2/25、彩の国さいたま芸術劇場の小ホールで、「舞台で活躍するピアノの魅力を探る」と題した舞台技術セミナーが行われました。


舞台 開演前の会場の様子


パネラーは国立音楽大学准教授の森太郎氏(楽器音響学、音楽音響学)、松尾楽器商会のコンサートチューナー外山洋司氏、ピアニストの仲道郁代さんと豪華メンバーです。

舞台にはピアノとスクリーンとパネラーの席が用意され、実際に音を出した実験を中心に解説が進められました。

最初に森氏が音と聴覚の基礎を解説されました。2つの音の周波数が微妙にずれていると生じる「うなり」や、音の高さによって聞き取れる最少の音の大きさが違うこと、ピアノの響板がどのくらい振動を音にして放射しやすいかなど、実際に音を出した実験を交えて解説されました。

次に外山氏がピアノの発音の仕組みと調律師が何を目指してどのようなことをしているかを、こちらも実演を交えて解説されました。特に興味深かったのは、ピアノは1音につき3本の弦が張ってありそれぞれを微妙に調整して音を豊かにしているという解説の際に、実際に各音の2本の弦をフェルトでダンピングして1音あたり1本の弦だけの状態にして、通常の状態と仲道さんの演奏で聴き比べしたことです。こんなことまず経験できません。その差は想像どおり、音が単純になってつまらなくなってしまいました。


外山氏の実演 外山氏が2本の弦を
 ダンピングしている様子


また、曲によってそれぞれの音が弾かれる回数が大きく違うので音によってハンマーの硬くなり方が全く違ってしまう、とか、室温の変化によって調律がずれるが音の高さによって狂い方が違う、とか、キャスターの向きによって響板の反りが変わって音が変わる、とか、ピアノの足を置く位置で音が変わる、など勉強になる話題が沢山紹介されました。

森氏と外山氏の解説中、なにかあると仲道さんがコメントをされました。例えば、ピアニストのタッチに合わせてピアノを調律するのは好まない、楽器としてニュートラルであるのが良い、など。

仲道さんはお淑やかなお顔と穏やかな話し方とは裏腹にピアニストの熱い思いを各所で述べられました。なかでも強く印象に残ったのは、ピアノは他の楽器と異なり会場のピアノを使用し、かつ演奏者ではピッチやハンマーの硬さなど楽器の状態を調整できないので、限られた演奏技術を駆使して楽器の状態を克服しつつ音楽的・芸術的表現を行っている、というコメントでした。だから、是非ピアノを良い状態に保つ努力をしてほしい、と。「良いピアノと状態の良いピアノは違う」と仲道さんが強く述べられていたのが印象的でした。

仲道さんの実演 ピアノを弾きながら
 熱く語る仲道さん


ちなみに同劇場のピアノは開館から20年の間に2回オーバーホールをしているそうですが、プロのコンサートやレコーディングに全く問題なく使われているそうです。外山氏は、ピアノの正常な状態を知っていれば問題点は見ただけでも分かります、と言われました。知識の習得と適切なメンテナンスが大切だという、当たり前のことが重要なのです。

さいたま芸術劇場では、いわゆる劇場法制定を受けて、このようなセミナー等を今後も開催していく予定とのことです。
 
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