InterBEEでは昨年2016年も最新スピーカのデモが開催されました。会場のイベントホールでは、最新スピーカたちのデモを当時の最新スピーカが天井から静かに見守っていました。

 

 天井のセンタークラスタースピーカ
 

 当時の最新スピーカ
 

 「どれ位の人がこれを見るかなあ。高域ホーンの大きさ、低域ユニットもホーンロード、その数と配置を見ると、どれだけ真面目に計画していたかが分かります。今はどうだろうか?」と何気なくFacebookに投稿したところ、思いもよらずいろいろな方からコメントが入りました。

 

「高音域ホーンでエリアをカバーし、低音域を付け足すシステム。低音域と言ってもホーンロードがかかるのはせいぜい200Hz以上、ホーンロードがかかって能率が上がった分、その下の帯域は聞きにくくなる。おまけに低音域SPが引っ込んでいる分ホーン帯域とのつながりが悪い。このシステムが有効なのは英語圏の言語と思います。日本語はもっと低音域から造っていかないと。かつて苦労させられました。」(T.U.氏)

 

「私も同じ思いで見てました。何と言っても自分の原点ですから。」(A.M.氏)

 

「私も納入させて頂いた頃を、天井見て想い出しておりました。」(M.T.氏)

 

「苦労したんですよ、当事者なもんで。これ施工した時期はまだ手描きの時代です。ホーンは全て計算上同心点から振り出しています。構造物は野田市の鉄鋼屋さんで作ってもらい、細かいパーツは横浜和田町の金物屋さんで作ってもらいました。構造計算もしっかり行ってますよ。当然僕なんかが行ったら信用されませんから、一級建築士さんにお願いしました。ちゃんと計算書を提出しました。」(K.M.氏)

 

「単なる三面図もノイローゼになりそうになりながら紙と格闘してた時代でしたな(遠い目)」(H.N.氏)

 

「私も見上げてました。これを今のデジタルチャンデバでSmaartで判った人がチューニングすると最高です(≧∇≦)」(H.I.氏)

 

 当時の最新スピーカには多くの方が関わり、多くの思いが詰まっていました。

 

7月に音響設備の見学会に参加しました。

 

■カトリック東京カテドラル関口教会・聖マリア大聖堂

 

1件目は、その特徴的な建築形状と長い残響で有名な、カトリック東京カテドラル関口教会の聖マリア大聖堂です。代々木体育館や東京都庁を手掛けられた故丹下健三氏の設計で、1964年(昭和39年)の完成です。

 

関口教会 特徴的な外観の聖マリア大聖堂
大聖堂は、その特徴でもあるコンクリートの打ち放し仕上げによって残響時間が約7秒と非常に長いために、建設当初より言葉が聞き取りにくいとの指摘があったそうですが、まだ当時はラテン語でミサが行われていたために、それほど大きな問題にはならなかったそうです。

 

それがその後に、全世界的なカトリック教会の会議で、各国の言葉でミサを行うという方針に改められたことにより、言葉が聞き取れるかどうかが重視されるようになり、聖マリア大聖堂でもその対策に長年頭を悩ませてきたそうです。

 

「各国の言葉で」という方針転換により、儀式の音としての言葉でなく、意味のある情報としての言葉になったとたんに、聞き取りやすさの重要性が変わる・・・、拡声の本質を端的に示す好例と感じました。

 

今回の改修では、対象とする室の条件に合せて音の放射パターンを制御するビーム・シェイピング機能を有した最新のスピーカを採用して、拡声音を会衆席に集中し、壁や天井への余分な音の放射を低減させ残響の発生を極力抑制することで、言葉の明瞭さを向上させるという手法が用いられていました。

(改修の詳細が、プロサウンド誌2016.6月号に写真と共に掲載されていますので、興味のある方は是非ご参照ください。)

 

見学会では、生声と拡声音のほか、パイプオルガンも聞かせて頂き、とても有意義でした。

 

 

■コニカミノルタ・プラネタリウム「満天」

 

2件目は、昨年12月にリニューアル・オープンした、池袋サンシャインシティのプラネタリウム「満天」を見学しました。

 

満天 最新のプラネタリウム装置はこんな形
私が子供のころのプラネタリウムの装置は2つの球体がつながったダンベルみたいな形をしていましたが、最新の装置は球体ひとつになっていて、さらに、光出力が高くなって旧来よりも多くの星を再現できるようになったことは、数年前に子供を連れて見に行った際に知りました。

 

加えて、最近では集客を拡大するために、星を学ぶ内容だけではなくて、プラネタリウムでしか見られない有名アーティストとコラボレーションした音と映像のエンターテインメント作品の制作・上映が行われていました。

これはプラネタリウムによる星の投影とビデオプロジェクタによる映像をミックスすることで制作されています。また、音もサラウンド化され、それに対応した音響システムが導入されていました。

 

プラネタリウムという特殊な空間を活かした質の高いコンテンツ制作が進めば、近い将来、ライブハウスや映画などとならんで、プラネタリウムというエンターテインメントのジャンルが確立されるかもしれません。

 

今年1月のJATET技術展2016のセミナーで紹介・解説されたJATET規格「劇場等演出空間における音響設備動作特性の測定方法」JATET-S-6010:2016 が、JATETのホームページで購入できるようになっています。

 

測定法表紙 規格書の表紙
 

昨年末(2015.12.26)の本ブログでも紹介したとおり、この測定方法は、1985年に旧日本劇場技術協会から発行され参照されてきた「電気音響設備動作特性の測定方法 JITT A2001」を、現在の状況や技術、関連規格に応じて改訂したものです。

 

次の5つの測定項目について規定されています。

・伝送周波数特性

・音圧レベル分布

・安全拡声利得

・最大再生音圧レベル

・残留雑音レベル

 

旧規格の考え方を踏襲しつつも、現在の運用状況や音響技術や関連JIS規格等との適合のために、一部の測定項目では測定条件等を改めている部分もあります。音響設備設計や施工に関わる皆さんには関連の高い内容ですので、早急に入手されて、新規格の理解と普及にご協力をお願いします。

 

購入方法など詳細はJATETのホームページをご覧ください。

http://www.jatet.or.jp/publish/

 

今日の勉強。マイクを置く演台の天板が、軽く叩いた時に響くようだとその周波数でハウリングしやすいのは経験済みでしたが、写真のように囲われていても不意にハウリングしやすいことを学びました。右手のマイク下の白いシートは実験的に敷いた緩衝材です。たったこれだけでもマイクに入力される音が大分クリアになります。

「4月に入ってから時々、演壇マイクからノイズが出て使えなくなるときがあるので見てほしい」という連絡を受けて現場に行ってきました。

演壇マイクはグースネック型のコンデンサマイクです。


演壇マイク 演壇のマイク


確認をはじめた時にはノイズは出ていませんでしたが、いろいろ触って動かしているうちに「ブーン」とハムが鳴り出しました。施設の方が言われたノイズとはこのことでした。

マイクは同じものが2本常設されているので、まずそれらを入れ替えてみましたが、音量が違うもののどちらもハムが出ました。

となると原因はマイクではない?となり、マイクのベーススタンド → コネクタ部 → ケーブル → ミキサーのチャンネル、と順に確認していきましたが、原因個所が特定できません。

やっぱりマイクが怪しいな、とマイクに戻ってしばらく眺めていました。何気なくウインドスクリーンを外したら...。
なんとマイクヘッドが緩んでいるではありませんか。これか!


緩んだマイクヘッド 緩んでいたマイクヘッド

マイクヘッド締めた状態 締め直した状態

ウィンドスクリーンで覆われていたので見落としていました。
そういえば確認を始めたときにタッチノイズが大きいなと思った記憶が蘇ります。その時に気づくべきでした。
しかも、もう一方のマイクも緩んでいたのです。どちらか一方だったらマイクを入れ換えた時にマイクに問題があると特定できたことでしょう。

マイクヘッドを締め直したらタッチノイズは激減し(当たり前ですが)、ハムも起こらなくなりましたし、起こりそうな気配もない状態になりました。

ウインドスクリーンがふわふわしているので、誰かつまんでくるくる回していじくってたのかな、なんて想像します。

思った以上に時間が掛かってしまいましたが、解決することができて良かったです。
今日も勉強になった一日でした。
先日、とても久しぶりに信濃町教会を訪れました。
日本基督教団 信濃町教会(新宿区)は9年前に私が永田音響設計在職時に担当した教会です。

きっかけは、教会の方からヘッドウォーン・ワイヤレスマイクの修理に関して連絡があったことでした。せっかくご連絡を頂いたので、しばらくぶりにミサを見学させていただきました。

ヘッドウォーン(耳かけ式)マイクは、タイピンマイクがどうしてもハウリングしてしまうという教会の方からの相談に、私が提案したものでした。これはマイクを口元に近く配置できるのでハウリングに強く、安定して声を集音できるからです。海外では様々なシーンでよく使われていますが、日本ではあまり広まっていません。デモ機を試用して頂いたらとても好評で早速購入されました。

その後ずっと信濃町教会ではミサ中の聖餐の時にヘッドウォーンマイクを使っていて、とても良好だそうです。聖餐の時になると牧師が慣れた手つきでヘッドウォーンマイクを付けて、聖餐台のところに出てこられます。

教会では大きな聖書をめくるのに邪魔になるため、卓上マイクが口元から遠くなりがちです。また、響きの多い礼拝堂ではタイピンマイクを音量を上げて使用すると部屋の響きも拡声されてハウリングしやすくなります。そのような教会空間にヘッドウォーンマイクはとても有効です。耳にかけるのを煩わしがらずに、一度試してみてはいかがでしょうか。


信濃町教会










 調整室での操作の様子


この信濃町教会の新会堂は2004年9月に完成しました。設計は内井昭蔵+内井建築設計事務所、音響設計は永田音響設計です。

礼拝堂は八角形の平面形で3層吹き抜けの高さがあり、200席程の会衆席が正面の祭壇を囲むように円弧上に配置されています。会衆席の後方に、ライル兄弟オルガン製作所(オランダ)のパイプオルガン(15ストップ)を備えています。

写真のように礼拝堂の2階部分に礼拝堂を見渡せる調整室があります。他の教会ではあまり見かけない特徴でしょう。教会の方に、AV設備に詳しく、高齢化が進む中では音響設備が特に重要とお考えの方が居られたので、このようになりました。ここで音響設備とITVカメラ設備の操作が行えるようになっています。

メインスピーカはFPS製パイプラインスピーカ(専用サブウーハ付)で、祭壇の左右に設置されています。(写真で黒い棒状に見えているのがそれです。)

ミキサーはヤマハのデジタルミキサーDM1000です。見た目は操作が難しそうな印象を与えますが、信濃町教会ではミサの進行に合わせてマイクのON/OFFやレベルをシーンに記憶させ、それをユーザー・ディファイン・ボタンに割りてています。当番の方はミサの進行に合わせて順番にボタンを押してゆくだけで、簡単に音響の操作が行えるように工夫されています。デジタルミキサーならではの使い方です。

また、DM1000はポスプロを想定した機種と言えますが、その分、モニターセクションがきちんとしているので、調整室で操作する小規模な設備のミキサーにも使いやすいのです。

竣工から9年間、問題なく良好に稼働しているとのことで、教会の方から非常に満足しているとの言葉をいただき、とても嬉しく思いました。


ライルのパイプオルガンとFPSのスピーカの組み合わせは、奇遇にも私が一昨年から携わっている恵泉女学園大学のチャペルと同じなのです。何かの縁を感じずにはいられません。
 
デジタルアンプが発する高周波ノイズが赤外線ワイヤレスマイク回線に影響し、音声にノイズが乗る現象を経験しました。

デジタルアンプの発生するノイズがスピーカ線から輻射されてアンテナ線や受光部に影響しているようで、アンプと赤外線ワイヤレスマイクの受信機がラック内で近接している場合や、アンテナ線とスピーカ線が並走して配線されている場合に見られるようです。

ノイズは音声が出ている時だけ、音声の抑揚に呼応して発生していましたので、定常的なザーというものではなく、ザッザーザザッザーといった感じのものです

場合によってはノイズではなく、赤外線マイクの受信ができないとか、受信可能距離が極端に短くなる、といった症状になることもあるそうです。

これらは赤外線ワイヤレスマイクのチャンネルのうち、ノイズの周波数に関係するチャンネルに発生します。そのため使用しているチャンネルによっては、デジタルアンプと併用しても症状が現れない場合もあります。

あるメーカーの赤外線ワイヤレスマイクのカタログには、デジタルアンプのノイズについて注意書きがあるそうですが、私は知りませんでした。知らなかった方も多いのではないでしょうか。

そのメーカーの方によると、事後対策としては、アンプにスピーカ線が接続された状態で、アンプのスピーカ出力のマイナス端子とアンプ筐体のグランドをコンデンサを介して接続することで対策できるとのことです。実際に担当している現場で上記の対策をして頂いたところ、十分な効果が得られました。



スピーカ線をシールド線にすることでも効果があるとのことです。
 
今後計画される際にはご注意ください。(自分も含めて)
また、もし類似の症状がある場合には、一度、上記を参考に赤外線ワイヤレスマイクのメーカさんに相談されてはいかがでしょうか。
昨年の夏のことになりますが、設計・監理の手伝いをしていた体育館の音響設備改修工事が終わりました。残響が5秒くらいある厳しい建築音響条件での改修のアプローチは…

体育館(改修前) 改修前の体育館

改修前のスピーカは写真のように体育館の長辺壁の片側に4台設置されていました。旧式のトーンゾイレスピーカで、片側からアリーナ全体をカバーしていました。これだとスピーカと反対側のエリアでも聞こえるように大きな音量を出す必要があります。その音がアリーナ床→対向する壁→天井→スピーカ側の壁→アリーナ・・・と反射を繰り返して、余分な響きを発生してしまいます。

体育館1 改修後の体育館

そこで改修では、スピーカを当初の倍の8台に増やし、長辺壁の両側に設置してアリーナの半分ずつカバーするようにしました。1台のスピーカでカバーするエリアを狭くすることで、必要な音圧と余分なエリアへの音の入射を減らし、響きの発生をできる限り抑制する狙いです。
加えて当初は専用のスピーカがなかった短辺側の観客席へもスピーカを設置しました。

スピーカは全てTOA T-550を採用しました。60×60度という指向角度、手頃な25cmウーハ、明瞭な音質、取付金具も付属で安価、防球構造と、本件に最適でした。

体育館2

これだけ残響が長い場合、本来ならまずは建築的な吸音処理を行うことが必要なのですが、今回はそれができない改修でしたのでスピーカの計画が重要となりました。

スピーカに加えて、ワイヤレスマイク受信機のボリュームを控えめに設定し、マイクに入る空間の響きも少なくなるよう工夫しています。この空間の響きの影響が拡声には重要で、CDなどの録音ソースだけでの調整では不十分です。

そうそう、低予算でしたのでイコライザ内蔵のラックマウント型デジタルミキサーを使用したのですが、3バンドあると思っていた入力イコライザがhi, mid, lowとなっていて、設定できる周波数範囲が限定されていて、Qも固定だったのが誤算でした。思った周波数にイコライザを当てられず、HPFへの切替もなく…。取説まで目を通しておくべきでした。設備用のミキサーほど、もっと入力イコライザを充実してほしいと感じます。
機種に依るのかも知れませんが、デジタルワイヤレスマイクは瞬間的なRFのドロップでもデータが途絶えると音声信号がミュートされ、復旧時に音声信号の不連続からプチッと音が鳴ることがあるようです。

RFがドロップしてしまう場所はアナログのワイヤレスマイクを使っていた時にも同じようにあったのだと思われますが、アナログでは微かなノイズなどの現象だったために気にならない程度で済んでいたのではと推察されます。

対策にはアンテナ位置の最適化が必要となります。これまでアンテナは建築デザイン的にとかく左右対称に付けがちで、アナログではそれでも大丈夫でしたが、デジタルではダイバシティ効果がきちんと活かされるように左右非対称とするなど、今までよりシビアに考える必要がありそうです。

そのため、アンテナが固定されている施設でアナログからデジタルにワイヤレスマイクを更新する場合には、今のままのアンテナ位置で問題ないか事前にテストしておくのが安心です。

また、この現象は室形状が矩形で、内装にスチールパネルが多用された中規模以上の状況で発生していました。つまり電波的に好ましくない空間です。建築面にも配慮しておく必要がありそうです。

以上はB帯ワイヤレスマイク装置をアナログからデジタルに更新した会館での経験談です。
もちろん全ての機種と空間で同じ事が起こる訳ではありません。一つのケースとして参考になればと思ってアップしています。


先日、子供達と一緒に区立の屋内温水プールに行きました。
プールって1〜2時間に1回、10分くらいの休憩時間がありますが、たまたま私がいた位置では、その休憩を知らせるアナウンスが響いて何を言っているのか分かりませんでした。スピーカの配置計画がちょっと上手くないようでした。

屋内プール

屋内プールといえば、空間の容積が大きいのと、水面やタイルなど音を反射する部位が多いことに加えて、内装に耐水・耐湿性が必要なことから吸音がしにくいために、どうしても響きが長くなります。音響的な配慮が重要な施設のひとつです。

同時に、響きの長い空間ではスピーカの配置計画にも注意が必要です。響きが通常程度の空間と同じに考えては、明瞭な拡声はまず無理です。ポイントは次の通りです。

.好圈璽を出来るだけ聴衆に近づける
■餌罎離好圈璽のカバーエリアを狭く限定する
スピーカは指向性の範囲に聴衆がしっかり入るように向ける(余計な壁が指向範囲に入らないようにする)

つまり、音の伝搬距離を短くすることと、余計な残響の発生を抑えることで、明瞭さを確保するのです。先ほどの休憩のアナウンスも、スピーカの正面ではきちんと聞こえました。直接音>残響音とすることが重要なのです。

このアプローチは屋内体育館や展示場、教会などでも共通に適用できます。