好例と感じました。

 

今回の改修では、対象とする室の条件に合せて音の放射パターンを制御するビーム・シェイピング機能を有した最新のスピーカを採用して、拡声音を会衆席に集中し、壁や天井への余分な音の放射を低減させ残響の発生を極力抑制することで、言葉の明瞭さを向上させるという手法が用いられていました。

(改修の詳細が、プロサウンド誌2016.6月号に写真と共に掲載されていますので、興味のある方は是非ご参照ください。)

 

見学会では、生声と拡声音のほか、パイプオルガンも聞かせて頂き、とても有意義でした。

 

 

■コニカミノルタ・プラネタリウム「満天」

 

2件目は、昨年12月にリニューアル・オープンした、池袋サンシャインシティのプラネタリウム「満天」を見学しました。

 

満天 最新のプラネタリウム装置はこんな形
私が子供のころのプラネタリウムの装置は2つの球体がつながったダンベルみたいな形をしていましたが、最新の装置は球体ひとつになっていて、さらに、光出力が高くなって旧来よりも多くの星を再現できるようになったことは、数年前に子供を連れて見に行った際に知りました。

 

加えて、最近では集客を拡大するために、星を学ぶ内容だけではなくて、プラネタリウムでしか見られない有名アーティストとコラボレーションした音と映像のエンターテインメント作品の制作・上映が行われていました。

これはプラネタリウムによる星の投影とビデオプロジェクタによる映像をミックスすることで制作されています。また、音もサラウンド化され、それに対応した音響システムが導入されていました。

 

プラネタリウムという特殊な空間を活かした質の高いコンテンツ制作が進めば、近い将来、ライブハウスや映画などとならんで、プラネタリウムというエンターテインメントのジャンルが確立されるかもしれません。

 

今年1月のJATET技術展2016のセミナーで紹介・解説されたJATET規格「劇場等演出空間における音響設備動作特性の測定方法」JATET-S-6010:2016 が、JATETのホームページで購入できるようになっています。

 

測定法表紙 規格書の表紙
 

昨年末(2015.12.26)の本ブログでも紹介したとおり、この測定方法は、1985年に旧日本劇場技術協会から発行され参照されてきた「電気音響設備動作特性の測定方法 JITT A2001」を、現在の状況や技術、関連規格に応じて改訂したものです。

 

次の5つの測定項目について規定されています。

・伝送周波数特性

・音圧レベル分布

・安全拡声利得

・最大再生音圧レベル

・残留雑音レベル

 

旧規格の考え方を踏襲しつつも、現在の運用状況や音響技術や関連JIS規格等との適合のために、一部の測定項目では測定条件等を改めている部分もあります。音響設備設計や施工に関わる皆さんには関連の高い内容ですので、早急に入手されて、新規格の理解と普及にご協力をお願いします。

 

購入方法など詳細はJATETのホームページをご覧ください。

http://www.jatet.or.jp/publish/

 

今日の勉強。マイクを置く演台の天板が、軽く叩いた時に響くようだとその周波数でハウリングしやすいのは経験済みでしたが、写真のように囲われていても不意にハウリングしやすいことを学びました。右手のマイク下の白いシートは実験的に敷いた緩衝材です。たったこれだけでもマイクに入力される音が大分クリアになります。

「4月に入ってから時々、演壇マイクからノイズが出て使えなくなるときがあるので見てほしい」という連絡を受けて現場に行ってきました。

演壇マイクはグースネック型のコンデンサマイクです。


演壇マイク 演壇のマイク


確認をはじめた時にはノイズは出ていませんでしたが、いろいろ触って動かしているうちに「ブーン」とハムが鳴り出しました。施設の方が言われたノイズとはこのことでした。

マイクは同じものが2本常設されているので、まずそれらを入れ替えてみましたが、音量が違うもののどちらもハムが出ました。

となると原因はマイクではない?となり、マイクのベーススタンド → コネクタ部 → ケーブル → ミキサーのチャンネル、と順に確認していきましたが、原因個所が特定できません。

やっぱりマイクが怪しいな、とマイクに戻ってしばらく眺めていました。何気なくウインドスクリーンを外したら...。
なんとマイクヘッドが緩んでいるではありませんか。これか!


緩んだマイクヘッド 緩んでいたマイクヘッド

マイクヘッド締めた状態 締め直した状態

ウィンドスクリーンで覆われていたので見落としていました。
そういえば確認を始めたときにタッチノイズが大きいなと思った記憶が蘇ります。その時に気づくべきでした。
しかも、もう一方のマイクも緩んでいたのです。どちらか一方だったらマイクを入れ換えた時にマイクに問題があると特定できたことでしょう。

マイクヘッドを締め直したらタッチノイズは激減し(当たり前ですが)、ハムも起こらなくなりましたし、起こりそうな気配もない状態になりました。

ウインドスクリーンがふわふわしているので、誰かつまんでくるくる回していじくってたのかな、なんて想像します。

思った以上に時間が掛かってしまいましたが、解決することができて良かったです。
今日も勉強になった一日でした。