下記リンクよりPDFのダウンロードが可能です。参考にしていただけたら幸いです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/78/1/78_21/_article/-char/ja
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□日 時: 2023年3月17日(金)10時00分 〜 16時30分(受付開始9時30分)
会 場: 千代田区内幸町ホール
参加費: 前売券/会員 3,000円、一般 5,000円、 学生 1,000円
当日件/会員 4,000円、一般 6,000円、 学生 1,000円
申込み: 要事前申し込み、事前入金
午前の部
10:00〜12:00
■シンポジウム『劇場メディアの拡張性』
〜新しい音声、映像伝送技術でどう拡張していくか〜
基調講演: キャメロン・オニール(NEPジャパン)
映像部会・音響部会共同研究 ST2110研究会発表:
平井哲史(TXAプランニング)、西村岩夫(ヤマハサウンドシステム)
パネルディスカッション:
伊藤正示(JATET会長、シアターワークショップ)
キャメロン・オニール(NEPジャパン)、石丸耕一(東京芸術劇場)、
平井哲史(TXAプランニング)、西村岩夫(ヤマハサウンドシステム)、
今成 歩(池上通信機)、内田匡哉(内田音響設計室)
午後の部
12:45〜13:15
■映像部会「劇場導入プロジェクションの要件について」
北村 剛(バルコ)、佐野龍一(バルコ)
13:20〜14:00
■音響部会「舞台連絡設備の管理と運用について」
内田匡哉(内田音響設計室)、河原田健児(新国立劇場)、橋崎立嗣(アセント)
14:05〜14:35
■機構部会「バトン形状の調査・研究について」
熊谷明人(世田谷パブリックシアター)、真井隆年(小林舞台システム)
14:40〜15:20
■照明部会「舞台照明に関わる電磁ノイズの影響について」
役野善道(パナソニック)
15:30〜16:30
■建築部会「地域文化施設の次代のキーワードを探る」
兒玉謙一郎(久米設計)、能勢修治(石本建築事務所)、岩永裕人(アールアイエー)
音響部会のセミナーは、昨年に引き続き劇場の舞台連絡設備について、設計、管理、運用に関する現状や課題を取り上げます。
詳細は、JATETフォーラム2022/23の特設ページ https://www.jatet.or.jp/forum/JF202223/ をご覧ください。皆様のご参加お待ちしております。
なお、2021年の舞台連絡設備アンケート調査の報告書はJATET音響部会のページ https://www.jatet.or.jp/tech/sound/で公開されていますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。
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学会誌の表紙
この中で、当方が
「音声情報伝達の重要性が見落とされがちな施設の実情と対策−屋内スポーツ施設、学校の体育館を例に−」
と題して執筆させて頂きました。
内容は次のようになっています。
1. はじめに
2. 音声情報伝達の必要性
3. 音声情報伝達の阻害要因
3.1 残響過多
3.2 拡声設備の問題
3.3 人的要因
4. 建築的な対策
4.1 残響時間の目安
4.2 吸音処理
5. 拡声設備での対策
5.1 動作性能の目標値
5.2 マイクロホン
5.3 マイクロホン入力音声の補正
5.4 スピーカシステム計画
1) スピーカの配置
2) スピーカの指向性
3) アンプ〜スピーカの接続方式
4) 電気音響シミュレーション
5.5 スピーカ出力の音響調整
6. 新築、改修の実例
6.1 学校の体育館1(改善対策)
6.2 学校の体育館2(新築)
6.3 半屋外スポーツ施設(拡声設備の改修)
6.4 屋内プール(新築)
7. おわりに
本稿では、私自身も拡声の不明瞭さについて相談を受けることが多い学校の体育館と屋外スポーツ施設を例に、建築と音響設備の両面から、良好な音声情報伝達を確保するための要点と対策を整理しました。音に対する関係者に意識の問題にも触れています。また、6章では、学校の体育館とスポーツ施設について、新築と改修の最近の実例をそれぞれ1例ずつ紹介しました。
いずれも基本的な内容であり、例に取り上げた以外の様々な施設にも同様に適用できる項目が多いと考えます。
沢山の方にご覧いただき、多くの施設が良好な音声情報伝達が得られるようになることを期待しています。
内容詳細にご興味のある方は別刷り(PDF)をお分けしますので、info@uchida-acoustic.com までお気軽にご連絡ください。
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チラシ
『演出空間における舞台技術の現状と展望』をテーマに、基調講演と技術系5部会(建築・機構・照明・音響・映像)による11本の有料オンラインセミナーがイープラス「Streaming+」で配信されます。
□配信期間: 2021年6月1日(火)10時 〜 30日(水)23時59分
視聴料金: 1コンテンツ:1,000円、全コンテンツ:5,000円
(いずれも期間中視聴可能)
■基調講演「JATETの30周年と創造型劇場の30年(創造型劇場の誕生と深化)」
第一部:企画・構想 / 第二部:設計・建設 / 第三部:開館から現在・未来へ
パネラー:佐藤 信(劇作家・演出家、座・高円寺芸術監督)、市来邦比古(舞台音響家)、桑谷哲男(office HIP BIRD主宰、公立劇場アドバイザー他)、斎藤 義(建築家)、熊谷明人(技術監督、世田谷パブリックシアター技術部長)、西 豊彦(JATET理事、ラムサ代表取締役)
■建築部会「新型コロナ禍で劇場の将来はどう変わるのか?最先端飛沫シミュレーションを用い予測する」
講師:織間正行(久米設計)、長谷川祥久(香山壽夫建築研究所)、小川清則(鹿島建設)、古橋 祐(昭和音楽大学)
協力:坪倉 誠(神戸大学教授)
■機構部会「保守時コロナ対策と吊物駆動装置の変遷」
講師:薮内信彦(三精テクノロジーズ)、佐々木智幸(不二装備工業)、浅野安通(三精テクノロジーズ)
■照明部会「最新照明卓の機能と将来への展望」
講師:加藤憲治(ライティングビッグワン)、八木崇晃(丸茂電機)、茅野邦宏(東芝ライテック)、役野善道(パナソニック)、加藤春輝(丸茂電機)
■音響部会「舞台連絡設備アンケート結果と考察」
第一部:イントロダクション、有線インカム、ワイヤレスインカム
第二部:映像モニター、音声モニター
第三部:トークバック、楽屋呼出、キューランプ、クロージングトーク
パネラー:石丸耕一(東京芸術劇場)、金子彰宏(兵庫県立芸術文化センター)、内田匡哉(内田音響設計室)
■映像部会「劇場・舞台映像の今後」
その1「NHKホールを題材に劇場音響映像設備の技術革新と将来を考える」
パネラー:小木曽圭一(NHKホール)、新井 清(元NHKアート)、為ケ谷秀一(元女子美術大学・大学院教授)、平井哲史(TXA Planning)
その2「スマートシティ構想における劇場の将来を考える」
講師:中村公洋(日建設計)、為ケ谷秀一(元女子美術大学・大学院教授)
音響部会のセミナーは、劇場などの舞台連絡設備について、昨年度までに全国の会館に対して行った実態アンケート調査の結果を報告するとともに、その結果をもとに東京芸術劇場の石丸耕一氏と兵庫県立芸術文化センターの金子彰宏氏に現場の声をお聞きしました。
3本に渡る大セミナーとなりましたが、石丸氏と金子氏からは舞台連絡設備のシステム設計や機器製造に関する大変貴重な現場の声が聞かれました。セミナーの進行を務めた私自身も大変勉強になりました。ぜひ多くの方にご覧いただきたいセミナーです。
詳細は、JATETフォーラム2020/21の特設ページ https://jf202021.jatet.or.jp をご覧ください。皆様のご参加お待ちしております。
なお、アンケート結果報告書がJATETのホームページ https://www.jatet.or.jp で公開されていますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。特に自由記述に現場の生の声が見られてとても勉強になります。
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ホールの内観
(写真はすべてオープン時のもの)
このホールは、オーナーの垣内氏が自宅を新築する際に自宅の一部につくられたもので、ルツェルンのコンサートホールの雰囲気がお気に入りとのことから、白色を基調にしたデザインになりました。設計は(株)計画工房K's officeです。
舞台から客席を見る
音響設計については、ホールの1階部分の壁と天井は上下や左右に微妙に斜めにして平行を崩し、定在波やフラッターエコーなどの音響的マイナスを抑える一方で、2階部分の壁は逆に平行のままとして出来るだけ響くようにしています。小空間では人の吸音の影響が大きくなるので内装では一切吸音していません。天井が高くとれたこともあって、満席時でも気持ちのいい響きが感じられます。また、防音にも配慮しています。
FAZIOLI ピアノフォルティ
そしてホールのピアノはイタリア FAZIOLI 社のグランドピアノです。有名なこのピアノを一度は弾いてみたい、聞いてみたいと思われる方も多いことでしょう。
また、ホールの隣にピアノレッスン室があり、こちらの音響設計も担当させて頂きました。壁と天井を微妙に斜めにして不正形な室にすることと、低音から高音までバランスよく吸音するように工夫することで、音響を整えています。
ピアノレッスン室の内観
壁のクリーム色の部分と
天井の模様付きの部分が吸音材
2種類を組み合わせている
この日のコンサートは、3年前のオープニング公演でも演奏された前田妃奈さん(Vn)と、馬場彩乃さん(Pf)、そしてイギリスでバイオリンを学ばれている、オーナー家のご兄妹 垣内響太さん(Vn)、垣内絵実梨さん(Vn)。皆さん10代とは思えない素晴らしい演奏でした。
ちなみにCas'Applausiとは、イタリア語の拍手喝采(Applausi)と家(Casa)を合わせた造語とのことです。このホールがこれからも若い才能が羽ばたく場となり、拍手喝采で溢れることを期待しています。
会場の様子
実は全てHitaruの舞台上
写真のような下手側の端の席でしたが、イマーシブオーディオシステムの効果により、期待通りとても良く聞けました。
各楽器の音が、舞台の下手からドラム、ベース、ピアノの順に見たままの並びで聞こえます。特定の楽器が聞こえにくいということもありません。
また、演奏が盛り上がってきて各楽器が強く弾かれ音量が増しても、音が崩れずに解像度が保たれます。
従来のステレオシステムでは体験できない音だと感じます。
PA分野でのイマーシブオーディオシステムというと、音像を動かすことや残響を増やすことが注目されがちですが、私は上に述べた、
”見たままの位置から音が聞こえることにより全ての客席で音が自然に聞こえるようになる”
ことと、
”オーディオバス内での各信号の干渉の影響が低減されることによる音質の向上”
が、本質的で大きなメリットだと思います。
実際、d&b Soundscape の開発者、Ralf Zuleeg氏は、ステレオシステムでのセンター以外の席の音の聞こえ方を改善することが開発のキッカケだと話しています。
更には、実際の楽器の位置とは異なる位置にオブジェクトをあえて配置したり、各オブジェクトのパラメータを細かく調整したりして、よりよい音や音響表現に至ることが期待されます。
多くの公演や会場にイマーシブオーディオシステムが採用されて、私達の音楽体験がもっと素晴らしいものになることを期待したいです。楽しみです。
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そんな中、Web会議の相手が”大人数でマイクと画面を共有してる場合” に(私の場合は設計事務所や工事現場事務所)、相手側の音声が”聞こえにくい”、”途切れる”、”ノイズがうるさい”など、音が上手くないことが多くありました。そうなる理由を考えてみます。
”聞こえにくい”
大人数だと、Web会議でも対面会議の時と変わらずテーブルをコの字型などに配置して座ることが多く、マイクがディスプレイの位置やコの字に配置したテーブルの中心などに置かれます。大人数の側で発言し合うこともあるため自然な配置なのですが、マイクと大人数の参加者の距離が離れて、集音される声の音量が小さくなります。
しかし、その場の暗騒音(対象とする音声以外の雑音。空調騒音や屋外騒音や会議に関係ない人の話し声など。)の大きさは変わらないので、マイクで集音される音声と暗騒音との音量差が少なくなり(S/Nが低くなり)音声が聞こえにくくなります。
Web会議のソフトウェアにはマイク音量を自動調整する機能がありますが、暗騒音を変えずに音声だけを音量調整することはできません。自動音量調整の効果が期待できるのは、暗騒音が少なく静かな環境の場合のみです。
よってWeb会議では、マイクと参加者ができるだけ等しく近くなるように、テーブル配置から見直すと良いでしょう。マイクを増設できる場合はそれも考えられます。
”途切れる”
理由として、インターネット回線の状況が悪いことや、無線LANを使っている場合には電波状況が悪いことが考えられますが、それ以外に、PCやWeb会議ソフトウェア側の音声信号処理が悪さをしている場合も多いです。
マイクの自動音量調整機能は、話者の声量が小さい時には音量を上げ、声量が大きい時には音量を下げてくれる便利な機能ですが、誰かが話している最中に聴衆のくしゃみの音やドアがバタンと閉まる音や拍手など突発的な大きな音を検知すると、それを不要な騒音と判断してマイクを一定時間OFFにしたりします。そうするとリモート側ではその間、話者の声が聞こえなくなります。騒音が断続的にある場合には、その度に音声が”途切れる”ことになります。
そんため、暗騒音の条件が悪い場合には、マイクの自動音量調整機能の効き具合をむしろ弱めに変更もしくはOFFにして、室内の暗騒音を低減する工夫をする方が良いことがあります。
”様々なノイズ”
対面会議では当たり前に発生して、でもあまり気にならない様々な音が、Web会議ではリモート側にとってノイズになることが多くあります。
書類をめくる音や机とすれる音、PCのキーボードの打鍵音、マウスのクリック音、誰かが手の上で回していたペンがテーブルに落ちる音、癖でペンのノックをカチャカチャやる音、リモート側と会話していない人達の内輪の話し声、など。
これらの音はマイクで集音されると思いのほか目立って、連続的に聞こえていると、特にヘッドホンやイヤホンでは強いストレスを感じます。また、先に述べた自動音量調整によるトラブルの原因にもなりえます。
マイクに入る声の音量が十分に大きければ、上記のようなノイズの音量は相対的に小さくできます。この点からも、参加者とマイクが近くなるテーブル配置、マイク配置を検討するのが良いです。
また、これはリモート側でも同じで、特にPC本体に内蔵されているマイクは、卓上の書類の音やキーボードの打鍵音やマウスのクリック音などを自分が思う以上に大きく集音します。これは音が振動としてマイクに伝わる影響もあります。そのため、PCやテーブルに接触しないマイク付きイヤホンやヘッドセットなどを使う方が不快なノイズの影響を低減でき、声も大きくなるので有利です。
同時にPCやWeb会議ソフトウェアがもつハウリング自動抑制機能やエコーキャンセラ、ノイズキャンセリング機能も過大に使わずにすむため、急に電子的な音質になったり、その場にない電子的なノイズが発生することも抑えられます。
よって、できるだけPC内蔵マイクとスピーカでなく、イヤホンマイクやヘッドセットを使うのが良いです。
ちなみに最近、ポータブルオーディオ用イヤホン等にも採用されているノイズキャンセリング機能は、一般に安定走行している飛行機や車の中など騒音が定常的な状況では効果がありますが、突発的で変動する騒音には効果が低くなります。Web会議の場合、後者の条件が多いのではないでしょうか。
モニタリング
Web会議の特徴として、上記のような音声トラブルが自分たちの側で発生していることも、それによって相手側が聞きにくくなっていることも、自分たちでは気付けないことが挙げられます。自分たちの音が相手にどう聞こえているかがお互いに分からないから、聞こえにくいと伝えても中々適切に改善されないことを多く経験します。
そこで気づいたのですが、トラブルの起こりやすい大人数の側では、もう1台別のPCやタブレットでWeb会議に参加して誰かがモニターすれば良いのではないでしょうか。もちろん、追加のPCやタブレットはイヤホンで聞いてマイクはOFFにしておく必要があります(大人数で使っているシステムとハウリングしてしまうため)。こうして大人数の側でモニタリングすれば、音質・音量の良し悪しやトラブルの有無が自分たちの側で把握でき、適切な音の状況維持がしやすくなると思われます。
Web会議に限ったことではありませんが、自分が適切な音を出しているか、相手にどう聞こえているか、という事を自分の身だしなみと同じように意識したいと思います。
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その模様はYouTubeでライブ配信されましたが、アーカイブされており、今日現在、どなたでも視聴頂けます。
私も当日は別件で見られず、翌日視聴しました。アーカイブのお陰で遠方でも当日都合が悪くても、自分の都合の良い時に見られるのでありがたいですね。しかも分割して見ることもできます。東京開催のみのセミナーや研修が多いので、COVID-19が落ち着いた後でも配信とアーカイブが標準になってもらえるとありがたいです。
セミナーの内容は勿論ですが、セミナーの進行自体が現段階での対策をしながらの舞台進行の実演、実例になっていて有意義に思いました。是非、お時間のある時にご覧ください。
セミナーの詳細と視聴はこちらの協会HPをご覧ください。
概 要(協会HPから引用)
第1部 各劇場などの感染防止ガイドラインの紹介と
そこから読み取る舞台音響スタッフの注意するポイント
◎JATET 音響部会⻑ ⻄村岩夫氏
「新型コロナウイルス感染防止のための安全手帳」
◎劇団四季 音響・音楽 担当副部⻑ 原英夫氏
「公演現場での感染防止対策、問題点」
◎(株)S.C.アライアンス 瀬谷正夫氏「会社での機材消毒に関しての検証」
◎神奈川芸術劇場 ⻄田祐子氏「劇場音響スタッフの感染防止対策、問題点」
◎東京都交響楽団ステージマネージャー 山野克朗氏
「東京都交響楽団の感染防止ガイドラインと除菌洗浄対策」
第2部 劇場の設備・機器の除菌洗浄方法の実演と体験
◎東京芸術劇場 石丸耕一氏 「劇場音響チーム除菌洗浄方法」
第3部 舞台技術者がおこなう配信技術
◎日本舞台音響家協会 石丸耕一、白石安紀、澤口敬一
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ちなみに私が協力させて頂いた会場施設は、2月末に、2週間に渡り夜間作業だった音響調整と音響測定を無事終えて、出番を待ってます。なかなかの仕上がりと思います。
ホール等でスピーカが収納されている部分の開口(前面パネル)は、音を透過するクロスで仕上げられているものの、クロスを張る木枠を補強するための太い下地材も結構あると思います。
改修前のプロセニアムスピーカ開口部の例
(壁の裏側から見る)
右側の黒い箱がスピーカ(ウーハユニット)
同サイドスピーカ開口部の例
右側のグレーのものがスピーカ(ホーンユニット)
改修が計画されるホールのスピーカシステムは、ほとんどが20〜30年前のポイントソースタイプと思われます。
このタイプのスピーカは音を発する位置が点状なので、特に高音を発するホーン部分の前にさえ邪魔物が無ければ、致命的な音質の劣化は避けられます。
ところが、最近主流のラインアレイタイプのスピーカは、高音を発する部分が線状になっていて、かつそれを延長するように複数のスピーカを連結して用います。連結したスピーカの上から下まで切れ目なく発音部が連続する事で、ラインアレイタイプの特徴である鋭い指向性や遠達性が得られるのです。
と言う事は、ラインアレイタイプのスピーカに更新しても、開口部の下地材が以前のままでは、以前に増して客席に格子状の音の影ができ障害となってしまいます。これではせっかくの改修も片手落ちと言わざるを得ません。
改修後のプロセニアムスピーカ開口部の例
(上の写真と同じホール)
右側の円弧上に連結された黒い箱がスピーカ
(ラインアレイタイプ)
縦桟を中止し、かつスピーカ前は横桟も細くしている
改修後のサイドスピーカ開口部の例
(上の写真と同じホール)
右側の円弧上に連結された黒い箱がスピーカ
(ラインアレイタイプ)
スピーカ前の桟を中止
観客が触れられる位置のため、クロスを突き破らないようにワイヤーメッシュを入れている
音響設備の改修ではとかく音響設備だけが注目されがちですが、実は音響的な品質は、音響設備だけでなく建築的な要素にも大きく影響されるのです。
スピーカ前面のクロスや桟以外に、スピーカ収納スペースの吸音が十分かどうかや、そもそもスピーカ用開口が客席全体へ音を届けるのに十分な寸法かどうかといった根本的な点もあります。
スピーカの改修計画の際には、新しいスピーカの能力を発揮させるためにも、スピーカ前面のパネルをはじめ建築的な部分についても忘れずに改修検討してください。
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サイドスピーカ
上からサブウーハ、遠向き、中向き、近向き
今回はアンプにPowersoft社のOttocanaliをチョイスして、しかも200Vで鳴らしてます。(今までは100V駆動が普通)
200Vで鳴らしたらいつもよりエネルギーに満ち溢れ、肌艶もよくなった感じで、「おっ、いいじゃん!」な仕上がりになりました。
アンプを200V駆動するのは音が良いだけじゃなく、電源ケーブルも細く出来たり電圧降下にも有利だったりで、PAカンパニーではよくやられていますが、公共ホールや劇場などの固定設備での採用は最近見られるようになったばかりです。
これからのスタンダードでしょうね。
プロセニアムスピーカ
上から遠向き、中向き、近向き
視聴機材
視聴は普段私が仕事(現場音響測定)に使用しているノートPCとオーディオIFを準備して、ヘッドホンで聞きました。
ドリンクを飲みながら気軽に視聴できるは配信のいいところですね。(ブドウの微炭酸)
視聴の様子
ところでタイトルにある Binaural(バイノーラル)ってご存知ですか?
バイノーラルとは英語で「両耳の」という意味の形容詞です。そして、バイノーラル録音とは、人間の頭部と両耳による音響効果を含めて録音しようと工夫されたマイクロホンによって、音をステレオ録音する方法です。音響の研究分野では古くから用いられていたのですが、最近、コンシューマ市場でも注目されてきています。
LURUHALLでは写真のように人頭の形状をもつダミーヘッド・マイクロホンで録音していました。左右の鼓膜位置にマイクロホンが内蔵されています。これはヘッドホンで聞いた方がバイノーラル効果がより分かるんです。
手前の頭だけの黒い人形がダミーヘッド・マイクロホン。
耳たぶや鼻もあります。
途中、演奏者が楽器を鳴らしながらダミーヘッドの周りをまわってくれたので、ヘッドホンで聞いていた視聴者の方はバイノーラルの効果がよく分かったと思います。面白い演出でした。
配信は思っていた以上にS/Nも音質も良く楽しめました。これで演奏者の動きと音のズレが無くなると、ノリが感じられるようになって更にいいですね。
あと、拍手が届けられないので、公演中に観てる方がコメント入れられて、出演者が最後にでもそれを見られたら、リモートでも観客の反応が分かっていいのでは?と思いました。アンケート的なものでもいいですし。
なんて色々勉強になったBinaural LIVE!でした。演奏者のロビンさんとホール支配人・録音エンジニアの田口さん、スタッフの皆さんにブラボー!
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ダウンロードはこちら
これは主に劇場等の音響スタッフを対象に、マイクロホンやヘッドセット、音響設備機器などの消毒方法をはじめ、出演者と接触する場合の留意事項や作業形態別の留意事項など、舞台を運用するにあたりCOVID-19感染防止の観点から守るべき留意事項がまとめられたものです。
なお、対策に関してまだ十分な情報がない点や未確認な点がある状態ですが、現在分かっている情報を早急に公表することが重要との判断から、β版として公表されており、新しい情報が分かり次第、内容が更新されています。ぜひ、定期的にご確認ください。
また、有効な対策情報をお持ちの方は、私にでもJATETにでもお知らせ頂ければ幸いです。
安全に舞台公演が開催できるようにみんなで頑張りましょう。
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日本建築学会環境基準
AIJES-S0001-2020
表紙
今回の改定では、音響性能の推奨値については初版から変更ありません。
主な変更点は以下の通りです。
・保育施設の音環境に対する規準の追加(乳幼児の保育室や学童保育施設を含む)
・木造校舎に関する設計指針の追加
・鉄骨造校舎に関する設計指針の追加
・特別な支援を必要とする子どもの学習環境に関する設計指針の追加
・乳幼児の保育空間に関する設計指針の追加
初版では小学校、中学校、高等学校を対象としていましたが、最近の社会情勢を反映して、乳幼児の保育や学童保育などにも対象範囲が広がっています。また、木造と鉄骨造を追加し、最近の学校建築の動向も反映した内容となっています。
その他、細かいところで情報の追加や見直し、最新規格への対応などが盛り込まれています。
電気音響設備に関する変更点は以下通りです。
・マイクロホン毎の音質補正が可能なシステムを推奨
(ハンドマイクとタイピンマイクを個別にゲイン・音質調整できるように)
・動作特性の測定法として、劇場演出空間技術協会編「劇場等演出空間における電気音響設備動作特性の測定方法 JATET-S-6010:2016」を参照
・標準的なシステム構成例にエアモニターマイクを追加
と、ここでちょっと話が脱線(でも私的には超重要)しますが...
上記のなかで、マイクロホン毎のイコライジングはとても重要なポイントです。
例えばワイヤレスマイクのハンドマイクとタイピンマイクでは、構造も感度も口元からの距離も全く異なるので、個別に調整が必要になることは容易に理解できます。
ですが、学校等を対象にした業務用オーディオミキサーでこれが可能な製品はほとんどありません。理由は「利用者(先生や生徒)が使えないから」のようですが、納入業者がハウリングや音質に対して適切に調整して納入すれば、利用者が調整をする必要はありません。それなのにマイク毎の調整機能が実装されないのは、実は「利用者」ではなく「現場に納入する業者」が調整・設定できないからだと思われます。
ここから、音響設備は明瞭な音を提供することが目的なのに、肝心の音のクオリティには無関心で(音が出ればOKと判断)、機器だけ納入して終わっている状況が目に浮かびます。学校等の音響設備のほとんどが、音に知識や技術力のない業者に発注されているという現実です。
納入業者の方々には、音にも意識を向けて頂き、音の知識や技術の向上に力を注いていただきたいと思います。
学校側は、機材だけではなく「よい音」を提供してくれるような納入業者を選定するようにして頂きたいと思います。
そして、機器メーカには、利用者(先生や生徒)よりも納入業者を客と見るのではなく、明瞭な音が提供できる機器を供給いただくとともに、良い音を実現するための機器の使い方や調整方法を納入業者に指導するようにして頂きたいと思います。
海外メーカには、自社製品によるシステムのクオリティを維持するために、メーカが行う研修などを受けて認可した業者にのみ、自社製品の施工を許可あるいは推奨しているメーカもあります。
販売先を広げて多売の可能性を維持しあとは納入業者まかせという思考ではなく、納入業者を限定しても共に自社製品が納入されたシステムのクオリティを高く維持し顧客満足度を高めることで販売と価格とブランド力の維持を図ることを重視する思考です。
日本のメーカは是非見習ってほしいものです。
また話が少し派生しますが、
学校等に納入されるワイヤレスマイク装置にはかならずハンドマイクとタイピンマイクがありますよね。だったら受信器に予めハンドマイク用とタイピンマイク用の基本的なゲイン・イコライザ・リミッタ設定などを組み込んで、現場に応じて選択可能なったらいいですよね。そうすれば、マイク入力にイコライザがなく古いアナログのオーディオミキサーでも、新しくても適応性のない選択式イコライザしかないデジタルのオーディオミキサーでも、ハンドとタイピンに適切な最低限の音質補正を受信機で設定できます。
加えてユーザーEQもあって、会場の音響特性に応じてハウリング制御用のノッチフィルタが入れられたりすれば、とりあえずオーディオミキサーを選ばずに適切な音質が提供できるはずです。昨今、DSPチップはとても安価だそうです。そんな気の利いた製品を出す国内メーカはないものだろうか。
もうひとつ。
オーディオミキサーとパワーアンプの間に音質補正用のシグナル・プロセッサが導入されているシステムの場合、プロセッサの入出力にワイヤレスマイク分の空きがあれば、それをマイク・イコライジングに活用することもできます。
ワイヤレスマイク受信機のラインレベル出力をプロセッサに通して必要なイコライジングをしてオーディオミキサーに入れる。やや荒業ではありますが、もともと多チャンネルのプロセッサを入れる予定であれば、マイク本数分の入出力を追加することでコストアップも低く抑えられるかと思います。
と、気が付けば脱線話の方が長くなってしまいましたが、それくらいマイク毎のイコライジングが重要ってことでご容赦ください。
その重要なことが学会の規準・設計指針に書かれているわけですから、国内メーカ、納入業者、設計者の皆さん、それぞれの立場で考慮して頂きたいです。
子どもたちが良い音環境で学習活動ができるように、日本建築学会の学校施設の音環境保全規準・設計指針の改定版、是非、購入して設計に生かしてください。
※関連記事「学校体育館の拡声の現状」はこちら
※学校施設の音環境保全規準・設計指針 2008年の初版に関する記事はこちら
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ちらし
その内容はなんと、兵庫県立芸術文化センターと札幌の札幌文化芸術劇場hitaru(昨秋オープン)と小倉の北九州芸術劇場、この日本の南北に1,500km離れた3劇場をネットワークで繋ぎ、各劇場に控えるパーフォーマー(兵庫:兵庫県立高砂高校ジャズバンド部、札幌:北海道札幌国際情報高校吹奏楽部、北九州:北九州市立高校ダンス部)がネットーワークを介してセッションするという試みです!
一昨年の同セミナーでは、兵庫県立芸術文化センター内の別空間(大ホール舞台と同舞台裏とリハーサル室)をネットワークで繋いだセッションを試行していましたが、今年は別空間の距離がいっきに日本規模に拡張されるようです。
複数の劇場間での連携公演への試行がどうなるのか、非常に楽しみです。
また、もう一つのトピックに「親子室」の見直し?新たな使い方?の試案もあるようです。
どなたでも無料(要申込)で参加できますので、興味のある方ぜひご参集ください。
名称: 兵庫県立芸術文化センター/ひょうごT2 第14回 舞台技術セミナー
日時: 2019年12月12日(木) 13時開場(ロビー展示有)、14時開演、18時半閉会
場所: 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
費用: 無料
定員: 500名
申込: ※事前申し込み必要(当日受付も可)
※申し込み方法など詳細は、兵庫県立芸術文化センターHPを参照してください。
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チラシ
今年はセミナーと展示が同じ会場で開催されますので、便利になります。
(舞台前側と客席がセミナー会場、舞台後側が展示会場となります)
音響部会のセミナーは初日8/30(金)の13:00〜です。
テーマは「音響空間演出の現在」と題し、演劇での音響空間演出の事例報告と、イマーシブ・オーディオシステムの簡易的な体験を計画しています。
その他、建築、機構、照明、映像の各部会のセミナーがあり、展示と併せてご覧いただけます。
業界の動向や最新技術・製品に関する情報を得られるよい機会ですので、ぜひご覧ください。
なお、事前申し込み・入金が必要ですので、JATETのHPの技術展ページを参照の上、お申込みください。
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チラシ
セミナーの内容は変わりません。5部会のセミナーが1日に凝縮して開催されます。
ぜひご参加ください。
10:00 受付開始
10:30〜11:40 音響部会 「仮設電源の現状と持込機器の電源事情
及びPA電源の200V化について」
「新劇場の音響設備概要と特徴について」
12:50〜14:00 照明部会 「LED 照明器具の銘板と用語、
およびフィルタ相関DMX レベルについて」
14:10〜15:20 機構部会 「最新の関連指針と新劇場の舞台機構設備」
15:30〜16:40 映像部会 「劇場間ネットワーク」
16:50〜18:00 建築部会 「主要事例から見た音響反射板の類型と傾向を探る(続編)」
※予定は変更となる可能性があります。 ※懇親会はありません。
※参加には事前申し込み・支払いが必要です。JATETホームページからお申し込みください。
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コンクリート打放し仕上げで吸音が少ない体育館は満員でも合唱には程よく響いていました。普段の体育授業ではどうなのか気になるところです。
イメージ
私の事だから音の話題と思うでしょうが、今日気になったのは照明の前明かりが足りないことです。
生徒は出来るだけ舞台の前側(客席側)に立つように指導されるのでしょう。舞台が高いのでその方が観客に見やすいですし、声も届きやすいから必然と思います。幕設備しかない学校体育館の舞台で学生の音楽発表として定番の合唱をするなら、響きのある客席側に出来るだけ出た方がいいのは当然です。
ところが、残念ながらその位置は舞台の天井に備えられたボーダーライトよりも前になるので明かりが届きません。生徒の後ろに広がる無人の舞台空間とえんじ色の幕だけが明るく見えて、肝心の生徒たちは逆光状態。
フットライトもあるのですが、生徒との距離が近いので顔ではなく足をライトアップ。ハロゲンランプなので熱そうですし、万一接触して火傷でもしないか心配になります。
唯一の前明かりは左右のサイドギャラリーからのスポットライトです。公立の小中学校ではこの方法が多いようですが、そもそも光量が足りていませんし、MCやセリフを言う人にフォーカスすると他に並んでいる生徒は暗くなってしまいます。
出演者に照明がきちんと当たらないなんて、舞台として機能していないと言えます。ましてや観覧している家族が写真やビデオで撮影するのが当たり前の時代にとても残念です。昔のままコピペされた舞台計画が現在の使い方に合わなくなっているのです。
これからは学校の体育館にも、劇場に備わっているプロセニアムライトやシーリングライトのような前明かりが必要でしょう。だって、一生懸命頑張っている子供たちに文字通り「光が当たらない」なんて報われないじゃないですか。LED式の照明器具にして色も変えられるようにすれば、もっと多様な表現ができるし、前明かりが確保されればサイドギャラリーのスポットライトは本来のスポットライトとして使えるようになります。
欲を言えば舞台前の天井にプロセニライトと一緒に音響反射板も付けたいですね。ただし、バスケットボールのゴールと取り合いが必要ですが。(笑)
子供達の頑張りを応援したいです。
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音が邪魔されまくりのスピーカ
スピーカの真正面、音が放射される範囲に鉄骨と照明器具があり、音が邪魔されまくりです。観客席からスピーカがまともに見えません。8か所ほど設置されていましたが、すべてのスピーカが同様の納まりでした。
どうしてこんな事になるのか、私には理解不能です。これがスプリンクラーなら散水障害として所轄の消防署から是正指導が入るでしょう。これが照明器具なら誰もが不備を指摘するでしょう。
スピーカだって一緒です。明瞭な音声を聞き手に届けるという機能が十分に発揮されない設置は不備と言えます。ですが問題にされずに写真のようなことが往々にして起こっています。
実際にスピーカの取付をした音響会社の人は、拡声に支障が生じるがいいのか?と元請けの電気設備工事会社の担当者に確認したそうですが、図面通りに施工するようにとの指示だったそうです。図面は工事管理者だけでなく設計者・監理者も確認するはずですから、そういう人達が少しでも音響に関心をもち、適切に図面を見て判断してくれれば、こんな残念なスピーカは減るはずです。
とは言え、本当に可哀想なのは、税金払って建てたのにこんなスピーカな音を聞かされる市民ではないでしょうか。
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卒業式。会場の体育館のスピーカは国内メーカが揃って標準とするメインスピーカ(舞台左右に各1台)+サブスピーカ(室の前から2/3付近の両側壁に各1台)。基本は間違っていないがなぜか室の奥行や幅に関係なくどこも同じ機種と台数で、音質補正やディレイの機能が不十分で空間に合せた音響調整ができない・されていないことが多い。そのため室の響きが抑制され、明瞭な言葉が十分な音量でマイクに入力されれば聞こえるが、声が小さい、滑舌が悪い、マイクが遠い、響きが長いなど拡声に不利な要因があると突然崩壊する。
私は会場最後部の下手にいたが、スタンドマイクの司会者の言葉は聞き取れたが、演壇の校長、来賓の挨拶、卒業生の答辞は隣の妻曰く「何を言ってるのか全然分からない」状況。演壇ではマイクと口が離れるし、来賓は早口でやや不明瞭な話し方だった。会場の響きは短めだが、室の奥行きに対してサブスピーカの数が足りていない。また音量が程々の時はサブスピーカの音が支配的でまだ良いが、声が大きくなるとメインスピーカの音も聞こえ、ディレイがない為にサブスピーカの音とずれて非常に聞き難くなる。声量が変化する度に聞き取れる・取れないが繰り返され、いっそずっと聞き取れなければ諦めがつくのにと思うほど。
このような拡声の実状は工事完了時に声量を一定に保つ訓練をしているNHKアナウンサーによる試聴用CDを再生しても確認できない。私の経験と知人の話を総合すると学校体育館の拡声が不良の事例は多い。拡声設備の基本は字の如く増幅装置だ。よって拡声品質はマイクで入力した音をいかに良い音に整え、空間に応じていかにスピーカを計画し、再生音をいかに明瞭なひとつの音に整えるかで決まる。空間での音の振る舞いの考慮とそれを適切に調整する機能がカギである。
学校体育館は拡声に不利な音響条件になりがちなのでその検討がより重要である。それにも拘らず、設計事務所が頼るメーカの無償の設計協力・提案システムは、空間の音響の考慮が皆無もしくは不十分で調整機能も不足の機器のことが多い。提案に添えられる直接音の音圧シミュレーションには室内音響は加味されない。しかしメーカも設計事務所も施主も皆それで十分だと思っている。
学校体育館などの拡声設備の設計・施工が長年このような状況で行われている為に残念な拡声設備が今も全国に蔓延し続けている。
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以上が寄稿文ですが、ブログでは知人の話もいくつか紹介します。
「同感です。自分の子供や孫の運動会の音たるやひどいものがあります。聞こえない場所や歪んでる音で演技させている。先生たちの努力が晴れ舞台では発揮されていないし父兄たちも当たり前のようになっている。お金のある幼稚園とか私立の学校では音響会社に頼んでいるところもあるようですが、予算の見直しを根本的に改善していかないと難しいように思われます。多感な幼少期にこそいい音でいい音楽を聴いて育つとまた違った力が発揮できるはずです。教育委員会に打診したこともありましたが、事なかれ主義でたらいまわしにされたこともありました。なんとかしたいのは本当に同感です。」
「昨日の卒業式の体育館は、校歌パネルの外側にスピーカで左右に離れすぎていました。先日あまりにひどい状態に校長先生直々に調整を依頼してきた母校はディレイが無い状態。新しい統合中学校はサブスピーカーにディレイも装備されていました。GEQやレベル調整でなんとかしのげるものの、ワイヤレスマイクなどはチャンネルがあったりグループもめちゃくちゃと言うところが多い。何度か調整しているところも次に行くと完全に無法状態。生徒や先生、それに時々訪れる学校公演の出演者があり得ない設定にしたりしている。アメリカの学園ドラマなどでは学生がPAの調整をしている姿を見かけますが、表現の手段としての音響技術は学習プログラムに入らないものだろうか?高校の音楽の教科書にPA装置の解説が載っていたものは見つけたのですが、まず先に先生を指導しなければ。」
「この問題は常々言い続けてる様に、一から順に、全てにおいて変えていかないとね。機材の問題もさる事ながら、体育館音響に関しての関心が無ければどうにもこうにも延々とこの問題は解消していかないのでは?と思ってます。」
どれもうなずけるコメントです。
学校というとよく「集会時に生徒が話を聞かない、集中しない」などと生徒を批判する声を聞きますが、そもそも聞こえ難くければ誰だって聞く気になれない、集中できないのは当然です。聞き手を一方的に批判する前に、「ストレスなく聞きとれる音声が提供できているか?」をまず考えるべきでしょう。これは音響設備の問題もありますし、話し手の話し方とマイクの使い方も大きく関係します。良い音質でストレスなく聞こえれば聞き手は自然と集中しますし、内容の理解度も増すことは容易に想像できます。何かに集中する状態はリラックスしているときに得られるもので、集中しろと強いられてできるものではありません。アスリートが本番前に大好きな音楽を聴いていることと同じです。
また、拡声設備はそこに集う人々に言葉を伝えるために設置されているはずです。さらにそこには何のために言葉を伝えるのかという大元の目的があるはずです。何のために生徒に発表させるのか。それが研究であれ歌であれスピーチであれ、自分の学習活動を他人に発表して伝えることと伝えられた他人から反応を得ること=すなわちコミュニケートによって、学習の喜びや手応えや達成感や楽しさや自信とか何かを得るためではないでしょうか?であれば学習の大切な場面を担う拡声設備の品質は、学習効果や学習意欲を左右する重要な要素です。拡声が不良であれば、頑張って準備した生徒のやる気が失われてしまうことだってあり得ます。
私は学校施設の拡声設備をこのように重視していますが、残念ながら非常に残念な設備が多いことは前述の通りです。子供たちの学校での学習活動がより本質的に充実したものになるように、本来の目的にかなった品質を提供できる拡声設備の普及に努めたいと日々思います。
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会場は今秋のオープンを間近に控えた札幌文化芸術劇場hitaru(札幌市民交流プラザ内)です。
ご案内のチラシ
音響部会は初日の初っ端で、仮説電源事情とPA電源の200V化についてのセミナーと、札幌文化芸術劇場の舞台音響設備概要を紹介します。
新劇場hitaruの見学会もありますので、ぜひお出掛けください。
詳細、申込はJATETのHPをご覧ください。(注:事前申し込み・事前入金が必要です)
スケジュール
9/6(木)
10:00 受付開始
10:30〜11:50 音響部会
「仮説電源の現状と持込機器の電源事情及びPA電源の200V化について」
「新劇場の音響設備概要と特徴について」
13:00〜14:20 照明部会
「LED照明器具の銘板と用語、およびフィルタ相関DMXレベルについて」
14:30〜15:50 機構部会
「最新の関連指針と新劇場の舞台機構設備」
16:00〜17:20 映像部会
「劇場・ホール等の映像設備デジタル化、ネットワーク化への課題と対応」
(1)演出空間での仮設設備におけるデジタル伝送及び光ケーブルの活用事例
(2)デジタル通信の基本と映像設備のインフラとしての光ケーブル及びネットワーク概要
18:00〜20:00 懇親会(要別途申込・別料金)
9/7(金)
10:00 受付開始
10:30〜11:50 建築部会
「主要事例から見た音響反射板の類型と傾向を探る(続編)」
13:00〜15:00 シンポジウム
15:30〜17:00 見学会(要別途申込)
参加費(資料代含む・通し券のみ)
会員:5,400円、非会員:7,560円、学生:2,160円 (要事前申込み・事前入金)
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サロンの内観
ヨーロッパの住宅の一室でプライベートにリラックスして音楽を楽しむ、そんな感じにしたいというオーナーのご要望に沿って音響設計しました。クラシックな雰囲気を壊さないようにしながら部屋の形を工夫し、天井を出来るだけ高く確保して音響を整えました。梁の凹凸や鏡や絵画などの装飾品も音を散乱させる要素に活用しています。
ピアノから客席の内観
50脚の椅子はサロンにマッチしたデザインに加え、座ると分かる肘掛のカーブが絶妙でとても座り心地のよいオーナーこだわりの特注品です。
そしてピアノはスタインウェイの1969年ハンブルグ製B211。象牙鍵盤でスタインウェイ黄金時代の完全オリジナルとのことです。
入手困難な貴重なピアノ
演奏会はオープンを記念して周辺の方々を招待されたもので、6人の若手演奏家によるピアノとフルートのソロと声楽三重奏を楽しみました。
小さい空間で演奏者の間近かで聞くサロン・コンサートは、楽器の音や歌手の声が情感と共にダイレクトに届きます。時にアットホームにリラックスして、また時に演奏者の情感に引き込まれて緊張して。演奏者と聴衆の一体感や親密感を強く感じながら聞くサロン・コンサートはコンサートホールとはまた違う楽しみが味わえます。
演奏の様子
こちらは別のコンサートの模様(サロン提供)
La Campanellaでは今後サロンレンタルだけでなく様々なコンサートも企画していかれるそうです。大阪で雰囲気と音響の良い音楽サロンをお探しの方はぜひ一度お訪ねください。沢山の演奏家と観客の方々にお出で頂き、多くの感動がここで生まれることを期待しています。
音楽サロン・ギャラリー La Campanella
なお、La Campanellaには素敵なレンタルギャラリーも併設されています。演奏会当日も個展が行われていました。
Gallery La Campanella
新会堂の内観と献堂式の様子
この教会はもともとJR船橋駅の南口側にあった旧会堂が市の計画道路と重なったために北口側に移転して新築されたもので、新会堂はコミュニティー・チャペルと名付けられました。また計画道路と重ならず残った敷地にも集会機能をもつバイブル・センターが建設されました。
設計監理は、室伏次郎氏((株)スタジオアルテック代表取締役)と濱口光氏((同)ミタリ設計)で、構造設計はTIS&PARTNERS、設備設計はZO設計室です。
コミュニティー・チャペルの外観
設計の初頭、当時の会堂で礼拝の見学と残響時間の測定をさせて頂きました。築50年を超える会堂はピアノと電子オルガンを備えながらも響きがとても短い会堂でしたが、大切に使われてきたことが見て取れました。また、とても印象に残ったのは、牧師のお説教が暖かく穏やかに囁きかけるような優しい音で聞こえていたことでした。この拡声の印象を新会堂にも引き継ぎたいと思いました。
旧会堂の内観(2014年10月撮影)
[室内音響設計]
室伏氏による新会堂はコンクリート打ち放し仕上げで、天井高約8mの2層吹き抜け、両サイドと後部に2階席を備えた320席の空間でした。音響的にも以前と全く異なる響きの長い空間となるために最初は心配したのですが、室が不正形で音響的な問題のない形状だったことと、教会の方々が長い響きを好意的に考えていることから、電気音響による拡声が破たんしない範囲で響くように設計しました。具体的には、1階席の天井(2階席の底面にあたる部分)に有孔板を、2階席の側壁の一部(木ルーバーの一部)にグラスウール吸音材を配置しました。
2階席から臨むチャペルの内観
光の十字架が印象深い
1階から2階側方を臨む
残響時間(500Hz)は空席時2.3秒、1階席に170名程度着席時1.6秒ですが、数値よりも響きが長く感じられます。会衆の方々からは讃美歌が豊かに響いて嬉しいとの声を多く頂きました。
[電気音響設計]
響きの長い空間のスピーカシステムというと、最近ではラインアレイ型スピーカが真っ先に思い浮かぶことと思います。ですが、旧会堂の暖かく囁きかけるような拡声音を新会堂にも引き継ぎたいと考えた時、音が遠くから飛び出してくるようなラインアレイ型スピーカの聞こえ方が私にはしっくりきませんでした。
2階サイド席とスピーカ
(聖歌隊席なので集音マイクとモニタースピーカも備えています)
そこで、良質な小型のポイントソーススピーカ(Martin Audio社 DD6)を堂内に分散配置することにしました。分散配置によってスピーカと聴衆の距離を短くし、必要な音量を抑え、音質バランスの良い音のまま聴衆に届ける計画です。幸いにも室伏氏がスピーカの露出設置を認めて下さったので、音響的に良い状態が実現できました。もちろん露出設置するからには取付金具が極力見えないようにするなど工夫しています。
講壇側を横から臨む
(小さい黒四角が拡声用スピーカ。
大きな黒四角は電子オルガン用スピーカ。)
音響調整を終え、不思議なくらいに素直なスピーカのお陰か、自分でもちょっと驚くほど良い感じに仕上がりました。マイクロホン、スピーカ、配置、空間の形と材質など様々な条件が上手くバランスしたようです。
オルガンと讃美歌が豊かに響くなかで、説教の言葉は近くの相手に囁きかけるように優しく聞こえるように。献堂式での拡声を聞いて、その意図が実現できたと嬉しく思いました。また、その音は室伏氏のとても趣のある建築空間とも上手く融合したように思います。
[バイブル・センター]
南口側のバイブル・センターは2階に集会室があります。こちらもコンクリート打ち放しで、室の前後がガラス張りです。響きが長くなることが予想されたので、天井の梁間に吸音材を配置し、壁の柱部分を音を散乱させる形状とし、後方窓に吸音性の縦ルーバーブラインドを備えて響きを調整しました。
バイブル・センターの外観
(教会提供)
音響設備は教会のご要望で移動式としました。コミュニティー・チャペルと同じスピーカとミキサーで統一を図っています。
集会室の内観
コミュニティー・チャペルとバイブル・センターが多くの方々に長く親しまれていくことを期待しています。
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仙台ギグスの外観
仙台ギグスの音響設計コンセプト「リアクション」
ポピュラー音楽を主体とするライブホールやライブハウスの多くは、響きを含む音響効果はサウンドシステムで創るのでホールの響きは無い方が良いという考え方が一般的で、壁や天井が全面的に吸音処理されています。サウンドシステムの音質を劣化させる余計な反射音や残響音を抑制するためにも吸音が必要なことは確かです。
しかしライブではサウンドシステムを通らない音も重要ではないでしょうか。それは、観客の歓声や拍手。ライブならではの音です。歓声や拍手が湧き上がるように大きく響けばアーティストも観客も盛り上がります。自分たちのパフォーマンスに対する観客の反応が大きく感じられれば、それはアーティストのエネルギーとなってさらに素晴らしいパフォーマンスを引き出し、より大きな感動へとつながる事でしょう。これは多くのライブ・ファンに共感頂けることと思います。
レセプションパーティの様子
仙台ギグスでは、そんなライブのもう一つの重要な音を吸音してしまうのではなく、積極的にステージ上のアーティストに届けようと考えました。もちろんサウンドシステムの音を阻害する反射音は低減しながらです。
その一見矛盾することの解決を試みたのが側壁の屏風折れのパネルです。パネルの舞台側の面は吸音仕上げにして舞台両脇のスピーカからの音は吸音し、客席側の面を反射仕上げにして観客の歓声や拍手を舞台へ向けて反射させるようにしました。
1階席からの内観
加えて、天井面も客席からステージへ音を届かせるのに有効な範囲は反射性とし、それ以外の部分で吸音しています。
結果として仙台ギグスは他のライブホールよりも響きがやや長めになっています。といっても客入り後には気付かない程度です。
この適度な響きは生音と同様にサウンドシステムの音も豊かにし、音量感をアップする効果も得られます。直接音を邪魔しないようにコントロールすることで、響きをサウンドシステムにもプラスになるようにしました。
また、アーティストにとっても、自分の歌声や演奏音が会場の奥まで届いているという手ごたえが感じられやすく、安心できるのではないかと思います。
2階席から舞台を臨む
その他にも次のような音響的配慮をしています。
・反射面で響きを残す一方で、スピーカの音を受け止める後壁面は30cm厚の吸音面を設けて低音までしっかりと吸音を図りました。
・側壁の屏風折れによって側壁間の平行を崩し、天井を屋根勾配に合せて傾斜させることで床〜天井間の平行を崩し、定在波の低減を図りました。
・パフォーマンスに対して音量制限を不要とするために徹底した防音対策を行いました。
このように仙台ギグスでは、サウンドシステムへの配慮はもちろん、観客と会場の「リアクション」にも着目しアーティストとオーディエンスが共に盛り上がれる音響空間を目指しました。
1階後方のPAブースと後壁
仙台ギグスのスピーカシステムには d&b audiotechnik社の大型ラインアレイに超大型サブウーハが採用されています。この超大型サブウーハが常設されるのは仙台ギグスが最初のホールとのことで、このシステムも必聴ものです。
夏以降、様々なアーティストのライブがブッキングされ始めてきました。これから多くのパフォーマンスが繰り広げられ、アーティストやオーディエンスが仙台ギグスをどんな風に感じるのか楽しみです。
最後に、全国各地の大型ライブホールが東京などの大手企業資本なのに対して、仙台ギグスは”地元資本”であることをお知らせしたく思います。そんなライブホール「仙台ギグス」が多くのアーティストとオーディエンスそして地元の方々に愛される施設になることを心より願っています。
仙台ギグス
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一般施設と異なり、文化施設では音響や遮音をはじめ様々な機能の維持と耐震化の両立が求められます。その辺について法的な解説や実例などの紹介が期待され、私も参加する予定です。
札幌、仙台、東京(2回のうち1回)が過ぎてしまいましたが残り14回はまだ参加可能です。興味のある方は日本耐震天井施工協同組合のHPから詳細を確認の上、お申込みください。
開催概要
https://jacca.eventcreate.net/event/1583
日本耐震天井施工協同組合HP(申し込み)
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座・高円寺
(建築設計:伊東豊雄建築設計事務所、音響設計:永田音響設計)
講演は次の3件でした。
・ネットワークオーディオ伝送(Audio over Internet Protocol):栗山譲二氏(J.TESORI)
栗山氏からはAoIPの概要説明がありました。そのなかで音声伝送に重要な同期方法についてAoIPのほとんどがPTP(Precision Time Protocol)という方法を採用していること、そしてそのPTPパケットを優先的に送信するためにスイッチにはQoS機能(Quality of Service)が必要とのことでした。QoS機能がないスイッチでは一見問題なく動作しているように見える場合があるが、いつネットワーク障害が起きてもおかしくない状況との説明は重要な情報でした。
・ネットワークオーディオで使うケーブルとスイッチについて:阿部春雄氏(デジコム)
阿部氏からはネットワークを構成するハードウェア(ケーブルとスイッチ)について解説がありました。接続に使用するEthernetケーブル(ツイストペア線)では、ケーブルを無理に曲げるとその個所でインピーダンスが変化し反射減衰が発生することや、Danteではスイッチの配置によってレイテンシーが何倍も変ることの説明がありました。また、Dante用スイッチに必要な機能の説明のなかで、省電力機能(Energy Efficient Ethernet = EEE機能)が無効にできることが必要との話もありました。
・音声伝送ネットワークの構築、運用、知っておきたいことなど。:菊地智彦氏(ヤマハサウンドシステム)
菊地氏からはネットワーク構築の際に経験するリスクと現状考えられる対策方法について、実際の現場での経験をもとにした解説がありました。接続が自由になる<>なんでも接続できてしまう、配線コストが削減できる<>大量の情報が1回線に集中する、様々な通信が単一のインフラに乗る<>通信の競合が発生する、など現場視点ならではのメリットとデメリットが紹介されました。なかでも、PCをネットワークに繋げばどこからでも操作可能<>外部オペレータが持ち込んだPCでも固定設備が操作できてしまう、というセキュリティ上の問題についてはハッとさせられました。
セミナー会場の様子
3人の講師が共通して強調していたのは、「オーディオネットワークの安定性は”スイッチ”が握っている」でした。安価なスイッチは上記の必要機能が無かったり、それを設定・制御できないから安価とのことです。固定設備では通常10年〜20年というスパンで安定して動作するように考えなければなりません。これでオーディオネットワーク用のスイッチにどうして安価なものを使用してはダメなのかきちんと自信を持って説明ができます。
また、1日目の最後に各部会を迎えてシンポジウムがありました。そのなかで、栗山氏がとても重要なことを話されていました。それは、
・AoIPはコンピュータ技術を中心につくられた規格をベースにしているので、ややこしくても受け入れるしかない。
・自分でできなければオーディオネットワーク専門の部門やスタッフを作ったらよい。(音響家がオーディオネットワークを学んで身に着ける、または、ネットワーク技術者に音響を学ばせる)
後者はサウンドシステムのオペレータに対するシステムチューナーと考えれば分かり易いですね。実際にネットワーク専門部門を構えている会社もありますし、今後益々ニーズは高まりそうです。
シンポジウムの様子
オーディオネットワークはもはや避けては通れないものでしょう。その向き合い方を改めて学ぶ良い機会でした。
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会場は2016年1月に開館した飯山市文化交流館「なちゅら」(建築設計:隈研吾建築都市設計事務所、音響設計:永田音響設計)で、私が舞台音響設備についてお手伝いさせた頂いた施設です。当日は大雪となり、施設はすっかり雪に包まれていました。
雪中の飯山市文化交流館
講演のタイトルは協会の要望により「劇場の音〜建築音響と電気音響〜」となりました。様々なホール・劇場が建設されるなかで、施設の性格付け(多目的ホール、音楽主目的、演劇主目的、など)がどのような経緯で決まり、残響時間に代表される建築音響の条件がどのように計画され建築設計に反映されるのか、さらにその残響(建築音響)と電気音響はどのように兼ね合いが取られるのか、ということを知りたいということでした。
公共ホールの多くは施設が完成した後に施設を監理運営する舞台技術会社が募集され決まります。そのため施設の設計コンセプトや計画経緯などが舞台技術者サイドに伝えられる機会がないという現状があります。今回の講演内容の要望もそこに起因していると分かります。これまで多くの公共ホール建設に係った経験をもとに、建築設計と音響設計の流れをできるだけ分かり易くお話ししました。
講演会場(多目的ルーム1)の様子
講演の後は施設の大ホールの見学がありました。(残念ながら小ホールは利用中で見学できませんでした。)大ホールは可動観覧席を備えた500席で、舞台幕から音響反射板に転換できる多目的ホールです。可動観覧席を収納して客席前迫を上げることで平土間形式にもなります。
施設の方から、高齢者が多い合唱団の練習利用の際には、舞台から客席への移動時に階段を昇降するのが大変ということで、客席前迫を上げて平土間位置とし、舞台と客席を段差ない状態にして利用しているとの紹介がありました。客席前迫があるとそのような使い方もできるのだと気付かせてくれました。
大ホール見学の様子
(客席前迫が上がっている状態)
今回、私自身も建設に関わった施設の運営の方とはじめてお会いしお話しできて、とても有意義な機会でした。今後も現場からのフィードバックを沢山得たいと思います。
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ナゴヤドーム隣のテント会場
間近で見る人間業とは思えない生演技に感動です。そして音楽はバンドによる生演奏。これはミュージカルなども含めて欧米では当たり前ですね。日本も見習いたいものです。生演奏だと主舞台のパフォーマーの演技と呼応して高揚していく感動があります。これは残念ながら音楽再生では得られません。
公演の途中で客席の照明が不自然に点滅したので変だなと思っていたら、パフォーマーがスッと退場して一時中断。やはり点滅照明はパフォーマーへの合図だったようです。そして「演技を中断しました。まもなく再開しますのでしばらくお待ちください。」とアナウンス。これも開演前の諸注意のアナウンスと同じ声、同じ語り口のものなので、事前に準備されているものでした。
中断から5分位で、先ほど始めかけた演技は中止しその次の演技から再開されました。さすがなのは中断の際のパフォーマーの行動がきちんと決められていることです。サーカスですから不測の事態はつきものでしょう。当たり前の事態に抜かりなく備える、って当たり前に大事なことですね。偶然このような出来事を見て、そこまでがプロの仕事だと改めて感じます。
さて音響的なところでは、メインスピーカはd&b audiotechnikのTシリーズのラインアレイで、分散スピーカに同社のEシリーズが沢山使われていました。
最後に、客席は撮影出来ないのでロビーのテントの天井の写真を載せます。だって排煙口がちゃんと付いてるんですよ!備えあれば憂いなし。
ホワイエのテント屋根
排煙口
アーケードの屋根下に丸い物体
赤道の南半球側にホーンが並ぶ
球体の赤道の南半球側にホーンが並んでいて360°全方向に音を放射するようになっています。ホーンが南半球側にあるので音を斜め下向き放射していると考えられます。吊下げて使うためですね。大分前にカタログで見たことはありましたが、実際に使われているのを見るのは初めてでした。結構年季が入っていましたがBGMを綺麗に鳴らしていました。
そういえば以前、別の公園でこんな形の全方向スピーカを見かけたことがありました。
木陰にあった変った形のスピーカ
こちらは下向きにしたホーンスピーカにもう一つホーン状の部品を差し込んで音の進行方向を90°曲げ、水平360°全方向に拡がるようにしたものと想像されます。音は斜め下ではなく水平方向に拡がるように設計されているようです。ということは非常用でしょうか。残念ながら(?)これは鳴っていませんでした。
こんなところに目が行くのはまさに職業病でしょう。でも見つけると意外に楽しいものです。皆さんも良かったらどうぞ。笑
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天井のセンタークラスタースピーカ
当時の最新スピーカ
「どれ位の人がこれを見るかなあ。高域ホーンの大きさ、低域ユニットもホーンロード、その数と配置を見ると、どれだけ真面目に計画していたかが分かります。今はどうだろうか?」と何気なくFacebookに投稿したところ、思いもよらずいろいろな方からコメントが入りました。
「高音域ホーンでエリアをカバーし、低音域を付け足すシステム。低音域と言ってもホーンロードがかかるのはせいぜい200Hz以上、ホーンロードがかかって能率が上がった分、その下の帯域は聞きにくくなる。おまけに低音域SPが引っ込んでいる分ホーン帯域とのつながりが悪い。このシステムが有効なのは英語圏の言語と思います。日本語はもっと低音域から造っていかないと。かつて苦労させられました。」(T.U.氏)
「私も同じ思いで見てました。何と言っても自分の原点ですから。」(A.M.氏)
「私も納入させて頂いた頃を、天井見て想い出しておりました。」(M.T.氏)
「苦労したんですよ、当事者なもんで。これ施工した時期はまだ手描きの時代です。ホーンは全て計算上同心点から振り出しています。構造物は野田市の鉄鋼屋さんで作ってもらい、細かいパーツは横浜和田町の金物屋さんで作ってもらいました。構造計算もしっかり行ってますよ。当然僕なんかが行ったら信用されませんから、一級建築士さんにお願いしました。ちゃんと計算書を提出しました。」(K.M.氏)
「単なる三面図もノイローゼになりそうになりながら紙と格闘してた時代でしたな(遠い目)」(H.N.氏)
「私も見上げてました。これを今のデジタルチャンデバでSmaartで判った人がチューニングすると最高です(≧∇≦)」(H.I.氏)
当時の最新スピーカには多くの方が関わり、多くの思いが詰まっていました。
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立川シネマシティの「極上音響」は、スクリーンの音響設備をベテランの音響家(サウンドシステム・チューナー)によって上映作品ひとつひとつに最適な音響調整を施した上映です。「極上爆音」はさらに重低音を中心に通常よりも音量を大きめに再生した迫力重視の上映。作品の音響効果を最大限に引き出し、作品への没入感と感情移入をより高めようとする立川独自の取り組みです。どんなに素晴らしい食材でも、それを素晴らしい料理にするにはシェフが重要なのです。
Meyer Sound社のスピーカシステムが導入されたスクリーン
作品は「君の名は。」を。あえてアニメーションを選んでみました。
印象は、映画に作り込まれた音の全てが再現されているように感じました。声に込められた感情に加えて、音による空間の広がりと奥行きの表現、そしてそれとリンクした映像のフォーカスとボケ具合、それらが不思議なリアリティを作り出していきます。また、このタイミングでこの曲がこの音量でカットインするのか、という演出にくすぐられます。映画に込められた楽しみを余すことなく感じられ、監督や制作者はこういう絵と音で観客を楽しませ感動させようとしていたんだと気づきます。
最近、映像と音のコラボレーションを売り文句にしたエンターテイメントがもてはやされていますが、もっと前から映画はそれをやっていたのです。が、それを十分に再現出来る映画館が無かったのでは?とつくづく思います。日本のアニメーションは特に素晴らしく作り込まれています。今回それを再認識しました。かねてから映画館の音に疑問だったので、立川のような映画館がもっと沢山できないと折角の作品の感動が伝わりきらずもったいない!と強く思います。
ちなみに別の機会には極上爆音上映でこの映画も楽しみました。
※極上音響のスケジュールについては是非映画館のHPをチェック下さい。
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プログラム
客席後方2階のオルガンからは、感情を強く内に抱えつつも離れた舞台で演奏するヴァイオリンを支えるように自制のきいた音が漂います。そしてオルガンの音の上を華やかに踊るように舞台からヴァイオリンの音色が響きます。
2つの楽器の距離と位置が立体感とコントラストを生み、今そこで生で演奏されているという臨場感と緊張感が心を刺激します。
客席後方2階のパイプオルガン
ライル兄弟オルガン製作所(オランダ)
2002年完成、21ストップ
今ここでしか体験できない音楽を堪能しました。
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会場の様子
来賓の方々の挨拶で、「電気音響の導入で、それまで出来なかったあんな表現やこんな演出ができるようになった」と当時のワクワクな思い出を語られるのを聞いて、今それが当たり前の時代だからこそ、元の生音や肉声という素材そのものとそこに込められている感情や表現を改めて見つめて学ぶことが大切なのだと感じます。
芝居の音響効果に始まったSCAだからこそ、出したい音や表現のイメージを持っているからこそ、成功されてきたように思います。
創業者の八幡氏と歴代代表の方々
また、「良い機材を山ほど積んでも意味はなく、人材を育てることが大事だ」という祝辞にも強く同感です。パーティーに先だって開催されたBob McCarthy氏のセミナーにも共通点を感じます。
スタッフロール
勝手ながら有意義な時間をありがとうございました。50周年おめでとうございます。
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セミナー会場の様子
冒頭、Bob氏はSIMにまつわるエピソードを語りました。
当初、システムの特性はピンクノイズなどの測定用音源を再生しなければ測定できなかったので、観客が入って本番が始まると、チューニング時から音が変化したのが耳で分かっても、それを測定により物理的に把握することができませんでした。それを把握する方法としてJohn Meyerg氏によりデュアル・チャンネルFFTアナライザーによる「音源に依存しない測定=Source Independent Measurement =SIM」システムが開発されました。
SIMの効果を実感したMeyer氏やBob氏らは、この手法がすぐに業界のスタンダードになるだろうと考えていたそうです。それが今日のような普及までに20年もかかるとは想像さえしなかったそうです。当時、音楽的な経験を重視するミキサーやアーティストが、機械的なアナライザを受け入れなかったとのことでした。
Bob氏は、客入り後の音の変化が会場全体に同様に起こっているのか局所的なのかを知りたいと考えていたそうです。そして初めて会場内に8本のマイクを設置した状態で本番を経験したのが、なんと1987年大阪城ホールでのユーミンのコンサートだそうです。これによりBob氏が何年も探っていた客入り後に生じる音の変化が局所的であることが確認され、その後のシステムデザインや最適化のアプローチにとても大きな役割を果たしたとのことでした。日本のユーミンのコンサートがそんな役割を果たしていたとはとても興味深いエピソードでした。
Bob氏は、会場内に複数マイクを設置できたのは日本の観客のお行儀がいいお陰で大変感謝している、と付け加えました。笑
貴重なセミナーテキスト
さてセミナーですが、前半の話題はスピーカの「カバレージ」についてでした。1台のスピーカのカバレージと客席の関係、複数のスピーカによるカバレージの合成・・・。ポイントソースはもとより、ラインアレイの理論にも関連する音に共通の基本事項です。
これらはシミュレーションソフトがなくても大まかに音場を把握できる基礎知識です。というよりも、まず基礎知識をベースに平面・断面的な音場を考えることが重要で、その次にそれをシミュレーションで3次元的かつ数値的に詳細に補完していくというのが本来の手順でしょう。音響シミュレーションが普及している現代のセミナーで、Bob氏が最初にカバレージの解説をされたことにとても共感しました。とかく何も考えずにいきなりシミュレーションで音圧分布だけ計算しはじめる人が増えつつあります。その前にソフトを使いこなすための音響知識に目を向けて欲しいものです。
セミナー後半はサブウーハの指向性制御の理論と実験で、こちらも興味ある内容でした。
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テーマは「舞台技術の現状と今後の方向性」で、概要は以下の通りです。
■東京会場 | ■関西会場 |
日時:1/30(月)〜31(火) 10:00開場 会場:座・高円寺2(杉並区)
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日時:2/17(金) 10:00開場 会場:兵庫県立尼崎青少年創造劇場 (ピッコロシアター) |
1/30 10:00〜 開場 10:30〜12:30 音響部会 13:30〜15:30 映像部会 15:45〜17:45 シンポジウム 18:00〜 懇親会 1/31 10:00〜 開場 10:30〜12:30 照明部会 14:00〜15:30 機構部会 15:45〜17:45 建築部会 |
2/17 10:00〜 開場 10:30〜12:30 照明部会 14:00〜15:30 機構部会 15:45〜17:45 建築部会
※関西会場は上記3部会のみ
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音響は、東京会場の初日の最初10:30からで、オーディオ・ネットワークについて下記の3人の講師を迎えます。興味のある方は是非ご参加ください。
タイトル:「劇場等演出空間におけるオーディオ・ネットワークの現状」
講師: 栗山譲二氏(J.TESORI)
阿部春雄氏(デジコム)
菊地智彦氏(ヤマハサウンドシステム)
参加には事前申込み・入金が必要ですので、JATETのホームページで詳細をご確認の上、お申込みください。
申し込み締め切りは、東京会場:1/25、関西会場:2/13です。
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今年もスピーカデモが行われるようですが、今年は「ポイントソース」、「小型ラインアレイ」、「中・大型ラインアレイ」という3カテゴリーに増え、11社から12製品がエントリーするようです。
全部聞くには1.5日間かかるので、今年も大変なイベントになりそうです。
詳細は下記をご確認ください。
http://www.inter-bee.com/ja/magazine/special/detail.php?magazine_id=3217
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サロンの内観
(ピアノから客席をみる)
このサロンは、自宅のリビングでサロン・コンサートをしたいというオーナーのご要望によるもので、設計は関井徹建築設計事務所です。内装の主要な素材は決まっていましたので、天井の仕上げで低音と高音の吸音のバランスをとり、コテで模様をつけた漆喰塗りや天井の棹縁で反射を弱めることと音の散乱を図りました。
終演後、演奏の皆さんに音響が良いと言っていただきホッとしました。
別室の練習室も担当させて頂きました。こちらはピアノが置かれる練習室で、室を不正形にして定在波を抑えるとともに、3種類の吸音構造を組合せて低音と高音の吸音のバランスをとりました。練習のために響きは短いけれど反射は残すように意図したのですが、本番前に音出しした演奏者の皆さんからはストレスなく演奏できたとのコメントを頂きました。
練習室の内装
(プライベートに関わらない壁上部〜天井部分のみ掲載します)
音響は主観的な部分が多分にあり、こちらの音響的な意図が必ずしも演奏者の意向にマッチするとは限らないので、演奏の方とお会いする時はいつもドキドキです。今日は安堵して帰路につくことができました。
Salon de l'Olivier
https://www.facebook.com/salon.de.l.olivier
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■カトリック東京カテドラル関口教会・聖マリア大聖堂
1件目は、その特徴的な建築形状と長い残響で有名な、カトリック東京カテドラル関口教会の聖マリア大聖堂です。代々木体育館や東京都庁を手掛けられた故丹下健三氏の設計で、1964年(昭和39年)の完成です。
特徴的な外観の聖マリア大聖堂
大聖堂は、その特徴でもあるコンクリートの打ち放し仕上げによって残響時間が約7秒と非常に長いために、建設当初より言葉が聞き取りにくいとの指摘があったそうですが、まだ当時はラテン語でミサが行われていたために、それほど大きな問題にはならなかったそうです。
それがその後に、全世界的なカトリック教会の会議で、各国の言葉でミサを行うという方針に改められたことにより、言葉が聞き取れるかどうかが重視されるようになり、聖マリア大聖堂でもその対策に長年頭を悩ませてきたそうです。
「各国の言葉で」という方針転換により、儀式の音としての言葉でなく、意味のある情報としての言葉になったとたんに、聞き取りやすさの重要性が変わる・・・、拡声の本質を端的に示す好例と感じました。
今回の改修では、対象とする室の条件に合せて音の放射パターンを制御するビーム・シェイピング機能を有した最新のスピーカを採用して、拡声音を会衆席に集中し、壁や天井への余分な音の放射を低減させ残響の発生を極力抑制することで、言葉の明瞭さを向上させるという手法が用いられていました。
(改修の詳細が、プロサウンド誌2016.6月号に写真と共に掲載されていますので、興味のある方は是非ご参照ください。)
見学会では、生声と拡声音のほか、パイプオルガンも聞かせて頂き、とても有意義でした。
■コニカミノルタ・プラネタリウム「満天」
2件目は、昨年12月にリニューアル・オープンした、池袋サンシャインシティのプラネタリウム「満天」を見学しました。
最新のプラネタリウム装置はこんな形
私が子供のころのプラネタリウムの装置は2つの球体がつながったダンベルみたいな形をしていましたが、最新の装置は球体ひとつになっていて、さらに、光出力が高くなって旧来よりも多くの星を再現できるようになったことは、数年前に子供を連れて見に行った際に知りました。
加えて、最近では集客を拡大するために、星を学ぶ内容だけではなくて、プラネタリウムでしか見られない有名アーティストとコラボレーションした音と映像のエンターテインメント作品の制作・上映が行われていました。
これはプラネタリウムによる星の投影とビデオプロジェクタによる映像をミックスすることで制作されています。また、音もサラウンド化され、それに対応した音響システムが導入されていました。
プラネタリウムという特殊な空間を活かした質の高いコンテンツ制作が進めば、近い将来、ライブハウスや映画などとならんで、プラネタリウムというエンターテインメントのジャンルが確立されるかもしれません。
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その重要性が認められ、酸素マスクと同格に昇格です。素晴らしい!
機内のスピーカ
(隣の長円形は酸素マスク格納部)
(笑)
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年季が入ったスピーカから流れるピアノCDの音の横で、お湯を沸かす音、ミルで珈琲豆を挽く音、ピラフを炒める音(個人的にここに感慨を覚えます。笑)などがするけれど嫌ではない。
音を出す店員が気を遣っているから、音が無神経じゃない。むしろいい味に感じる。
人間の不思議。
音風景のひととき
規格書の表紙
昨年末(2015.12.26)の本ブログでも紹介したとおり、この測定方法は、1985年に旧日本劇場技術協会から発行され参照されてきた「電気音響設備動作特性の測定方法 JITT A2001」を、現在の状況や技術、関連規格に応じて改訂したものです。
次の5つの測定項目について規定されています。
・伝送周波数特性
・音圧レベル分布
・安全拡声利得
・最大再生音圧レベル
・残留雑音レベル
旧規格の考え方を踏襲しつつも、現在の運用状況や音響技術や関連JIS規格等との適合のために、一部の測定項目では測定条件等を改めている部分もあります。音響設備設計や施工に関わる皆さんには関連の高い内容ですので、早急に入手されて、新規格の理解と普及にご協力をお願いします。
購入方法など詳細はJATETのホームページをご覧ください。
http://www.jatet.or.jp/publish/
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旧京都会館は、東京上野の東京文化会館でも知られる建築家、故前川國男氏の代表作のひとつです。老朽化と機能向上のために改修され、2016年1月にリニューアル・オープンしました。改修の基本設計・監修は香山壽夫氏(香山壽夫建築研究所)で、建築音響設計は永田音響設計が担当されています。
ロームシアター京都の外観
(南西から見る)
メインホール(旧第1ホールを改築)は、4層のバルコニーをもつ2,005席で、音響反射板とオーケストラピットを有し、クラシックコンサートやオペラからポピュラーコンサートまで対応する多機能ホールとのことです。
メインホール
サウスホール(旧第2ホールを改修)は、1層のバルコニーをもつ716席です。花道や張出舞台の仮設が可能で、演劇などを指向しているようですが、音響反射板も有しており、多目的な利用が可能な中規模ホールとのことです。
サウスホール
どちらのホールも舞台に立つと客席がとても近くに感じられるホールでした。出演者は気持ちが高揚するでしょう!
見学していて感じたのは、スピーカを隠さず機能を見せるデザインがされていることでした。
無理に隠すよりも素直に感じるのは私が音響家だからでしょうか?(笑)
音響設計の立場からは音に与える余計な影響がないので大歓迎です。
劇場を良く知っている人の設計はさすがだと感じます。
サウスホールのサイドスピーカ
(3層に分散して露出設置されています)
メインホールのサイドバルコニー天井のスピーカ
(掘り込みに半埋め込み設置)
(拡大)
見学後には「モダニズム建築の保存改修について考える」というシンポジウムが開催されました。
シンポジウムの様子
そのなかでロームシアター京都の設計を担当された香山先生は、「保存改修は建物の手入れであり当たり前のこと。これが何故モダニズム建築では問題になるのか。」をテーマにお話しされました。その着眼点が流石で納得しました。
見学にシンポジウム、とても有意義な一日でした。
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ところが、列車の通過音や発車ベル音や案内放送でホームがとてもうるさくて、まともに電話が出来ません。案内放送は隣のホームのアナウンスまでがガンガン聞こえてきます。
騒音を避けようとホームの端まで移動してみたものの、残念ながらあまり効果ありませんでした。そういえば、駅ってホームに限らず、落ち着いて電話できるスペースがないですね。
駅(ホームの数)や時間帯が違えば変わるのでしょうが、でも、総じて騒々しいですよね。
以前ある駅で、当時小学校6年生の息子が「上りと下りのアナウンスが混ざって何言ってるのか全然わからないね」と言っていました。ごもっとも。案内、安全確保のためのアナウンスがこの状態で良いのでしょうか。
駅は元々、列車の走行音や雑踏など騒音が多い環境です。アナウンスをはじめとする注意喚起は、これらの騒音に負けないように大きな音で流すことが必要なのは理解できます。S/N比(Signal/Noise)を確保することは拡声の基本です。
しかし、拡声音を大きくする事だけを考えていては、騒音が増加したら、さらに大きな拡声音を発生させることになり、駅はやかましくなるばかり、悪循環です。
S/N比の確保には、シグナルを大きくするだけでなく、ノイズを低減することも重要です。
駅では、むしろ騒音を抑制することの方が効果的もしくは必須だと思われます。
しかし、利用者が多い主要駅を見ても、吸音処理はほとんど施されていないようです。
以前、学会の公共空間の音環境をテーマにしたセッションで、「駅の音環境改善のために吸音を提案するが、その必要性は理解されても、それが会社の利益に直結しないので採用されない」という話があったのを思いだします。
吸音により騒音レベルが下がれば、発車ベル音もアナウンスも隣のホームまで届くほどの大きさにする必要がなくなり、必要なアナウンスが必要なホームだけに明瞭に届けられ、聞き取りやすく、駅全体の音環境が快適になるでしょう。
そうしたら不幸な事故も減らせるのではないでしょうか。
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娘の学年は体育館のステージでパフォーマンスをすることになっていました。
歌とダンスとショートコントなどを中心にした内容が多く、ミュージック・ステーション(音楽番組)をCMも含めて再現するなど趣向を凝らした組もありました。
ステージを見ていて、生徒たちのセリフやMC、そして伴奏の音楽がよく聞こえ、音質も良いことに気付きました。
ステージに近づいてみると、大型スピーカがスタンドで仮設されていました。しかもプロ用のEAW社製です。学校の先生や出入りの電気設備業者にはできないチョイスです。
おそらく、ステージ公演の音響操作をPA会社など音響のプロに委託していて、仮設スピーカやワイヤレスマイクなどはその会社の機材でしょう。もしくは、学校所有の機材だとすると、その選定や使用方法指導にはPA会社など音の専門家がアドバイスされていることでしょう。ナイス!
生徒たちのパフォーマンスがよい状態で観客に届けれられると → 観客が盛り上がる → それが演者にも伝わる → 演者も楽しめる、充実感・満足感が得られる → 次もやりたい・もっと盛り上げたいという向上心につながる、 という良い循環はだれにでも容易に想像できることでしょう。
これこそが教育の場でこのようなパフォーマンスを行う意味だと思います。
では、これが逆だったらどうでしょうか。
生徒たちのMCや台詞の内容が聞こえない → 観客がリアクションできない・パフォーマンスに集中しない → オチで笑わない、キメで盛り上がらない → 演者が手ごたえを感じられない → 演者は楽しめないどころか嫌になる → 頑張って練習したことに疑問をもつ・無駄に感じる → 興味を持てない・バカバカしく.... となることも、容易に想像できます。
教育としてパフォーマンスを生徒たちに実践させる意味がないどころか、逆効果でしょう。
でも、これに近い状況は身近な小学校〜高校で頻繁にあることです。台詞の途中で途切れるワイヤレスマイク、組体操やダンスの途中で止まる伴奏音楽、保護者会の先生の話の内容が聞き取れない体育館の音響設備など、経験ありませんか?
ですから、あの高校の先生方あるいは関係者方は、生徒に文化祭でパフォーマンスさせる目的をきちんと理解されていると感じ、嬉しく思いました。生徒たちも幸せです。
(ただし、本来それが当たり前ですが)
***
その後のある日、学校から保護者宛てのプリントが届きました。
内容は、同校の「体育館ステージでの行事や学習発表、イベント開催をサポートする機材の充実」のための「寄附」のお願いでした。(具体的には大型スクリーンとプロジェクタ、各種照明器具、音響設備等の演出関連装置の購入)
しかも、その寄附が「ふるさと納税」に該当するというのです。
これは兵庫県の「ふるさとひょうご寄附金」(ふるさと納税)の中の「県立学校環境充実応援プロジェクト」という寄附メニューで、県立学校が独自に使用目的を設定して寄付を募集する仕組みを活用したものでした。寄附金の使用目的は、部活動の支援費用、図書館の充実、エアコン費用など学校によって様々です。なるほど、こう言う方法もあるんだと感心しました。
それにしても娘の学校の寄附目的が演出機材だというのは何かの縁でしょうか。
プリントには次の一文がありました。
「〜これらの機器の拡充は、文化祭での演劇、シンポジウムや発表会などで、生徒たちのパフォーマンス力を大いに高めてくれるものと思います。ぜひ、このプロジェクトにご賛同いただきお力をお貸しください〜」
ふるさと納税を活用した方法も勿論ですが、何よりこの気持ちが嬉しいですね。もちろん協力します。
そういえば以前、小学校のPTAで学校への寄付品を決める際に、その年の運動会でトラブル続出だったワイヤレスマイクの更新を提案したのですが、「新しい紅白幕が欲しい」という校長先生の意見に一蹴されたことを思い出しました。(苦)
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