機種に依るのかも知れませんが、デジタルワイヤレスマイクは瞬間的なRFのドロップでもデータが途絶えると音声信号がミュートされ、復旧時に音声信号の不連続からプチッと音が鳴ることがあるようです。

RFがドロップしてしまう場所はアナログのワイヤレスマイクを使っていた時にも同じようにあったのだと思われますが、アナログでは微かなノイズなどの現象だったために気にならない程度で済んでいたのではと推察されます。

対策にはアンテナ位置の最適化が必要となります。これまでアンテナは建築デザイン的にとかく左右対称に付けがちで、アナログではそれでも大丈夫でしたが、デジタルではダイバシティ効果がきちんと活かされるように左右非対称とするなど、今までよりシビアに考える必要がありそうです。

そのため、アンテナが固定されている施設でアナログからデジタルにワイヤレスマイクを更新する場合には、今のままのアンテナ位置で問題ないか事前にテストしておくのが安心です。

また、この現象は室形状が矩形で、内装にスチールパネルが多用された中規模以上の状況で発生していました。つまり電波的に好ましくない空間です。建築面にも配慮しておく必要がありそうです。

以上はB帯ワイヤレスマイク装置をアナログからデジタルに更新した会館での経験談です。
もちろん全ての機種と空間で同じ事が起こる訳ではありません。一つのケースとして参考になればと思ってアップしています。


先日、子供達と一緒に区立の屋内温水プールに行きました。
プールって1〜2時間に1回、10分くらいの休憩時間がありますが、たまたま私がいた位置では、その休憩を知らせるアナウンスが響いて何を言っているのか分かりませんでした。スピーカの配置計画がちょっと上手くないようでした。

屋内プール

屋内プールといえば、空間の容積が大きいのと、水面やタイルなど音を反射する部位が多いことに加えて、内装に耐水・耐湿性が必要なことから吸音がしにくいために、どうしても響きが長くなります。音響的な配慮が重要な施設のひとつです。

同時に、響きの長い空間ではスピーカの配置計画にも注意が必要です。響きが通常程度の空間と同じに考えては、明瞭な拡声はまず無理です。ポイントは次の通りです。

.好圈璽を出来るだけ聴衆に近づける
■餌罎離好圈璽のカバーエリアを狭く限定する
スピーカは指向性の範囲に聴衆がしっかり入るように向ける(余計な壁が指向範囲に入らないようにする)

つまり、音の伝搬距離を短くすることと、余計な残響の発生を抑えることで、明瞭さを確保するのです。先ほどの休憩のアナウンスも、スピーカの正面ではきちんと聞こえました。直接音>残響音とすることが重要なのです。

このアプローチは屋内体育館や展示場、教会などでも共通に適用できます。

ヘッドウォーンマイクってご存知ですか? head-worn microphone, つまり、頭に装着するマイクのことで、耳かけマイク とも言ったりします。下の画像のようにフレームを頭の後ろ側から両耳に掛けて、細いバーの先に着いたマイクヘッドが口の横にくるように着用するマイクです。片耳式のタイプもあります。

ヘッドウォーンマイクDPA2    ヘッドウォーンマイクDPA (DPA社HPより)

ミュージカルやヴォーカル&ダンスなどでよく使われますが(Janet JacksonのRhythm nationを思い出すと言って分かる方は同年代でしょう(笑)。テレ朝の報道ステーションの気象情報コーナーで女性アナウンサーが使っていますよ。)、欧米ではプレゼンテーションでもヘッドウォーンマイクがよく使われます。両手が空くのでジェスチャーにも適しているからだと思われます。

音響的には、マイクが常に口の近傍にくることにより、次のようなメリットが得られます。

 1) 十分な入力レベルが安定して得られる
 2) 空間の響きや暗騒音のかぶりが少なくなり、音がクリアになる
 3) ハウリングが起こりにくくなる
 4) 講演者が何処を向いても安定して集音できる
 5) 口とマイク距離が一定に保たれるので、音量、音質が安定する

これらのメリットは、プレゼンテーションでの拡声でよく発生する問題、すなわち、タイピンマイクでの集音不良やハウリング、ハンドマイクが口元から離れてしまうことによる集音不良(特にスクリーンに映した資料を見ながらの説明時)などを一気に解決できるのです。

このように音響的に有効なヘッドウォーンマイクですが、残念ながら日本ではプレゼンテーションには浸透してません。私は、人前で話すことに慣れていない日本人にこそ有効なアイテムだと思います。

ホールに限らず、学校の講堂や集会施設、はたまた響きの豊かな礼拝堂などでも非常に有効です。タイピンマイクでは牧師の話が聞こえにくいと相談のあったキリスト教会にヘッドウォーンマイクのデモ機を手配して試して頂いたら、非常に良いということでさっそく導入された教会もありました。

私はヘッドウォーンマイクをもっと日本で普及させたいと思い、最近、電気音響設備の設計の際に、ワイヤレスマイクのタイピンマイクに加えてヘッドウォーンマイクを1〜2台入れています。

みんなでヘッドウォーンマイクを流行らせて、拡声のクオリティをアップしましょう!

ある文化施設の音楽練習室で、天井のスピーカから隣の練習室の演奏音が聞こえてくる、という連絡を受けて現場調査に同席しました。

早速、練習室Aにあるドラムセットを叩いてもらい、隣の練習室Bで耳を澄ますと、確かに天井スピーカからドラムの音が聞こえてきます。

音の大きさを測ってみると、練習室A内でのドラム演奏音は103 dBで、練習室Bのスピーカからの音はスピーカから30cmの距離で39 dBでした (ともに騒音レベル※1)。システム的には考えられない大きさで、しかもクリアに聞こえます。練習室Bの暗騒音※2は25 dB未満※3なので、静かな時には聞こえて、しかも音質的に気付きやすいと言えます。

音が伝わる原理は、練習室Aのスピーカ(スピーカAとします)がマイクになって起電し、それが練習室Bのスピーカ(スピーカBとします)に伝わり再生されたと考えられます。
一見別物のマイクとスピーカですが、音と電気を変換する装置としてはどちらも仕組みは同じなので、スピーカがマイクになり得ます。(糸電話を思い出して下さい。)

しかし、スピーカの音→電気の変換効率はマイクよりずっと低いですし、通常、未放送時はスピーカ回線がアンプ側でショートされるので、これ程の音量を再生できるだけの電圧が隣のスピーカにかかるはずはありません。よって、きちんとショートされていない可能性があります。

そこでスピーカBでアンプ側の線路抵抗を測ると約200Ωと高く、試しに近くのEPS内で同系統の回線をショートさせても変化なしでした。これはおかしいということで、今度はスピーカAで同じく線路抵抗を測るとこちらも約200Ω。これらより、練習室の天井スピーカ系統の最初の1台にあたる、控室のスピーカに異常が疑われました。

アンプからのスピーカ回線は控室の天井裏で2系統に分岐しており、そのうちの1つが控室の天井スピーカを経て練習室に繋がっていました。このスピーカを外して確認すると、ビンゴ! スピーカの接続が間違っていました。

接続を直した後は各スピーカの線路抵抗も数Ωに下がり、スピーカBに耳を近づけてもドラム音は全く聞こえない状態に回復しました。

この控室は、実は最近、改修工事が行われ、天井スピーカをいったん取り外したとのことなので、その再取付の際に接続を間違ったようです。また、再取付後の確認を、控室と同系統である練習室のスピーカまで含めて実施していれば問題を発見できたでしょうが、そこまでは気付かなかったのでしょう。

たった1台のスピーカの誤接続が、”別”の部屋で”音漏れ”という異種の現象を起こす・・・・全ては小さな事の積み重ねだと、関係者一同、大きな経験になりました。


実は、類似の現象が色々な施設で思ったよりもしばしば発生しているようです。その全ての原因が誤配線とは限りませんが、今回のケースがひとつの事例として参考になればと思い、ここに載せておきます。


※1 騒音レベル:人の感覚を考慮した音の大きさを表す尺度で、A特性音圧レベルとも言う。単位はデシベル(dB)
※2 暗騒音:目的音(ここではスピーカからの音)以外のその場の騒音のこと。
※3 25dB未満:音圧レベル計(騒音計)が騒音レベルを25dBまでしか測れないのでこう表現しています。

先日、公民館を建て替えた300席のホールで、エアモニタマイク用入力のないオーディオミキサー(音響調整卓)でどのようにモニタリング機能と操作性を実現するか、関係者で頭を悩せました。

エアモニタマイクとは、音響調整室で客席内の音の状況を把握するために客席に設置するマイクのことで、その音を調整室でモニタースピーカから聞きながらミキサー操作をします。

客席とガラスで区切られた調整室でミキサー操作するためには必須の機能ですが、最近のミキサーにはエアモニタマイクの入力機能がなくて困ります。


音響の専門スタッフが配置されるホールの場合には、スタッフの知識と技術に甘えてやりくりして使って頂いています。それで良い訳ではありませんが、スタッフさんも理解してくれています。

しかし、今回の公会堂のように専門のスタッフが配属されない施設ではそれは出来ません。
むしろ、必要な機能が適切に分かりやすく使えることが、専門スタッフのいる施設よりもより強く望まれると思います。

にも関わらず、こういう施設向きとして発売されている簡易で小型なミキサーほど、エアモニタに限らず、多くの点で実は配慮が足りないと私は思います。(それについてはまた別に)

公会堂以外にも、学校の講堂や公共の体育施設など、同じ問題を抱える現場が多数あります。
どなたか固定設備用として必要な機能と操作性をきちんと実現したミキサーを作ってくれませんか?
協力は惜しみませんから。


ちなみに・・・

アナログミキサー時代、固定設備用と言われるミキサーにはエアモニタマイク用の入力があり、ヘッドアンプ、ファンタム電源、ハイパスフィルターなどが装備されていました。

また、モニタースピーカからは常時エアモニタマイクの音声を出力していますが、検聴ボタンが押された間だけ該当するチャンネルの音声に切り替わるようにもなっていました。

Panasonic、ビクター、TOAなどの国内大手メーカもアナログ時代はそんな固定設備用のミキサーを製造していました。ヤマハはコンサートSR向けに注力していて、固定設備には今もあまり感心がないようです。

さらに、ホールや劇場用に特化された、今は無き、不二音響(株)製(ブランド名:HYFAX)のミキサーは、エアモニタ信号がアサインできるUTIL出力とアサインできないPGM出力とに分かれていて、楽屋やホワイエなどのスピーカにはエアモニタ信号を流せるが、ハウススピーカには間違っても流れないように(ハウリングするため)配慮されていました。

残念ながら上記のような機能をもったミキサーは現状ありません。
そのため本格的なホールや劇場でも、コンサートSR用に開発されたミキサーを使用し、足りない機能は機器を特注したり、前述のように既存の機能のなかでやりくりして使っているのが実情です。