学芸会や運動会など、大きな学校行事のある時期を迎えています。私も先週末までに、連合運動会と吹奏楽クラブの演奏会、学芸会を見に行きました。

学校に行く機会が増えると気になることのひとつに「音」があります。隣の教室や廊下から漏れてくる音や、体育館・校庭でのマイクの音など。子どもたちの生活・学習環境として、もう少し静かに、もう少し聞きやすくしてあげたい、するべきと思うのは私だけではないと思います。子どもたちの学習態度や成果だって良くなるでしょう。

そんな学校の音環境の状況に対して、2008年に日本建築学会が「学校施設の音環境保全規準・設計指針」をまとめました。これは近年、建築学会が制定を進めている環境工学分野での推奨基準(日本建築学会環境基準)のひとつで、音分野での第1号の規準です。

学校アカスタ表紙「学校施設の音環境保全規準・設計指針」の表紙

小学校〜高等学校を対象に、学校施設が備えるべき音響性能として以下の5項目を採り上げ、その推奨値を示しています。

 ・室内の騒音レベル
 ・隣接する室間の遮音性能
 ・床衝撃音遮断性能
 ・残響(室内の響き)
 ・電気音響設備の動作特性

各音響性能についての説明や学校施設をつくる上での留意点や参考例のほか、問題が起こりやすいオープンプラン教室や体育館、音楽関連教室などについては設計例も紹介されています。

さらに注目は、電気音響設備に関する推奨値が示されたことです。

これまでホールや劇場などの特殊施設に限られていた電気音響設備の性能目標から、つぎの基本的な4項目を採り上げて学校施設へ適応しています。

 ・音量に関するもの: 最大再生音圧レベル、音圧レベル分布
 ・音質に関するもの: 伝送周波数特性
 ・拡声の安定性に関するもの: 安全拡声利得

これらの性能値がまた一般的ではないため、現段階では附属書扱いですが、おそらく電気音響設備の性能について規定した唯一の規準でしょう。電気音響設備の設計や施工において目標とすべき性能が明示されたことで、適切な性能が実現されて、子どものお芝居の台詞や選手宣誓の声、始まる競技の種目や選手名や結果のアナウンスなどが、きちんと聞こる学校が増えることを期待したいと思います。

建築や設備の設計、施工に携わっている方をはじめ、自治体の建築・建設担当や教育委員会の方など施主側の方々など、関連する多くの方々に参考にしていただき、音環境の良い学校が沢山増えることを期待したいです。
なお、本書は日本建築学会のほか、web書店各社で取り扱いがあります。
 

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