1月28日〜29日に山形市民会館で開催されたFBSR会音響技術研修会に今年も参加しました。

毎年面白いネーミングのテーマですが、今年は「音響空間物語〜モノ(モノラル)からものがたり(空間創造)へ〜」というもので、音響空間が取り上げられました。

仮設音響反射板
 2日目の仮設音響反射板での実験の様子

PAも録音もモノラルから始まり、ステレオ、サラウンドと段々に音響空間を取り込み、表現しようと発展してきました。その歴史を尚美ミュージックカレッジの半田先生が、興味深いエピソードと貴重な音源の数々を織り交ぜて解説されました。

1日目はその他に、単に周波数特性をフラットにするのでなく感覚的な重みづけを考慮したスピーカチューニング法の紹介や、会場のプアーな音響をディレイスピーカを使って補強する実験などが行われました。

小ホール
 小ホールの様子。小ホールにはSSL、STUDER、DIGICO、ROLANDの
 録音ミキサーが集まりました。

2日目の最初はピアノ演奏を例に、会場の音響を建築的に改善していく方法の実験です。
ピアノを舞台幕の状態で演奏するところから、以下の様々な方法を追加していきました。
 1)舞台幕の状態
 2)仮設音響反射板を設置(Wenger社)
 3)脇花道の鳥屋口に反射板(衝立)を設置(ピアノに音を返すように)
 4)客席階段の蹴上を反射性に(板を立てかけた)
 5)仮設音響反射板をピアノから離す

いずれも薄会長が喜多方プラザの改修の際に実験、経験したものが元になっているそうです。2)でピアノの音量がUPしましたが、演奏者は客席の響きが聞こえやすくなり時に演奏しにくくなることもあるとのことでした。そこで3)は遅れ時間の短い反射音を追加したのです。モニタースピーカで音を返すのと同じ効果でピアニストは弾きやすくなったとコメントしました。PA技術者ならではの着眼点だなと感心しました。さらに4)は客席からの反射音をさらに追加しています。舞台から見ると階段の蹴上は合計すると見かけ上結構な面積になります。しかもピアノからの距離がバラバラなので単一エコーにならずに良い効果が得られます。ピアニストの方は音が気持ちよく聞こえるようになったとコメント。これにも感心させられました。日々現場にいる人ならではの発見だとつくづく思いました。

鳥屋口衝立
 鳥屋口に設置した衝立(赤丸)

客席階段蹴上反射





















 客席の階段蹴上に
 立てかけた板

また4)の実験の際にはその効果を実際に会場のインパルス応答を測定して比較しました。これは森本浪花音響計画の浪花さんと千葉さんが担当されました。インパルス応答波形や測定用の12面体スピーカになじみのない参加者の方は興味深く見ていました。

その他、ピアノと弦楽四重奏を対象に、ONマイクとOFFマイクでのPAの違いや、ディレイをかけた場合の演奏者の反応など、興味深い研修が行われました。

機材展示
 協力各社の機材展示の様子

毎年のことですが、本研修会は座学ではなく実際に音を聞く実験が中心の研修会で、とても興味深いです。しかもテーマがとても現場的で実践的なのが魅力です。また来年も参加したいと思います。
 
9/25〜27の3日間、豊橋技術科学大学(愛知県豊橋市)において日本音響学会2013年秋季研究発表会が開催されました。

今回はスペシャルセッションとして「屋外拡声システムに関する研究の最近の動向」、「公共空間における音環境の実状と期待される性能」といった自分の業務に関連し興味深いテーマが取り上げられていたために、久しぶりに参加しました。

■屋外拡声システムに関する研究の最近の動向

音響学会01










 会場の様子

東日本大震災の際に、防災用屋外拡声システム(一般に防災無線と呼ばれる)がよく聞き取れなかったという指摘が多くあったことを受けて、総務省のもとで行われた改善に関する研究をはじめ、関連する7件の発表がありました。

屋外拡声システムの音声情報が聞き取りにくかった原因として、異なる位置に設置された複数のスピーカからの音声が到達時間差によってダブって聞こえることや、建物等での反射音の影響があると、多くの発表で報告されました。
そして、音のダブり(エコー)が音声の了解性に与える影響についての聴感実験や、屋外という長距離伝搬経路での音響伝達特性の測定方法の開発、屋外拡声システムの音声了解度評価法と有効な音響パラメータの検討、地形と気象を考慮した伝搬予測、コンピュータシミュレーションの開発、などの研究成果が発表されました。

しかし、音声を聞き取りにくくしているダブりを生じる最も大きい原因であるスピーカの配置計画そのものについては発表がありませんでした。コンピュータシミュレーションの発表の中でスピーカの拡声方向を変更した場合のケーススタディがありましたが、シミュレーションの有効性を示すに留まっていました。

現状の屋外拡声システムのスピーカはひとつのタワーに4つのスピーカが設置され四方に拡声するのが標準的とのことですが、これでは必ず音がダブるエリアが生じてしまいます。四方への拡声は火の見櫓で鐘を鳴らすのと同じで信号音では問題は少ないですが、音声ではダブりによる了解性の低下が生じます。

そこで、ダブりを生じさせない、もしくは最小限に抑えるスピーカの配置計画が必要です。例えば、拡声の方向を半分や4分の1方向に限定して配置を計画したり、1方向への拡声を遠距離用のハイパワースピーカやアレイスピーカと近距離用のスピーカを組み合わせて行うなど、検討の余地があると感じました。このようなスピーカ配置計画に関しても研究に取り上げて欲しいと意見を会場で申し上げました。

また、発表者の側からは、屋外拡声システム(防災無線)の計画において、市民が聞く音声の視点からシステムを包括的に見る音響の専門家の必要性が指摘されました。当然のことと思いますが、そうでない現状が残念です。改善を期待したいです。

■ポスターセッション(建築音響分野)

音響学会ポスター










 ポスターセッション会場の様子

2日目の午前に建築音響分野のポスターセッションがありました。

興味あるホール等の音響設計事例としては、大阪のフェスティバルホール(日建設計・永田音響設計)、仙台市青年文化センター・コンサートホールの改修(NHK-ITEC)、愛知県立芸術大学音楽学部新校舎(日建設計・東大生研)、穂の国とよはし芸術劇場「PLAT」(ヤマハ・大成建設)の発表がありました。

そのうち、愛知県立大学の事例は、音響的に必要な要件を素直にデザインに取り入れた模範的な例と思いました。音響的要件を設計者などに理解してもらうのにとてもよい参考例になります。社内に音響部門がある日建設計ならではの事例と感じました。

■公共空間における音環境の実状と期待される性能

音響学会03










 会場の様子

3日目のスペシャルセッションは上記のテーマで、商業施設、駅、公園、学校・保育所、病院、オープンスペースといった施設について招待講演がありました。

話の共通点をまとめると、

商業施設: 昔の百貨店では音もサービスとして配慮されていたが、最近の大型店、アウトレットモールではない。
駅: 設計条件に音が含まれていない。
学校・保育所: オープンプラン教室には音響的処理が重要だがまだ不十分。最近増えいてる保育所の音環境が酷い。
病院: スピーチプライバシーは北米では設計条件に含まれているが、日本では含まれていない。
オープンスペース: デザイナーに音環境を体験させ理解を求めている。

といったもので、音環境が重要でありながらも施設計画に盛り込まれない現状の報告が多くありました。
その理由としては、発表者の一人が言われたという次の返答がすべてを表しています。

「音環境を良くしたほうがいいのは分かるが、良くしても我々の儲けにはつながらない」

でも、これを聞いて、落胆しているばかりではしょうがないですし、逆に状況を変える取っ掛かりが分かりました。

「音環境による経済効果」をアピールして行くことです。みんなで考えてアピールして行けばきっと変えられます。 

■特別イベント「手筒花火」

2日目の発表会後に豊橋技科大近くの神社にて地元伝統の「手筒花火」の特別奉納が行われました。はじめて見ましたがとてつもない迫力です。

手筒花火小 「ようかん」という小型の
 もの。
 片手で持つのですが、
 実は一番熱いそうです。

手筒花火中 「三斤」という中型のもの。
 腰の脇で構えます。
 凄い迫力です。




手筒花火大 「五斤」という大型のもの。
 もはや勇者でなければ
 できません!!


以上、久しぶりにいろいろな方に再会もし、有意義な3日間でした。

日本音響学会の次回の研究発表会は、平成26年3月10日〜12日に東京・御茶ノ水の日本大学理工学部で開催される予定です。
 
9/20、日本音響家協会東日本支部主催の第4回ネットワークセミナーにパネラーとして参加しました。このセミナーは劇場やホールにおけるネットワークを取り上げたもので、4回目の今回は無線LANを切り口として3部構成で行われました。

SEASパンフ 

■第1部:改修が終わった東京芸術劇場のネットワーク構築の事例紹介

第1部では、まず、昨年夏に大規模改修を終えた東京芸術劇場の全館ネットワークの基本構想について石丸氏(東京芸術劇場)から、その具体的な実現方法について多和氏(日本電気)から紹介がありました。

同劇場では改修にあたり、施設利用予約や備品貸出管理などの事務用、海外のスタッフとテレビ電話しながら舞台制作を進めたりする際などの利用者用、設備の遠隔管理などの制御用、将来のコンテンツ配信等に備えた信号用という用途を想定し、4系統の全館ネットワークを整備してそれを実現されたとのことでした。

それに加えてホール毎にクローズした舞台機構・舞台照明・舞台音響設備用のネットワークが並存し、機器のリモート監視や操作、管理に活用されているそうです。

音響設備でのネットワーク活用としては、新たに音響工房を設け、サーバーに効果音などの各種素材を保管管理し、各ホールをはじめ必要各所から素材のピックアップなどができるようにされたそうです。

いずれの用途も劇場運営にネットワークの利点が活かされていると感じます。これは劇場を長年運用してこられた方々の意見を元に積み上げる改修のメリットといえるでしょう。運用者がどのような事がしたいかが設計時に明確だった事がとてもよく表れていると感じました。

技術面での特徴は、バーチャルLAN(物理的に1系統のネットワーク内に仮想的に複数のネットワークを構築する)により費用対効果を上げているとのことでした。

幹線は光ファイバーで、末端の必要個所に無線アクセスポイントを設置し無線化しているそうです。無線LANのチャンネルは2.4GHz帯と5GHz帯をすべて使って全体でプランニングされていました。

また、劇場のように多くの方が入れ替わり利用する場合、ネットワークのパスワードの変更・管理が重要との話に納得しました。同劇場では公演毎にパスワードを変更してセキュリティを確保しているそうです。業務的には意外に大変そうですので、忘れずにシステム化しておくべきと感じました。

これらの話を聞いて、これまで私は音響設備のネットワークだけしか考えてきませんでしたが、もはやネットワークは劇場運用に大きく関わる施設全体のインフラとして考える必要があると痛感しました。
今後の施設設計において、ネットワーク専門の設計担当者が必要であるとの石丸氏の発言にとても納得しました。

SEASセミナー風景










 セミナー会場の様子

■第2部:ネットワーク/無線LANに関する施設設計・施工事例と製品の紹介

第2部では設計・施工者4者から事例紹介が、メーカ6者から製品紹介がありました。

私はコンサルタントの立場から自身の方針として、舞台音響設備における無線LAN機器の設計について、「基本的に有線LANでネットワークを構築し、無線LANは二次的、補助的に使用できるようにしている」ことを紹介しました。

具体的にはつぎのようなことです。
(1)ミキサーやプロセッサ機器のリモートコントロールなどは有線LANをまず構築し、その上で無線LANでも使用可能とする。
(2)インカムは必ず有線インカムとの併用とし、ワイヤレスインカムのみのシステムにはしない。
(3)2.4GHz帯のワイヤレスマイクは原則採用しない。

理由として以下の説明をしました。
(1)電波である以上、かつ無線LANの規格上も、通信安定性は保証されない。
(2)2.4GHz帯では干渉なく同時使用できるチャンネル数が3つしかなく、かつ混雑している。
(3)大型会議等では観客用のインターネット接続用無線LANが要求され優先される。
(4)デモ時には問題なくても本番になるとトラブルが起こるケースが多い。

以上を見ると否定的な印象を持たれるかもしれませんが、私は決して無線LANを否定している訳ではありません。とても便利なことは重々理解しています。ただ、その利便性を適切に活用し、重大なトラブルを回避するためにも、システムの問題点や限界も十分に理解しておくべきということです。

■第3部:メーカ・代理店、設計・施工者、ユーザーの3分野の方々による座談会

第3部は、第1〜2部のパネラーにホール技術スタッフやサウンドチューナーの方々が加わり、更に日本音響家協会の北海道支部ともSkypeで繋いで座談会形式で進行されました。

ホール技術スタッフの方からは、同じ建物内でホールに近接する他施設からの無線LAN電波や隣接する鉄道駅からの電波などによって舞台照明のワイヤレス操作に影響を受けた例などが紹介されました。無線方式を2.4GHz帯から旧式のラジコン用電波帯に変更して対策した例の報告もあり参考になりました。

サウンドチューナーの方からは、客席で音を聴きながらスピーカのチューニングをするのに無線LANでのプロセッサ遠隔操作は欠かせないが、2.4GHz帯は混雑で使いものにならないので5GHz帯を使用していること、ただし本番は有線LANしかもバーチャルLANでなく専用線という責任もてる回線を使用しているとの発言がありました。「責任もてる回線」という表現に納得しました。

また、最近ではWiFi内蔵PC+アプリや専用機器で電波状況を簡単に調べることができます。実際にホールや屋外イベント会場でのWiFi電波状況を調べた結果が紹介されましたが、どれも2.4GHz帯は壊滅的な混雑状況でした。

このような状況を北海道支部に問いかけたところ、北海道ではそのような混雑状況はないとの返答でした。2.4GHz帯のワイヤレスマイクについても特に問題になっていないようで、無線LANの状況は地域や場所による違いが大きい事を気づかされました。

***

このように長時間に渡りましたが、大変内容の濃いセミナーでした。私自身も勉強になりました。
施設計画においてネットワークはもはやいち設備の範疇ではなく施設全体のインフラとして考えるべきと言ったのと同様に、このようなソフト面も含めた問題や情報交換も舞台音響、照明、機構さらには企画や管理といった様々な立場の方々の部門を超えたコミュニケーションが重要であることを実感しました。

日本音響家協会のHPに本セミナーの報告が掲載されていて、今回のセミナーの録画も見られるようですので、興味ある方はチェックしてみてください。

日本音響家協会 関連ページ
http://seas.or.jp/news/various.html#anchor2013_9_20

 7/30に新国立劇場の中劇場にて行われた「舞台技術運用セミナー2013」に参加しました。
(主催:新国立劇場、協力:公共劇場技術者連絡会、劇場演出空間技術協会、日本舞台音響家協会)

会場の様子 会場の様子

■第1部「ポイントソーススピーカとラインアレイスピーカ」

第1部ではポイントソーススピーカとラインアレイスピーカについて、特徴の解説と聴き比べが行われました。進行は渡邉邦男氏(新国立劇場技術部音響課長)、解説は丹尾隆広氏(ATL)です。

聴き比べの最初は、舞台中央のバトンに吊り下げたポイントソーススピーカ(UPQ-1P×1台)とラインアレイスピーカ(MINA×8台)の違い。ともに客席の同じ範囲をカバーするようにセットされています。

試聴1

ポイントソースは聴き慣れた音と響きで、音の距離感も視覚と一致して感じます。カバーエリア内での音質の変化が少なく、カバーエリア外の減衰もスムーズに感じます。

ラインアレイはやはりカバーエリア内のスピーカから最も遠い席で一番いい音に感じます。複数のスピーカユニットからの音のズレが最少になるからでしょう。低音の音量感がポイントソースよりずっと良いのですが、ウーハーの台数が多いことを考えると当然でしょう。聴く位置による音質の変化は大きく感じますが、響きが少なく、遠方では視覚的な距離以上に音が近く感じます。

次に、スピーカユニットのサイズによる違いをポイントソースとラインアレイで聴き比べました。
 ポイントソース(写真手前。サブウーハは未使用)
 大型:UPQ-1P(15inch)、中型:UPA-1P(12inch)、小型:UPJ-1P(10inch)
 ラインアレイ(写真奥)
 大型:MILO(2×12inch)、中型:MICA(2×10inch)、小型:Melodie(2×8inch)

試聴2 

ポイントソース、ラインアレイともに小型のスピーカほど低音の出を感じます。小型スピーカは少ない台数で使われることが多いので低音を出し気味にしておいてちょうど良いのでしょう。

こうやって試聴すると、それぞれのスピーカには特徴があり、会場や用途に応じて最適なスピーカをチョイスすることの重要性を改めて感じます。

■第2部「幕類の音への影響」

第2部では、舞台でよく使われる様々な種類の幕や布が音をどの程度透過するか検証実験が行われました。これはホリや幕類の裏にスピーカを仕込まなくてはならなかったり、スピーカを布などで隠す必要があることが良くあることから取り上げられたとのことで、とても興味深い実験でした。進行は渡邉氏で、解説は稲生眞氏(永田音響設計)がされました。

スピーカの前に下記の幕や布を垂らした前後で音を試聴するとともに、SIMにより周波数特性も比較できるようになっていました。

試験体:ビニホリ(ゲレッツ・オペラPVC)、大黒・袖幕(ゲレッツ・スーパーサージ)、紗幕、フェルト袖幕(厚さ1mm以下)、ジョーゼット、Pシルク、シーチング、葛城、11号帆布、ドングロス、貫八別珍、毛氈ネル、毛氈フェルト、ベルベット(レーヨン)、ターポリン

ビニホリなし







 分かりにくいですが、スクリー
 ンの左側にスピーカが設置され
 ています。
 ビニホリを垂らす前。

ビニホリあり






 スピーカ前にビニホリを垂らし
 た状態。
 スクリーン上段のグラフが周波
 数特性(緑がホリ設置前、白が
 設置後)

大幅に音が遮られたのはビニルコーティングされたビニホリとターポリン、および厚手で目の詰まった11号帆布や貫八別珍やベルベットで、高音域で10dB以上も減衰がありました。
その次はスーパーサージと葛城で、5〜8dB程度の減衰が見られました。

ほとんど影響がなかったのは紗幕とドングロス(麻布)ですが、どちらも透けるので実用には難しそうです。

影響はあるが程度が少なかったのはフェルト、ジョーゼット、Pシルク、シーチング、毛氈ネル、毛氈フェルトでした。音の減衰は1〜5dB程度です。Pシルクとシーチングは薄さの割には影響が大きく感じられました。薄くても目が細かく詰まっているのが原因と思われます。

セミナーではフェルトが、レベル低下は2dB程度ありますが音質の変化が少なく、透けないでコストも安いので好印象でした。ただし段々に生地が伸びてくるので消耗品として考える必要があります。
※ここでのフェルトは手芸用の厚手のものではなく、1mm以下の薄手のものです。

なお、上記の実験はいずれの幕、布もひだなしの状態で行っていましたが、フェルト袖幕のみひだの有無による差を検証しました。その結果、ひだをつけることで8kHz付近の減衰が少し大きくなりましたが、それ以外に全体的には大きな差はありませんでした。ひだを付けたことで部分的に見かけの厚みが増え、その厚みに関係する周波数付近の減衰が多くなるのだと思われます。

■第3部その1「FIRフィルタを活用した音場制御」

最近一部の音響機器に取り入れられているFIRフィルタを利用したイコライザの特徴と活用例が紹介されました。FIRフィルタは位相特性の変化がほとんど無く、複雑なフィルタも実現できるのが特徴です。ただしその操作は従来とは大きく違います。
進行は石丸耕一氏(東京芸術劇場)、解説は井澤元男氏(EVIオーディオ)と兼子紳一郎氏(ヤマハサウンドシステム)。

まずは、スピーカのクロスオーバーやホーンEQといったスピーカプロセッシングが従来のIIRフィルタに加えてFIRフィルタでも提供されているElectro-VoiceのラインアレイXLC-DVXで、IIRとFIRのプロセッシングを聴き比べました。

たしかにFIRでは音の解像度や分離が良くなった感じがありましたが、その一方で不自然さを感じる面もあったのが個人的に正直な印象です。

次に、FIRフィルタをルームイコライザとして使用するHYFAX AMQ2の紹介と活用例のデモがありました。AMQ2は現場に設置されたスピーカの再生周波数特性を測定し、それを目標特性(例えば、あらかじめ無響室などで測定したスピーカの素の再生周波数特性)と比較し、差分から逆特性となるFIRフィルタを作成し、音を補正するものです。

プラネタリウムなどでドーム状有孔スクリーン背後に設置されたスピーカの補正や、劇場等でスピーカ前面に化粧桟があるような場合の補正に有効で、従来よりきめ細かい補正ができるとのことです。

デモでは、第2部で取り上げられたように、ビニホリや大黒幕などの背後にスピーカを設置しなくてはならない場合を想定して、幕による音への影響をFIRフィルタで補正することが行われました。
スピーカ前にホリを降ろした後でFIRフィルタによる補正をONするとホリで遮られた中〜高音が回復し影響がだいぶ補正されました。でも、幕裏ではすごい音になっています。
幕1枚あたり20分程度の測定時間で済んだとのことで、音作りの時間の短縮も期待できるとのことです。

AMQ2は、何を目標性能とするのか、と、現場測定のポイントをどこにするかを決めるのが難しい点でしょう。また、現状ではメーカの技術者しか測定調整ができないのも課題で、誰でも操作できるようにしてほしいと石丸氏がコメントしていました。

■第3部その2「新発想の小型スピーカ」

最後は渡邉氏の進行、長谷部友洋氏(ライブギア)の解説で、k-array社のロープ状スピーカ(アナコンダ)や500mmスティック状スピーカなど変わり種スピーカの紹介とデモがありました。

 スティックスピーカ
 舞台上に配置したロープ状スピーカと    長さ500mmのスティック状スピーカ
 舞台下の低音用スピーカ

どちらもそうですが、特に500mmのスティック状スピーカは見た目以上にパワーが出るので驚きました。想像以上に様々な場所に使えそうです。


このように内容盛り沢山のセミナーでした。興味を持たれた方は是非来年ご参加ください。(ただし来年のテーマが音響とは限りません)
東京ビッグサイトで開催中の第26回EMC・ノイズ対策技術展に行ってきました。
同展は日本能率協会主催のTECHNO-FRONTIER 2013を構成する17の展示会のひとつです。



私がこの仕事を始めた17-18年前ごろから問題になり始めた音響設備へのノイズ混入は、その後の様々な検討と試行錯誤の経験を経て、インバーターをはじめとする原因の判明と漏洩対策の普及、そして音響電源や機器、配線側での防御対策と普及によって、大分回避されてきたと思っていました。

ですが、それでもまだノイズ問題が発生している現場はあり、工事中に対策できれば良いですが、対策が思うように効かない現場や、これまで経験のない思いもよらないノイズが混入するケースもあるのが現状です。

そんなノイズ問題の難しさを改めて感じていたところに同展の案内を頂いたので参加しました。

会場では出展者セミナーとしてノイズカットトランスで有名な(株)電研精機研究所のセミナーに参加しました。建物内の機械のノイズが放送設備スピーカの音に混入するという、私たちの状況に近いケースをモデルに、考えられる原因と混入経路の特定および対策方法について、短時間ながら分かりやすく説明がありました。



自分の理解が正しい事を再確認したとともに新しい知識も入手でき有意義でした。自分の知識の更新、怠らないようにしたいです。


展示の方では、音響設備のノイズ対策に関連しそうなものとして電磁波シールド材、ノイズカットトランス、電磁波測定器などがありましたが、革新的な物はない感じで、多くは機器を設計製造する上でのノイズ対策技術の展示でした。

会場で電研精機の方と話していて、ノイズ対策の多くの部分がまだまだノウハウであると感じました。
そういうノウハウ的な情報は、講演者が予め話題を用意するセミナー形式よりも少人数の座談会的な形式で行ったものを記録にする方がいいように思いました。

そんな座談会を企画しようかと思案中です。
ヤマハの残響支援システム「AFC3」の体験セミナーに参加してきました。

この会は「AFC3」の導入施工を担当しているヤマハサウンドシステム(株)の主催で、同社が「AFC3」を含む音響設備を施工した「ふるさと新座館」(埼玉県新座市)で行われました。



AFCなどの残響支援システムのデモは展示会等で仮設的に体験できることはありますが、実際のホールで体験できることは少ないので貴重な機会です。

ふるさと新座館のホールの残響時間は1.1秒(反射板設置時、空席、500Hz)ですが、これをAFCによって1.4秒(ピアノ演奏等想定)から2.1秒(宗教曲等想定)まで5段階に伸長できるように設定されていました。

ピアノ演奏のデモでは、システムをONすると、ピアノ用として設定された1.4秒と1.6秒の設定では残響というより音が豊かになり音量も上がる感じが得られました。

それ以上の設定にするとさすがにピアノには長すぎる感じになり、弦楽器や合唱などに適すると感じられます。演目に応じて上手く使うことがいい効果を得るポイントでしょう。

東北の音響技術者が中心となっているFBSR会の技術研修会が1/29〜30に山形市民会館で行われ、参加してきました。
 
 山形市民会館の大ホール

今年のテーマは「ラインアレイスピーカ」。
 
ラインアレイ式スピーカのもとと言えるSHUREのVocal-Masterとポイントソース式スピーカのALTEC A5という往年の名機たちと、近年のラインアレイスピーカ(Nexo、RCF)とポイントソーススピーカ(TANNOY、Electro-Voice)たちを聞きながら、それぞれのスピーカの開発思想や性能、特徴を学び体感しました。














 往年の名機
 SHURE Vocal-Master(右)と
 ALTEC LANSING A7(左)


 




 最近のラインアレイと
 ポイントソーススピーカ

 右から
 Nexo GeoS8+CD12
 RCF D LINE
 TANNOY VQ
 Electro-Voice EVF
 
 
Vocal-MasterやA5の音を実際に聴くことができたのは、とても貴重な体験でした。
 
試聴用の音源にはCDもありますが、メインはエレキバンド、民謡、ピアノとアコースティックギターとボーカルの生演奏など。この生演奏で研修をするのがFBSR会の特徴です。
スピーカの違いによるマイクへのかぶりや空間の響きの影響の変化など、実際のオペレーションの状態で体験できるように意図されています。

大ホールでは上記のようなSR中心の研修が行われ、小ホールでは大ホールでの生演奏をマイクで集音しミックスするという放送・録音中心の研修が同時に行われました。このあたりもFBSR会らしいスタンスです。

音響技術者たちによる自分たちのための研修会です。
興味のある方はぜひご参加ください。

FBSR会公式ホームページ
https://sites.google.com/site/fbsrofficial/Top

昨日、BOSE社の新しいスピーカシステムとパワーアンプの発表会に招待され、東京都渋谷区の「渋谷区文化総合センター大和田:さくらホール」に行ってきました。ここは2010年11月にオープンしたばかりの施設で、音響設計は(株)永田音響設計で、自分が同社在籍時に舞台音響設備コンサルティングを担当したホールです。

BOSEと言うとコンシューマ・オーディオやカー・オーディオ、店舗の音響システムが有名ですが、新製品は劇場やアリーナなどの固定設備をターゲットにしたコンサートSRクオリティのスピーカシステムとパワーアンプです。

bose-1 デモンストレーションの様子

新しいスピーカの特徴は、水平・垂直の指向性パターンが15種類と豊富なスピーカを組み合わせて、客席配置にマッチした指向性と音圧分布を実現するというものでした。適切な指向性制御は反射音や残響音の影響を最小限に抑え、スピーカ本来の音を最大限に伝えることに繋がります。劇場などの固定設備にとってはとても重要なアプローチなので、大歓迎です。もちろんスピーカは高音質で、相互に連結した際のスピーカ間の干渉も最小限に抑えられているとのことです。一見するとラインアレイスピーカのようですが、コンセプトは全く異なり、ポイントソーススピーカにラインアレイの技術を応用したものと言えるでしょう。

bose-2

また、新しいパワーアンプは500W×8chのアンプで、こちらも2chないし4ch毎にモードを変更することで必要なパワーにマッチした構成を実現できるというものです。しかも、電源を効率良く使用する技術によって、高音質とフル・パワーでの駆動時間を十分に確保しながらも、電源は20AでOKとのこと。すごい!
これだとメインスピーカからホワイエや楽屋などの運営系スピーカまで同一アンプでドライブできます。ということは、制御ソフトウェアも統一できるということ。FOH以外にも運用的なスピーカが沢山ある劇場などではとても有り難いことです。

bose-3 スピーカユニットの展示

残念ながらデモの際に会場内を動けなかったので、実際の指向性制御の感じやスピーカユニット間の干渉がどこまで低減されているのかなどは確認できませんでしたが、いい音してました。スピーカ、アンプ共にコンセプトから非常に興味深い注目の製品です。

なお、隔月刊誌プロサウンド2011.8月号に特集されているようです。

7/12(火)に、EVI AUDIO JAPAN社のサウンドフェア2011に行ってきました。会場は東京都中野区の「なかのZERO大ホール」(音響設計:(株)永田音響設計)です。

EVIフェア1

音響機器、特にスピーカはカタログだけみても、やっぱり実際に音を聞かないと分かりませんし、音を聞いたことがないと採用できません。なので、メーカ・ディーラ各社によるこのような試聴会はとても重要です。

今回は、EVはInnovationシリーズとXLVC、DYNACORDはcobraとVARILINEの試聴デモがありました。また、試聴デモと兼ねて、コンサートPA等でのL/Rのサブウーハ音の干渉を解消するアプローチの紹介もありました。

新商品としては、FIRフィルタによるスピーカプロセッシング(EVとDYNACORD)と、EVのUHFワイヤレスマイクシステムなどが紹介されました。

また、EVのDSPであるNETMAXと総合コントロールソフトIRIS Netを使ったシステムの紹介にも大分時間が割かれていました。時代ですね。

今回はプレゼンの情報量がかなり沢山で、すごくお腹一杯で帰りました。最近は腹八分目がいいかな・・・。

先日、日本音響家協会主催の「フィールドレコーダー タッチ&トライ」に行って来ました。7/5(火)のことで、会場は牛込箪笥区民センター(新宿区)のホールです。

ROLAND (EDIROL)、YAMAHA、SONY、TASCAM、KORG、ZOOM、OLYMPUSのフィールドレコーダー現行機種が、ポータブルタイプを中心に一同に展示されていました。それだけでも画期的ですが、さらに今回は、プロ・ギタリスト南澤大介氏の生演奏を実際に各機種で録音し、それを比較試聴できるという、音響家協会ならではの魅力的な企画です。

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上の写真は南澤大介氏とアンプラグドの回の演奏を録音するために各レコーダーをセットしている様子です。これ以外にPAした演奏音を録音する回と、ギターからのライン録音の回という状況を変えたセットがありました。これまた興味深い。そして4回目の生演奏は南澤大介氏のミニライブです。(アンコールのルパン3世のテーマがグッときました。笑)

コンシューマでも今や24bit,96kが当たり前。各機種それぞれに音質やコンセプトに特徴があって面白かったのですが、私的に気になったものを紹介します。

SH3F01290001.jpg  SH3F01280001.jpg

OLYMPUSのフィールドレコーダー (左)
OLYMPUS=カメラしかイメージできませんでしが、レコーダーにも力を入れているとのことです。音源との距離感が自然に感じられたのが個人的に好印象でした。

TASCAMの8chマルチトラックレコーダーとフェーダーコントローラ (右)
CFカードに8chマルチトラックと、そこから2ミックスをつくって同時に録音できるマイクプリ付レコーダー(写真下側の液晶がついた機器)と、レコーダの入力レベルやステレオミキサーのレベル・パンなどをリモートできるフェーダー(写真上側の機器)です。
録音卓の代わりにホールの調整室に1台あると重宝しそうです。コンパクトだし、PA卓と独立していた方が操作ミスも防げます。

あと、写真はありませんが、個人的に音響測定の音源信号再生機として、YAMAHAの大きめのワイヤレスリモコンが付いた機種が便利そうでした。