9/25〜27の3日間、豊橋技術科学大学(愛知県豊橋市)において日本音響学会2013年秋季研究発表会が開催されました。

今回はスペシャルセッションとして「屋外拡声システムに関する研究の最近の動向」、「公共空間における音環境の実状と期待される性能」といった自分の業務に関連し興味深いテーマが取り上げられていたために、久しぶりに参加しました。

■屋外拡声システムに関する研究の最近の動向

音響学会01










 会場の様子

東日本大震災の際に、防災用屋外拡声システム(一般に防災無線と呼ばれる)がよく聞き取れなかったという指摘が多くあったことを受けて、総務省のもとで行われた改善に関する研究をはじめ、関連する7件の発表がありました。

屋外拡声システムの音声情報が聞き取りにくかった原因として、異なる位置に設置された複数のスピーカからの音声が到達時間差によってダブって聞こえることや、建物等での反射音の影響があると、多くの発表で報告されました。
そして、音のダブり(エコー)が音声の了解性に与える影響についての聴感実験や、屋外という長距離伝搬経路での音響伝達特性の測定方法の開発、屋外拡声システムの音声了解度評価法と有効な音響パラメータの検討、地形と気象を考慮した伝搬予測、コンピュータシミュレーションの開発、などの研究成果が発表されました。

しかし、音声を聞き取りにくくしているダブりを生じる最も大きい原因であるスピーカの配置計画そのものについては発表がありませんでした。コンピュータシミュレーションの発表の中でスピーカの拡声方向を変更した場合のケーススタディがありましたが、シミュレーションの有効性を示すに留まっていました。

現状の屋外拡声システムのスピーカはひとつのタワーに4つのスピーカが設置され四方に拡声するのが標準的とのことですが、これでは必ず音がダブるエリアが生じてしまいます。四方への拡声は火の見櫓で鐘を鳴らすのと同じで信号音では問題は少ないですが、音声ではダブりによる了解性の低下が生じます。

そこで、ダブりを生じさせない、もしくは最小限に抑えるスピーカの配置計画が必要です。例えば、拡声の方向を半分や4分の1方向に限定して配置を計画したり、1方向への拡声を遠距離用のハイパワースピーカやアレイスピーカと近距離用のスピーカを組み合わせて行うなど、検討の余地があると感じました。このようなスピーカ配置計画に関しても研究に取り上げて欲しいと意見を会場で申し上げました。

また、発表者の側からは、屋外拡声システム(防災無線)の計画において、市民が聞く音声の視点からシステムを包括的に見る音響の専門家の必要性が指摘されました。当然のことと思いますが、そうでない現状が残念です。改善を期待したいです。

■ポスターセッション(建築音響分野)

音響学会ポスター










 ポスターセッション会場の様子

2日目の午前に建築音響分野のポスターセッションがありました。

興味あるホール等の音響設計事例としては、大阪のフェスティバルホール(日建設計・永田音響設計)、仙台市青年文化センター・コンサートホールの改修(NHK-ITEC)、愛知県立芸術大学音楽学部新校舎(日建設計・東大生研)、穂の国とよはし芸術劇場「PLAT」(ヤマハ・大成建設)の発表がありました。

そのうち、愛知県立大学の事例は、音響的に必要な要件を素直にデザインに取り入れた模範的な例と思いました。音響的要件を設計者などに理解してもらうのにとてもよい参考例になります。社内に音響部門がある日建設計ならではの事例と感じました。

■公共空間における音環境の実状と期待される性能

音響学会03










 会場の様子

3日目のスペシャルセッションは上記のテーマで、商業施設、駅、公園、学校・保育所、病院、オープンスペースといった施設について招待講演がありました。

話の共通点をまとめると、

商業施設: 昔の百貨店では音もサービスとして配慮されていたが、最近の大型店、アウトレットモールではない。
駅: 設計条件に音が含まれていない。
学校・保育所: オープンプラン教室には音響的処理が重要だがまだ不十分。最近増えいてる保育所の音環境が酷い。
病院: スピーチプライバシーは北米では設計条件に含まれているが、日本では含まれていない。
オープンスペース: デザイナーに音環境を体験させ理解を求めている。

といったもので、音環境が重要でありながらも施設計画に盛り込まれない現状の報告が多くありました。
その理由としては、発表者の一人が言われたという次の返答がすべてを表しています。

「音環境を良くしたほうがいいのは分かるが、良くしても我々の儲けにはつながらない」

でも、これを聞いて、落胆しているばかりではしょうがないですし、逆に状況を変える取っ掛かりが分かりました。

「音環境による経済効果」をアピールして行くことです。みんなで考えてアピールして行けばきっと変えられます。 

■特別イベント「手筒花火」

2日目の発表会後に豊橋技科大近くの神社にて地元伝統の「手筒花火」の特別奉納が行われました。はじめて見ましたがとてつもない迫力です。

手筒花火小 「ようかん」という小型の
 もの。
 片手で持つのですが、
 実は一番熱いそうです。

手筒花火中 「三斤」という中型のもの。
 腰の脇で構えます。
 凄い迫力です。




手筒花火大 「五斤」という大型のもの。
 もはや勇者でなければ
 できません!!


以上、久しぶりにいろいろな方に再会もし、有意義な3日間でした。

日本音響学会の次回の研究発表会は、平成26年3月10日〜12日に東京・御茶ノ水の日本大学理工学部で開催される予定です。
 
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