4月29日、建築音響・電気音響ともに設計させて頂いたインマヌエル船橋キリスト教会(千葉県船橋市)の新会堂の献堂式に出席しました。

 

 新会堂の内観と献堂式の様子
 

この教会はもともとJR船橋駅の南口側にあった旧会堂が市の計画道路と重なったために北口側に移転して新築されたもので、新会堂はコミュニティー・チャペルと名付けられました。また計画道路と重ならず残った敷地にも集会機能をもつバイブル・センターが建設されました。

設計監理は、室伏次郎氏((株)スタジオアルテック代表取締役)と濱口光氏((同)ミタリ設計)で、構造設計はTIS&PARTNERS、設備設計はZO設計室です。

 

 コミュニティー・チャペルの外観
 

設計の初頭、当時の会堂で礼拝の見学と残響時間の測定をさせて頂きました。築50年を超える会堂はピアノと電子オルガンを備えながらも響きがとても短い会堂でしたが、大切に使われてきたことが見て取れました。また、とても印象に残ったのは、牧師のお説教が暖かく穏やかに囁きかけるような優しい音で聞こえていたことでした。この拡声の印象を新会堂にも引き継ぎたいと思いました。

 

 旧会堂の内観(2014年10月撮影)
 

[室内音響設計]

室伏氏による新会堂はコンクリート打ち放し仕上げで、天井高約8mの2層吹き抜け、両サイドと後部に2階席を備えた320席の空間でした。音響的にも以前と全く異なる響きの長い空間となるために最初は心配したのですが、室が不正形で音響的な問題のない形状だったことと、教会の方々が長い響きを好意的に考えていることから、電気音響による拡声が破たんしない範囲で響くように設計しました。具体的には、1階席の天井(2階席の底面にあたる部分)に有孔板を、2階席の側壁の一部(木ルーバーの一部)にグラスウール吸音材を配置しました。

 

 2階席から臨むチャペルの内観

 光の十字架が印象深い
 

 1階から2階側方を臨む
 

残響時間(500Hz)は空席時2.3秒、1階席に170名程度着席時1.6秒ですが、数値よりも響きが長く感じられます。会衆の方々からは讃美歌が豊かに響いて嬉しいとの声を多く頂きました。

 

[電気音響設計]

響きの長い空間のスピーカシステムというと、最近ではラインアレイ型スピーカが真っ先に思い浮かぶことと思います。ですが、旧会堂の暖かく囁きかけるような拡声音を新会堂にも引き継ぎたいと考えた時、音が遠くから飛び出してくるようなラインアレイ型スピーカの聞こえ方が私にはしっくりきませんでした。

 

 2階サイド席とスピーカ

(聖歌隊席なので集音マイクとモニタースピーカも備えています)
 

そこで、良質な小型のポイントソーススピーカ(Martin Audio社 DD6)を堂内に分散配置することにしました。分散配置によってスピーカと聴衆の距離を短くし、必要な音量を抑え、音質バランスの良い音のまま聴衆に届ける計画です。幸いにも室伏氏がスピーカの露出設置を認めて下さったので、音響的に良い状態が実現できました。もちろん露出設置するからには取付金具が極力見えないようにするなど工夫しています。

 

 講壇側を横から臨む

(小さい黒四角が拡声用スピーカ。

 大きな黒四角は電子オルガン用スピーカ。)
 

音響調整を終え、不思議なくらいに素直なスピーカのお陰か、自分でもちょっと驚くほど良い感じに仕上がりました。マイクロホン、スピーカ、配置、空間の形と材質など様々な条件が上手くバランスしたようです。

 

オルガンと讃美歌が豊かに響くなかで、説教の言葉は近くの相手に囁きかけるように優しく聞こえるように。献堂式での拡声を聞いて、その意図が実現できたと嬉しく思いました。また、その音は室伏氏のとても趣のある建築空間とも上手く融合したように思います。

 

[バイブル・センター]

南口側のバイブル・センターは2階に集会室があります。こちらもコンクリート打ち放しで、室の前後がガラス張りです。響きが長くなることが予想されたので、天井の梁間に吸音材を配置し、壁の柱部分を音を散乱させる形状とし、後方窓に吸音性の縦ルーバーブラインドを備えて響きを調整しました。

 

 バイブル・センターの外観

 (教会提供)
 

音響設備は教会のご要望で移動式としました。コミュニティー・チャペルと同じスピーカとミキサーで統一を図っています。

 

 集会室の内観
 

コミュニティー・チャペルとバイブル・センターが多くの方々に長く親しまれていくことを期待しています。

 

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