先日、音響設計を担当させて頂いたプライベート・コンサートホール Cas'Applausi Hall(カーザップラウジ ホール)での演奏会に伺いました。Cas'Applausi Hall は岐阜駅のほど近くに2017年12月にオープンした56席のクラシック・コンサートホールです。

 

 ホールの内観

(写真はすべてオープン時のもの)
 

このホールは、オーナーの垣内氏が自宅を新築する際に自宅の一部につくられたもので、ルツェルンのコンサートホールの雰囲気がお気に入りとのことから、白色を基調にしたデザインになりました。設計は(株)計画工房K's officeです。

 

 舞台から客席を見る
 

音響設計については、ホールの1階部分の壁と天井は上下や左右に微妙に斜めにして平行を崩し、定在波やフラッターエコーなどの音響的マイナスを抑える一方で、2階部分の壁は逆に平行のままとして出来るだけ響くようにしています。小空間では人の吸音の影響が大きくなるので内装では一切吸音していません。天井が高くとれたこともあって、満席時でも気持ちのいい響きが感じられます。また、防音にも配慮しています。

 

 FAZIOLI ピアノフォルティ
 

そしてホールのピアノはイタリア FAZIOLI 社のグランドピアノです。有名なこのピアノを一度は弾いてみたい、聞いてみたいと思われる方も多いことでしょう。

 

また、ホールの隣にピアノレッスン室があり、こちらの音響設計も担当させて頂きました。壁と天井を微妙に斜めにして不正形な室にすることと、低音から高音までバランスよく吸音するように工夫することで、音響を整えています。

 

 ピアノレッスン室の内観

 

 壁のクリーム色の部分と

 天井の模様付きの部分が吸音材

 2種類を組み合わせている


 

この日のコンサートは、3年前のオープニング公演でも演奏された前田妃奈さん(Vn)と、馬場彩乃さん(Pf)、そしてイギリスでバイオリンを学ばれている、オーナー家のご兄妹 垣内響太さん(Vn)、垣内絵実梨さん(Vn)。皆さん10代とは思えない素晴らしい演奏でした。

 

ちなみにCas'Applausiとは、イタリア語の拍手喝采(Applausi)と家(Casa)を合わせた造語とのことです。このホールがこれからも若い才能が羽ばたく場となり、拍手喝采で溢れることを期待しています。

 

 
 

先日、音響設計を担当させて頂いた音楽サロン La Campanella (ラ カンパネラ)での演奏会に伺いました。Salon La Campanelleは大阪の天満橋駅からほど近い大手通に今春オープンした50席のラグジュアリーな音楽サロンです。

 

 サロンの内観
 

ヨーロッパの住宅の一室でプライベートにリラックスして音楽を楽しむ、そんな感じにしたいというオーナーのご要望に沿って音響設計しました。クラシックな雰囲気を壊さないようにしながら部屋の形を工夫し、天井を出来るだけ高く確保して音響を整えました。梁の凹凸や鏡や絵画などの装飾品も音を散乱させる要素に活用しています。

 

 ピアノから客席の内観
 

50脚の椅子はサロンにマッチしたデザインに加え、座ると分かる肘掛のカーブが絶妙でとても座り心地のよいオーナーこだわりの特注品です。

そしてピアノはスタインウェイの1969年ハンブルグ製B211。象牙鍵盤でスタインウェイ黄金時代の完全オリジナルとのことです。

 

 入手困難な貴重なピアノ
 

演奏会はオープンを記念して周辺の方々を招待されたもので、6人の若手演奏家によるピアノとフルートのソロと声楽三重奏を楽しみました。

小さい空間で演奏者の間近かで聞くサロン・コンサートは、楽器の音や歌手の声が情感と共にダイレクトに届きます。時にアットホームにリラックスして、また時に演奏者の情感に引き込まれて緊張して。演奏者と聴衆の一体感や親密感を強く感じながら聞くサロン・コンサートはコンサートホールとはまた違う楽しみが味わえます。

 

 演奏の様子
 

 こちらは別のコンサートの模様(サロン提供)
 

La Campanellaでは今後サロンレンタルだけでなく様々なコンサートも企画していかれるそうです。大阪で雰囲気と音響の良い音楽サロンをお探しの方はぜひ一度お訪ねください。沢山の演奏家と観客の方々にお出で頂き、多くの感動がここで生まれることを期待しています。

 

音楽サロン・ギャラリー La Campanella

http://la-campanella.jp/

 

 

なお、La Campanellaには素敵なレンタルギャラリーも併設されています。演奏会当日も個展が行われていました。

 

 Gallery La Campanella
 

今年のゴールデンウィークに音響設計を担当したライブホール「仙台ギグス」がオープンしました。仙台ギグスはスタンディングで最大1,560名、着席で最大816席と東北最大級となるライブホールで、仙台駅から市営地下鉄東西線で約15分の東の終点 荒井駅から徒歩1分の場所にあります。

 

 仙台ギグスの外観
 

仙台ギグスの音響設計コンセプト「リアクション

 

ポピュラー音楽を主体とするライブホールやライブハウスの多くは、響きを含む音響効果はサウンドシステムで創るのでホールの響きは無い方が良いという考え方が一般的で、壁や天井が全面的に吸音処理されています。サウンドシステムの音質を劣化させる余計な反射音や残響音を抑制するためにも吸音が必要なことは確かです。

 

しかしライブではサウンドシステムを通らない音も重要ではないでしょうか。それは、観客の歓声や拍手。ライブならではの音です。歓声や拍手が湧き上がるように大きく響けばアーティストも観客も盛り上がります。自分たちのパフォーマンスに対する観客の反応が大きく感じられれば、それはアーティストのエネルギーとなってさらに素晴らしいパフォーマンスを引き出し、より大きな感動へとつながる事でしょう。これは多くのライブ・ファンに共感頂けることと思います。

 

 レセプションパーティの様子

仙台ギグスでは、そんなライブのもう一つの重要な音を吸音してしまうのではなく、積極的にステージ上のアーティストに届けようと考えました。もちろんサウンドシステムの音を阻害する反射音は低減しながらです。

 

その一見矛盾することの解決を試みたのが側壁の屏風折れのパネルです。パネルの舞台側の面は吸音仕上げにして舞台両脇のスピーカからの音は吸音し、客席側の面を反射仕上げにして観客の歓声や拍手を舞台へ向けて反射させるようにしました。

 

 1階席からの内観
 

加えて、天井面も客席からステージへ音を届かせるのに有効な範囲は反射性とし、それ以外の部分で吸音しています。

 

結果として仙台ギグスは他のライブホールよりも響きがやや長めになっています。といっても客入り後には気付かない程度です。

この適度な響きは生音と同様にサウンドシステムの音も豊かにし、音量感をアップする効果も得られます。直接音を邪魔しないようにコントロールすることで、響きをサウンドシステムにもプラスになるようにしました。

 

また、アーティストにとっても、自分の歌声や演奏音が会場の奥まで届いているという手ごたえが感じられやすく、安心できるのではないかと思います。

 

 2階席から舞台を臨む
 

その他にも次のような音響的配慮をしています。

 

・反射面で響きを残す一方で、スピーカの音を受け止める後壁面は30cm厚の吸音面を設けて低音までしっかりと吸音を図りました。

 

・側壁の屏風折れによって側壁間の平行を崩し、天井を屋根勾配に合せて傾斜させることで床〜天井間の平行を崩し、定在波の低減を図りました。

 

・パフォーマンスに対して音量制限を不要とするために徹底した防音対策を行いました。

 

このように仙台ギグスでは、サウンドシステムへの配慮はもちろん、観客と会場の「リアクション」にも着目しアーティストとオーディエンスが共に盛り上がれる音響空間を目指しました。

 

 1階後方のPAブースと後壁
 

仙台ギグスのスピーカシステムには d&b audiotechnik社の大型ラインアレイに超大型サブウーハが採用されています。この超大型サブウーハが常設されるのは仙台ギグスが最初のホールとのことで、このシステムも必聴ものです。

 

夏以降、様々なアーティストのライブがブッキングされ始めてきました。これから多くのパフォーマンスが繰り広げられ、アーティストやオーディエンスが仙台ギグスをどんな風に感じるのか楽しみです。

 

最後に、全国各地の大型ライブホールが東京などの大手企業資本なのに対して、仙台ギグスは”地元資本”であることをお知らせしたく思います。そんなライブホール「仙台ギグス」が多くのアーティストとオーディエンスそして地元の方々に愛される施設になることを心より願っています。

 

仙台ギグス

https://www.sendaigigs.com/

 

先日、音響設計を担当させていただいたSalon de l'Olivier(吹田市豊津町)でのコンサートに伺いました。演奏は、Miha Rogina (sax)、Sae Lee (pf)、白井奈緒美(sax、ゲスト)で、sax二人とピアノという中々聴けない構成でした。ソファーに座って聴くのも初めての経験でした。

 

 サロンの内観

(ピアノから客席をみる)
このサロンは、自宅のリビングでサロン・コンサートをしたいというオーナーのご要望によるもので、設計は関井徹建築設計事務所です。内装の主要な素材は決まっていましたので、天井の仕上げで低音と高音の吸音のバランスをとり、コテで模様をつけた漆喰塗りや天井の棹縁で反射を弱めることと音の散乱を図りました。

終演後、演奏の皆さんに音響が良いと言っていただきホッとしました。

 

別室の練習室も担当させて頂きました。こちらはピアノが置かれる練習室で、室を不正形にして定在波を抑えるとともに、3種類の吸音構造を組合せて低音と高音の吸音のバランスをとりました。練習のために響きは短いけれど反射は残すように意図したのですが、本番前に音出しした演奏者の皆さんからはストレスなく演奏できたとのコメントを頂きました。

 

 練習室の内装

(プライベートに関わらない壁上部〜天井部分のみ掲載します)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音響は主観的な部分が多分にあり、こちらの音響的な意図が必ずしも演奏者の意向にマッチするとは限らないので、演奏の方とお会いする時はいつもドキドキです。今日は安堵して帰路につくことができました。

 

Salon de l'Olivier

https://www.facebook.com/salon.de.l.olivier

 

海外で見かけた吸音仕上げ、最終回はその他編です。

フランクフルトホテル食堂 まずはフランクフルトのホテル(リーズナブルなランク)の食堂です。天井が有孔板(穴あき板)で吸音されています。梁の部分が無孔で、その中側が継ぎ目なく有孔板というようにデザインされています。
白色と明るい黄色の組み合わせはウィーンでもよく見かけた色合いです。

フランクフルトメッセ1 次はフランクフルト・メッセの展示ホールのひとつです。女性が寄りかかっている木質の壁は...。

フランクフルトメッセ1up 横スリットの奥に穴が開いた吸音板です。一見すると横スリットは分かりますが、穴までは気づきにくいです。有孔板と類似の吸音特性があります。
スリットと穴を組み合わせた吸音パネルはスイスのn'H Akustik + Design社のTOPAKUSTIKが知られていますが、これがそうか、類似製品かは不明です。
ちなみにTOPAKUSTIK製品は日本では(株)マデラで取り扱っています。

メディアセンター2 次はロンドンにあるローズ・クリケット・グラウンド。ここは「クリケットの聖地」とも呼ばれるクリケット競技場(収容人数28,000人)です。写真はその競技場のメディアセンターで、観客席より高い位置にありグラウンドを見渡せます。

メディアセンター1 天井がうすい水色のクロスを額縁貼りしたグラスウールボードで吸音されていました。このメディアセンターは有機的な形をしているのでグラスウールボードが採用されたのかもしれませんが、目地の暴れがちょっと気になります。また、どうやって取り付けているのかな。

ステープルセンター1 次はロサンゼルスのダウンタウンにあるステイプルズ・センターです。最大20,000人を収容し、バスケットボールやアイスホッケーなどのスポーツのほかコンサートにも使われる大規模アリーナです。

ステープルセンター1up1 その天井に多様されているのが吸音バナーと呼ばれる吸音材です。グラスウールなどの吸音材を薄いシートで包んだもので、写真のように天井から弛ませて吊り下げたり、そのまま垂直に吊り下げたりして使用します。

ステイプルズ1up3 左の写真は吸音バナーを垂直に吊り下げて使用している例で、壁の黒い短冊状のものが吸音バナーです。仕組みはとても単純な吸音バナーですが、日本には入ってきていないようで、類似の製品も見かけません。残念です。

ステイプルズ2 そして同センターでは、アリーナ上部に吊り下げられた大型映像装置の画面とチームマーク以外の全ての部位に、吸音バナーとおなじグラスウールをシートで覆った吸音仕上げがされています。黒いシートが薄いためにグラスウールの黄色がやや透けているのと、写真左下部分にシートのしわが見えることからそれが分かります。空間が巨大なので吸音を徹底していることが分かります。

以上、海外で見かけた吸音仕上げを3回に渡ってお届けしました。

日本でも欧米でも吸音の仕上げ方法は大差ないことが分かります。でも、欧米では吸音仕上げが日本より積極的に採用されているように感じます。日本ももう少し欧米の音環境に対する意識を見習ってよいのではと思います。
 
海外で見かけた吸音仕上げ、第2弾は鉄道編です。

キングスクロス駅1 まずはハリーポッターのホグワーツ行きの列車が出発する9と3/4番線で有名なロンドンのキングス・クロス駅です。再開発によって数年前に完成したエリアのようで、ドーム状の屋根を形成するフレームが印象的です。

キングスクロス駅1up このフレームの上の屋根面をズームアップしていくと、写真のようにパンチングメタルだと分かります。と言うことは、この裏にはグラスウールなどの吸音材が設置され吸音仕上げになっていることはほぼ間違いないでしょう。



キングスクロス駅2 ここもキングス・クロス駅で、最初の写真で左側に見える2階バルコニーの下の天井面です。目地が斜めに入ったパネル状の天井です。

キングスクロス駅2up これもよく見るとパンチングメタルです。しかも鋭角という難しい加工が施されています。

キングスクロス地下鉄駅 次は同じキングス・クロス駅ですが、こちらは地下鉄のホームです。シリンダー状の天井に長穴の有孔パネルが設置されています。ただ、他の地下鉄駅は吸音されていない所がほとんどなので、再開発の一環で改修されたのかもしれません。
 音と関係ありませんが、トンネルが小さいのが分かりますか。

セントパンクラス駅1 次はキングス・クロス駅のすぐ隣にあるセント・パンクラス駅です。ロンドンとパリを結ぶ国際特急ユーロスターの発着駅でもあります。

セントパンクラス駅1up 駅構内の天井はほとんど全面が写真のようなパンチングメタルのパネルとなっています。

セントパンクラス駅3 ここは同駅内のユーロスターのビジネス・ラウンジです。実は細長く狭い空間なのですが、大きな照明器具と鏡によって広がりを感じる上品な空間になっています。

セントパンクラス駅3up そしてここも天井はパンチングメタルのパネルです。上の写真のように緩くシリンダー状になっており、デザインのアクセントにもなっています。

セントパンクラス駅2 そして同駅のホーム。明りとり窓がある、のこぎり状の屋根になっています。

セントパンクラス駅2up その屋根もパンチングメタルのパネルでした。ここまで全部パンチングメタルです。イギリスではパンチングメタルは吸音の定番のようです。

メッセ駅1 次はドイツ、フランクフルトのメッセ駅です。この駅は、毎年ミュージック・メッセが開催されるフランクフルト・メッセの玄関駅です。プラットホームからエスカレータを上がると改札はなくてすぐメッセのエントランスです。

メッセ駅1up ここの天井は吸音性のパネルが貼りつけられていました。

ドイツ特急1 ここからは列車の車内です。まずはドイツの都市間を結ぶ特急列車。

ドイツ特急1up 天井の中央部のパネルに穴が開いていて、さりげなく吸音しています。パネルはプラスチック系のようです。

ウィーン鉄道 次はウィーン国際空港からウィーン市内へ向かう列車の車内です。

ウィーン鉄道up こちらはかなり存在感のある穴あきパネルです。こちらも材質はプラスチック系のようです。

viena tram そしてこれはウィーン市内のトラム(路面電車)の車内です。アップの写真がないので分かりにくいですが、他の列車と同じように天井の中央部が穴あきになっています。ここの材質はスチールのようです。

以上、鉄道編でした。
鉄道系ではパンチングメタルの採用率が高いようです。耐久性、メンテナンス性が理由ではないでしょうか。

次はその他編の予定です。
昨年から今年にかけて海外の展示会に行く機会が何度かありました。その道中で目についた吸音仕上げの実例を公共施設を中心に紹介します。

第1弾は、空港編です。


ボストン空港1 まずはボストンのローガン国際空港の国際線ターミナルのチェックインエリアです。全面的に木が使用されています。そして天井の板をよく見ると...

ボストン空港1up なんと有孔板(穴あき板)でした。スリットに設置されたスピーカを撮影しようとしてカメラでズームアップしてはじめて有孔板だと気づきました。そうでなければ有孔板とは全くわかりません。

LAX1 つぎはロサンゼルス国際空港の国際線ターミナルのチェックインカウンター。上部に木製のパネルがあしらわれ、無機質な空間にナチュラルなアクセントを与えています。

LAX1up これもよく見ると有孔板なのです。ボストン空港の天井に比べれば見て有孔板とわかる距離にありますが、それでも普通の方は全く気づかないし、見た目に違和感も感じないと思います。私は職業柄気づきましたが。

LAX2 同じくロサンゼルス国際空港の搭乗ロビーです。天井が白くて高い空間の中に、木調の庇が連続しています。そして、

LAx2up1 この木調の庇には微細穿孔板(MPP,Micro-Perforated Panel)が使用されていました。微細穿孔板はシートや薄い板に直径1mm以下の微細な穴を開けたもので、背後に空気層を持たせて設置することで吸音効果が得られます。庇は木に見せていましたが、木目調のシート張りのようです。
 微細穿孔板は一般の有孔板より意匠的な影響が少ないですが、吸音する周波数範囲が狭いので注意が必要です。

LAX2up2 一方、白く高い天井面はパンチングメタルです。天井が高いので穴はもちろん、目地さえ気づきません。

ウィーン国際空港1 つぎはヨーロッパに飛んで、ウィーン国際空港です。2012年にオープンしたという新しいターミナルで、モノトーンでモダンなデザインです。

ウィーン国際空港1up ここの天井面は照明器具を除いてすべてパンチングメタルのパネルになっていました。

ウィーン国際空港2 同じくウィーン国際空港。ここは先ほどの到着ゲートからバッゲージクライムに向かう通路です。天井一面がシームレスな有孔板になっています。この全面シームレス有孔板、ウィーンやドイツでは何度か見かけましたが、日本ではあまり好まれないですね。どうしてでしょう。

ウィーン国際空港2up1 点検口の周りはこんな風に穴をふさいでいます。

ウィーン国際空港2up2 照明器具の周りも点検口と同じディテールで仕上げられています。

ドゴール空港ラウンジ1 空港編の最後はシャルル・ド・ゴール国際空港のラウンジです。天井の木パネルはすべて有孔板です。日本では、有孔板=格好悪いというレッテルが貼られている感じがしますが、これをみて全然そんな風に感じません。

ドゴール空港ラウンジ2 これは同じラウンジの別エリア(上の写真の右側)ですが、木パネルでないグレーの天井部分はアコースティック・シーリング(日本でいう岩綿吸音板のようなもの)です。素材を変えていますが全面吸音仕上げになっています。

以上、空港編でした。
欧米でも有孔板が吸音仕上げのメジャーな材料のようです。天井を吸音処理するのは日本も同じですが、有孔板の使い方は日本より大胆で、しかも格好良いようです。

次は鉄道編の予定です。
音響設計を担当させて頂いた d&b audiotechnik Japan社(横浜市都筑区)のデモルームが完成しました。

Black range side BLACK RANGE side

デモルームは同社のスピーカとパワーアンプのラインナップを常時備えて、試聴やセットアップなど各種デモンストレーションを行える空間として、また、各種セミナーなどにも活用する空間として計画されました。

デモルームの一方のエンドがツアーサウンド向けのBLACK RANGE製品エリアに、他方が設備音響向けのWHITE RANGE製品エリアになっています。


White range side WHITE RANGE side

音響設計のコンセプトを次のように設定しました。

 1) スピーカの素の音が分かるように、空間の音響がスピーカ音に癖を与えないようにする。
 2) 響きは抑えるが、無響室のように不快でなく、セミナー等で長時間いても違和感のない音響とする。

そのために
 ・響きを抑える(低音から高音までできるだけ均一に)
 ・フラッターエコーの抑制
 ・定在波、ブーミングの抑制
 ・適度に反射を残す

これらを実現するために内装デザインにも見えないところにも音響的な処理を取り入れた設計をしていただきました。特に側壁にその多くが詰まっています。


Wall and ceiling 音響と意匠を兼ねた側壁のななめ
 木格子と天井の木ルーバー
 白い壁面はグラスウール系の
 吸音ボード

内装には東京・多摩産の杉材を無塗装で使用しました。これは内装設計をお願いした すわ製作所の提案によるもので、地産材を使うことで東京の森林整備に役立ち、環境保全にもつながるとのことです。「音響」と「人」と「環境」に配慮した、居心地のいいデモルームになりました。


デモルームでは6月から定期的に3つのセミナー(電気音響学セミナー、ラインアレイワークショップ、リモートネットワークワークショップ)が開催されます。どなたでも無料で参加できるそうですので、興味のある方は同社HPをご覧ください。
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