昨秋の雨上がりの午後、響きの豊かなチャペルでパイプオルガンとヴァイオリンという珍しい組合せの演奏を聴きました。会場は恵泉女学園大学のチャペル(東京都多摩市)で、演奏はオルガン:大塚直哉氏、ヴァイオリン:桐山建志氏です。

 

 プログラム
 

 客席後方2階のオルガンからは、感情を強く内に抱えつつも離れた舞台で演奏するヴァイオリンを支えるように自制のきいた音が漂います。そしてオルガンの音の上を華やかに踊るように舞台からヴァイオリンの音色が響きます。
 2つの楽器の距離と位置が立体感とコントラストを生み、今そこで生で演奏されているという臨場感と緊張感が心を刺激します。

 

 客席後方2階のパイプオルガン

 ライル兄弟オルガン製作所(オランダ)

 2002年完成、21ストップ
 

今ここでしか体験できない音楽を堪能しました。

 

 昨年9月のことになりますが、SCアライアンス社の50周年記念パーティーに出席させて頂きました。

 

 会場の様子
 

 来賓の方々の挨拶で、「電気音響の導入で、それまで出来なかったあんな表現やこんな演出ができるようになった」と当時のワクワクな思い出を語られるのを聞いて、今それが当たり前の時代だからこそ、元の生音や肉声という素材そのものとそこに込められている感情や表現を改めて見つめて学ぶことが大切なのだと感じます。

 

 芝居の音響効果に始まったSCAだからこそ、出したい音や表現のイメージを持っているからこそ、成功されてきたように思います。

 

 創業者の八幡氏と歴代代表の方々 
 

 また、「良い機材を山ほど積んでも意味はなく、人材を育てることが大事だ」という祝辞にも強く同感です。パーティーに先だって開催されたBob McCarthy氏のセミナーにも共通点を感じます。

 

 スタッフロール
 

 勝手ながら有意義な時間をありがとうございました。50周年おめでとうございます。

 

 半年も前のことになりますが、サウンドシステムの音響調整に用いられる音響測定・分析ソフト「Meyer Sound SIM System」によるシステム最適化のパイオニアとして有名なBob McCarthy氏のサウンドシステムセミナーに参加しました。このセミナーはSIMの初期の頃から長きに渡りBob氏と交流のあるSCアライアンス社の50周年記念行事のひとつとして企画されました。

 

 セミナー会場の様子
 

 冒頭、Bob氏はSIMにまつわるエピソードを語りました。

 

 当初、システムの特性はピンクノイズなどの測定用音源を再生しなければ測定できなかったので、観客が入って本番が始まると、チューニング時から音が変化したのが耳で分かっても、それを測定により物理的に把握することができませんでした。それを把握する方法としてJohn Meyerg氏によりデュアル・チャンネルFFTアナライザーによる「音源に依存しない測定=Source Independent Measurement =SIM」システムが開発されました。

 

 SIMの効果を実感したMeyer氏やBob氏らは、この手法がすぐに業界のスタンダードになるだろうと考えていたそうです。それが今日のような普及までに20年もかかるとは想像さえしなかったそうです。当時、音楽的な経験を重視するミキサーやアーティストが、機械的なアナライザを受け入れなかったとのことでした。

 

 Bob氏は、客入り後の音の変化が会場全体に同様に起こっているのか局所的なのかを知りたいと考えていたそうです。そして初めて会場内に8本のマイクを設置した状態で本番を経験したのが、なんと1987年大阪城ホールでのユーミンのコンサートだそうです。これによりBob氏が何年も探っていた客入り後に生じる音の変化が局所的であることが確認され、その後のシステムデザインや最適化のアプローチにとても大きな役割を果たしたとのことでした。日本のユーミンのコンサートがそんな役割を果たしていたとはとても興味深いエピソードでした。

 

 Bob氏は、会場内に複数マイクを設置できたのは日本の観客のお行儀がいいお陰で大変感謝している、と付け加えました。笑

 

 貴重なセミナーテキスト
 

 さてセミナーですが、前半の話題はスピーカの「カバレージ」についてでした。1台のスピーカのカバレージと客席の関係、複数のスピーカによるカバレージの合成・・・。ポイントソースはもとより、ラインアレイの理論にも関連する音に共通の基本事項です。

 

 これらはシミュレーションソフトがなくても大まかに音場を把握できる基礎知識です。というよりも、まず基礎知識をベースに平面・断面的な音場を考えることが重要で、その次にそれをシミュレーションで3次元的かつ数値的に詳細に補完していくというのが本来の手順でしょう。音響シミュレーションが普及している現代のセミナーで、Bob氏が最初にカバレージの解説をされたことにとても共感しました。とかく何も考えずにいきなりシミュレーションで音圧分布だけ計算しはじめる人が増えつつあります。その前にソフトを使いこなすための音響知識に目を向けて欲しいものです。

 

 セミナー後半はサブウーハの指向性制御の理論と実験で、こちらも興味ある内容でした。

 

日本音響家協会 東日本支部主催の技術セミナー「楽器を知ろう」シリーズ、今回は「バイオリン」が取り上げられるそうです。

3/10(金) 13時〜17時 国立音大

興味のある方は協会HPをご確認の上お申し込み下さい。

来年、JATETフォーラム2016/17が東京(1月)と関西(2月)で開催されます。

 

JATETフォーラム2017 
テーマは「舞台技術の現状と今後の方向性」で、概要は以下の通りです。

 

■東京会場 ■関西会場

日時:1/30(月)〜31(火) 10:00開場

会場:座・高円寺2(杉並区)

 

日時:2/17(金) 10:00開場

会場:兵庫県立尼崎青少年創造劇場

  (ピッコロシアター)

1/30

 10:00〜    開場

 10:30〜12:30 音響部会

 13:30〜15:30 映像部会

 15:45〜17:45 シンポジウム

 18:00〜    懇親会

1/31

 10:00〜    開場

 10:30〜12:30 照明部会

 14:00〜15:30 機構部会

 15:45〜17:45 建築部会

2/17

 10:00〜    開場

 10:30〜12:30 照明部会

 14:00〜15:30 機構部会

 15:45〜17:45 建築部会

 

※関西会場は上記3部会のみ

 

 

 

 

 

音響は、東京会場の初日の最初10:30からで、オーディオ・ネットワークについて下記の3人の講師を迎えます。興味のある方は是非ご参加ください。

 

タイトル:「劇場等演出空間におけるオーディオ・ネットワークの現状

  講師: 栗山譲二氏(J.TESORI)

      阿部春雄氏(デジコム)

      菊地智彦氏(ヤマハサウンドシステム)

 

参加には事前申込み・入金が必要ですので、JATETのホームページで詳細をご確認の上、お申込みください。

申し込み締め切りは、東京会場:1/25、関西会場:2/13です。

InterBEE2016が11/16(水)〜18(金)に幕張メッセで開催されます。

 

今年もスピーカデモが行われるようですが、今年は「ポイントソース」、「小型ラインアレイ」、「中・大型ラインアレイ」という3カテゴリーに増え、11社から12製品がエントリーするようです。

 

全部聞くには1.5日間かかるので、今年も大変なイベントになりそうです。

 

詳細は下記をご確認ください。

http://www.inter-bee.com/ja/magazine/special/detail.php?magazine_id=3217

 

先日、音響設計を担当させていただいたSalon de l'Olivier(吹田市豊津町)でのコンサートに伺いました。演奏は、Miha Rogina (sax)、Sae Lee (pf)、白井奈緒美(sax、ゲスト)で、sax二人とピアノという中々聴けない構成でした。ソファーに座って聴くのも初めての経験でした。

 

 サロンの内観

(ピアノから客席をみる)
このサロンは、自宅のリビングでサロン・コンサートをしたいというオーナーのご要望によるもので、設計は関井徹建築設計事務所です。内装の主要な素材は決まっていましたので、天井の仕上げで低音と高音の吸音のバランスをとり、コテで模様をつけた漆喰塗りや天井の棹縁で反射を弱めることと音の散乱を図りました。

終演後、演奏の皆さんに音響が良いと言っていただきホッとしました。

 

別室の練習室も担当させて頂きました。こちらはピアノが置かれる練習室で、室を不正形にして定在波を抑えるとともに、3種類の吸音構造を組合せて低音と高音の吸音のバランスをとりました。練習のために響きは短いけれど反射は残すように意図したのですが、本番前に音出しした演奏者の皆さんからはストレスなく演奏できたとのコメントを頂きました。

 

 練習室の内装

(プライベートに関わらない壁上部〜天井部分のみ掲載します)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音響は主観的な部分が多分にあり、こちらの音響的な意図が必ずしも演奏者の意向にマッチするとは限らないので、演奏の方とお会いする時はいつもドキドキです。今日は安堵して帰路につくことができました。

 

Salon de l'Olivier

https://www.facebook.com/salon.de.l.olivier

 

7月に音響設備の見学会に参加しました。

 

■カトリック東京カテドラル関口教会・聖マリア大聖堂

 

1件目は、その特徴的な建築形状と長い残響で有名な、カトリック東京カテドラル関口教会の聖マリア大聖堂です。代々木体育館や東京都庁を手掛けられた故丹下健三氏の設計で、1964年(昭和39年)の完成です。

 

関口教会 特徴的な外観の聖マリア大聖堂
大聖堂は、その特徴でもあるコンクリートの打ち放し仕上げによって残響時間が約7秒と非常に長いために、建設当初より言葉が聞き取りにくいとの指摘があったそうですが、まだ当時はラテン語でミサが行われていたために、それほど大きな問題にはならなかったそうです。

 

それがその後に、全世界的なカトリック教会の会議で、各国の言葉でミサを行うという方針に改められたことにより、言葉が聞き取れるかどうかが重視されるようになり、聖マリア大聖堂でもその対策に長年頭を悩ませてきたそうです。

 

「各国の言葉で」という方針転換により、儀式の音としての言葉でなく、意味のある情報としての言葉になったとたんに、聞き取りやすさの重要性が変わる・・・、拡声の本質を端的に示す好例と感じました。

 

今回の改修では、対象とする室の条件に合せて音の放射パターンを制御するビーム・シェイピング機能を有した最新のスピーカを採用して、拡声音を会衆席に集中し、壁や天井への余分な音の放射を低減させ残響の発生を極力抑制することで、言葉の明瞭さを向上させるという手法が用いられていました。

(改修の詳細が、プロサウンド誌2016.6月号に写真と共に掲載されていますので、興味のある方は是非ご参照ください。)

 

見学会では、生声と拡声音のほか、パイプオルガンも聞かせて頂き、とても有意義でした。

 

 

■コニカミノルタ・プラネタリウム「満天」

 

2件目は、昨年12月にリニューアル・オープンした、池袋サンシャインシティのプラネタリウム「満天」を見学しました。

 

満天 最新のプラネタリウム装置はこんな形
私が子供のころのプラネタリウムの装置は2つの球体がつながったダンベルみたいな形をしていましたが、最新の装置は球体ひとつになっていて、さらに、光出力が高くなって旧来よりも多くの星を再現できるようになったことは、数年前に子供を連れて見に行った際に知りました。

 

加えて、最近では集客を拡大するために、星を学ぶ内容だけではなくて、プラネタリウムでしか見られない有名アーティストとコラボレーションした音と映像のエンターテインメント作品の制作・上映が行われていました。

これはプラネタリウムによる星の投影とビデオプロジェクタによる映像をミックスすることで制作されています。また、音もサラウンド化され、それに対応した音響システムが導入されていました。

 

プラネタリウムという特殊な空間を活かした質の高いコンテンツ制作が進めば、近い将来、ライブハウスや映画などとならんで、プラネタリウムというエンターテインメントのジャンルが確立されるかもしれません。

 

最近よく利用する航空会社の飛行機は、機内の各列にスピーカがありました。

その重要性が認められ、酸素マスクと同格に昇格です。素晴らしい!

 

機内スピーカ 機内のスピーカ

(隣の長円形は酸素マスク格納部)
(笑)

 

たまたま入った音楽喫茶店。

年季が入ったスピーカから流れるピアノCDの音の横で、お湯を沸かす音、ミルで珈琲豆を挽く音、ピラフを炒める音(個人的にここに感慨を覚えます。笑)などがするけれど嫌ではない。

音を出す店員が気を遣っているから、音が無神経じゃない。むしろいい味に感じる。

人間の不思議。

 

音楽喫茶店 音風景のひととき