海外で見かけた吸音仕上げ、最終回はその他編です。

フランクフルトホテル食堂 まずはフランクフルトのホテル(リーズナブルなランク)の食堂です。天井が有孔板(穴あき板)で吸音されています。梁の部分が無孔で、その中側が継ぎ目なく有孔板というようにデザインされています。
白色と明るい黄色の組み合わせはウィーンでもよく見かけた色合いです。

フランクフルトメッセ1 次はフランクフルト・メッセの展示ホールのひとつです。女性が寄りかかっている木質の壁は...。

フランクフルトメッセ1up 横スリットの奥に穴が開いた吸音板です。一見すると横スリットは分かりますが、穴までは気づきにくいです。有孔板と類似の吸音特性があります。
スリットと穴を組み合わせた吸音パネルはスイスのn'H Akustik + Design社のTOPAKUSTIKが知られていますが、これがそうか、類似製品かは不明です。
ちなみにTOPAKUSTIK製品は日本では(株)マデラで取り扱っています。

メディアセンター2 次はロンドンにあるローズ・クリケット・グラウンド。ここは「クリケットの聖地」とも呼ばれるクリケット競技場(収容人数28,000人)です。写真はその競技場のメディアセンターで、観客席より高い位置にありグラウンドを見渡せます。

メディアセンター1 天井がうすい水色のクロスを額縁貼りしたグラスウールボードで吸音されていました。このメディアセンターは有機的な形をしているのでグラスウールボードが採用されたのかもしれませんが、目地の暴れがちょっと気になります。また、どうやって取り付けているのかな。

ステープルセンター1 次はロサンゼルスのダウンタウンにあるステイプルズ・センターです。最大20,000人を収容し、バスケットボールやアイスホッケーなどのスポーツのほかコンサートにも使われる大規模アリーナです。

ステープルセンター1up1 その天井に多様されているのが吸音バナーと呼ばれる吸音材です。グラスウールなどの吸音材を薄いシートで包んだもので、写真のように天井から弛ませて吊り下げたり、そのまま垂直に吊り下げたりして使用します。

ステイプルズ1up3 左の写真は吸音バナーを垂直に吊り下げて使用している例で、壁の黒い短冊状のものが吸音バナーです。仕組みはとても単純な吸音バナーですが、日本には入ってきていないようで、類似の製品も見かけません。残念です。

ステイプルズ2 そして同センターでは、アリーナ上部に吊り下げられた大型映像装置の画面とチームマーク以外の全ての部位に、吸音バナーとおなじグラスウールをシートで覆った吸音仕上げがされています。黒いシートが薄いためにグラスウールの黄色がやや透けているのと、写真左下部分にシートのしわが見えることからそれが分かります。空間が巨大なので吸音を徹底していることが分かります。

以上、海外で見かけた吸音仕上げを3回に渡ってお届けしました。

日本でも欧米でも吸音の仕上げ方法は大差ないことが分かります。でも、欧米では吸音仕上げが日本より積極的に採用されているように感じます。日本ももう少し欧米の音環境に対する意識を見習ってよいのではと思います。
 
海外で見かけた吸音仕上げ、第2弾は鉄道編です。

キングスクロス駅1 まずはハリーポッターのホグワーツ行きの列車が出発する9と3/4番線で有名なロンドンのキングス・クロス駅です。再開発によって数年前に完成したエリアのようで、ドーム状の屋根を形成するフレームが印象的です。

キングスクロス駅1up このフレームの上の屋根面をズームアップしていくと、写真のようにパンチングメタルだと分かります。と言うことは、この裏にはグラスウールなどの吸音材が設置され吸音仕上げになっていることはほぼ間違いないでしょう。



キングスクロス駅2 ここもキングス・クロス駅で、最初の写真で左側に見える2階バルコニーの下の天井面です。目地が斜めに入ったパネル状の天井です。

キングスクロス駅2up これもよく見るとパンチングメタルです。しかも鋭角という難しい加工が施されています。

キングスクロス地下鉄駅 次は同じキングス・クロス駅ですが、こちらは地下鉄のホームです。シリンダー状の天井に長穴の有孔パネルが設置されています。ただ、他の地下鉄駅は吸音されていない所がほとんどなので、再開発の一環で改修されたのかもしれません。
 音と関係ありませんが、トンネルが小さいのが分かりますか。

セントパンクラス駅1 次はキングス・クロス駅のすぐ隣にあるセント・パンクラス駅です。ロンドンとパリを結ぶ国際特急ユーロスターの発着駅でもあります。

セントパンクラス駅1up 駅構内の天井はほとんど全面が写真のようなパンチングメタルのパネルとなっています。

セントパンクラス駅3 ここは同駅内のユーロスターのビジネス・ラウンジです。実は細長く狭い空間なのですが、大きな照明器具と鏡によって広がりを感じる上品な空間になっています。

セントパンクラス駅3up そしてここも天井はパンチングメタルのパネルです。上の写真のように緩くシリンダー状になっており、デザインのアクセントにもなっています。

セントパンクラス駅2 そして同駅のホーム。明りとり窓がある、のこぎり状の屋根になっています。

セントパンクラス駅2up その屋根もパンチングメタルのパネルでした。ここまで全部パンチングメタルです。イギリスではパンチングメタルは吸音の定番のようです。

メッセ駅1 次はドイツ、フランクフルトのメッセ駅です。この駅は、毎年ミュージック・メッセが開催されるフランクフルト・メッセの玄関駅です。プラットホームからエスカレータを上がると改札はなくてすぐメッセのエントランスです。

メッセ駅1up ここの天井は吸音性のパネルが貼りつけられていました。

ドイツ特急1 ここからは列車の車内です。まずはドイツの都市間を結ぶ特急列車。

ドイツ特急1up 天井の中央部のパネルに穴が開いていて、さりげなく吸音しています。パネルはプラスチック系のようです。

ウィーン鉄道 次はウィーン国際空港からウィーン市内へ向かう列車の車内です。

ウィーン鉄道up こちらはかなり存在感のある穴あきパネルです。こちらも材質はプラスチック系のようです。

viena tram そしてこれはウィーン市内のトラム(路面電車)の車内です。アップの写真がないので分かりにくいですが、他の列車と同じように天井の中央部が穴あきになっています。ここの材質はスチールのようです。

以上、鉄道編でした。
鉄道系ではパンチングメタルの採用率が高いようです。耐久性、メンテナンス性が理由ではないでしょうか。

次はその他編の予定です。
昨年から今年にかけて海外の展示会に行く機会が何度かありました。その道中で目についた吸音仕上げの実例を公共施設を中心に紹介します。

第1弾は、空港編です。


ボストン空港1 まずはボストンのローガン国際空港の国際線ターミナルのチェックインエリアです。全面的に木が使用されています。そして天井の板をよく見ると...

ボストン空港1up なんと有孔板(穴あき板)でした。スリットに設置されたスピーカを撮影しようとしてカメラでズームアップしてはじめて有孔板だと気づきました。そうでなければ有孔板とは全くわかりません。

LAX1 つぎはロサンゼルス国際空港の国際線ターミナルのチェックインカウンター。上部に木製のパネルがあしらわれ、無機質な空間にナチュラルなアクセントを与えています。

LAX1up これもよく見ると有孔板なのです。ボストン空港の天井に比べれば見て有孔板とわかる距離にありますが、それでも普通の方は全く気づかないし、見た目に違和感も感じないと思います。私は職業柄気づきましたが。

LAX2 同じくロサンゼルス国際空港の搭乗ロビーです。天井が白くて高い空間の中に、木調の庇が連続しています。そして、

LAx2up1 この木調の庇には微細穿孔板(MPP,Micro-Perforated Panel)が使用されていました。微細穿孔板はシートや薄い板に直径1mm以下の微細な穴を開けたもので、背後に空気層を持たせて設置することで吸音効果が得られます。庇は木に見せていましたが、木目調のシート張りのようです。
 微細穿孔板は一般の有孔板より意匠的な影響が少ないですが、吸音する周波数範囲が狭いので注意が必要です。

LAX2up2 一方、白く高い天井面はパンチングメタルです。天井が高いので穴はもちろん、目地さえ気づきません。

ウィーン国際空港1 つぎはヨーロッパに飛んで、ウィーン国際空港です。2012年にオープンしたという新しいターミナルで、モノトーンでモダンなデザインです。

ウィーン国際空港1up ここの天井面は照明器具を除いてすべてパンチングメタルのパネルになっていました。

ウィーン国際空港2 同じくウィーン国際空港。ここは先ほどの到着ゲートからバッゲージクライムに向かう通路です。天井一面がシームレスな有孔板になっています。この全面シームレス有孔板、ウィーンやドイツでは何度か見かけましたが、日本ではあまり好まれないですね。どうしてでしょう。

ウィーン国際空港2up1 点検口の周りはこんな風に穴をふさいでいます。

ウィーン国際空港2up2 照明器具の周りも点検口と同じディテールで仕上げられています。

ドゴール空港ラウンジ1 空港編の最後はシャルル・ド・ゴール国際空港のラウンジです。天井の木パネルはすべて有孔板です。日本では、有孔板=格好悪いというレッテルが貼られている感じがしますが、これをみて全然そんな風に感じません。

ドゴール空港ラウンジ2 これは同じラウンジの別エリア(上の写真の右側)ですが、木パネルでないグレーの天井部分はアコースティック・シーリング(日本でいう岩綿吸音板のようなもの)です。素材を変えていますが全面吸音仕上げになっています。

以上、空港編でした。
欧米でも有孔板が吸音仕上げのメジャーな材料のようです。天井を吸音処理するのは日本も同じですが、有孔板の使い方は日本より大胆で、しかも格好良いようです。

次は鉄道編の予定です。
音響設計を担当させて頂いた d&b audiotechnik Japan社(横浜市都筑区)のデモルームが完成しました。

Black range side BLACK RANGE side

デモルームは同社のスピーカとパワーアンプのラインナップを常時備えて、試聴やセットアップなど各種デモンストレーションを行える空間として、また、各種セミナーなどにも活用する空間として計画されました。

デモルームの一方のエンドがツアーサウンド向けのBLACK RANGE製品エリアに、他方が設備音響向けのWHITE RANGE製品エリアになっています。


White range side WHITE RANGE side

音響設計のコンセプトを次のように設定しました。

 1) スピーカの素の音が分かるように、空間の音響がスピーカ音に癖を与えないようにする。
 2) 響きは抑えるが、無響室のように不快でなく、セミナー等で長時間いても違和感のない音響とする。

そのために
 ・響きを抑える(低音から高音までできるだけ均一に)
 ・フラッターエコーの抑制
 ・定在波、ブーミングの抑制
 ・適度に反射を残す

これらを実現するために内装デザインにも見えないところにも音響的な処理を取り入れた設計をしていただきました。特に側壁にその多くが詰まっています。


Wall and ceiling 音響と意匠を兼ねた側壁のななめ
 木格子と天井の木ルーバー
 白い壁面はグラスウール系の
 吸音ボード

内装には東京・多摩産の杉材を無塗装で使用しました。これは内装設計をお願いした すわ製作所の提案によるもので、地産材を使うことで東京の森林整備に役立ち、環境保全にもつながるとのことです。「音響」と「人」と「環境」に配慮した、居心地のいいデモルームになりました。


デモルームでは6月から定期的に3つのセミナー(電気音響学セミナー、ラインアレイワークショップ、リモートネットワークワークショップ)が開催されます。どなたでも無料で参加できるそうですので、興味のある方は同社HPをご覧ください。
劇場演出空間技術協会(JATET)の「劇場等演出空間電気設備指針」が改訂されます。
同指針は劇場やホールの舞台設備(機構・照明・音響・映像等)と関連する電気設備についての指針です。
その改訂内容を中心にした解説講習会が下記の通り催されるそうです。


東京会場:7/22(火)10時〜17時 @主婦会館プラザエフ(四ッ谷)

大阪会場:7/28(月)10時30分〜17時30分 @大阪産業創造館(堺筋本町)

参加費:会員12,000円、会員外20,000円

※参加費には改訂版の指針1冊が含まれます。


参加申し込みは5/19からJATETホームページで受付開始予定とのことです。
詳細はJATETのホームページをご覧ください。
http://www.jatet.or.jp/forum/JF2014/


いわき芸術文化交流館アリオス(福島県いわき市)が4/26に来館者数400万人を突破しました。おめでとうございます。

アリオス外観 いわきアリオス

第1次オープンから6年での達成です。関係者としてとてもうれしく思います。
(私は舞台音響設備を担当しました)
これからも市民の方々がここで沢山の感動に触れていかれることを願っています。

いわきアリオスのホームページの記事
http://iwaki-alios.jp/cd/app/?C=news&H=default&D=00570

福島民報の記事
http://www.minpo.jp/news/detail/2014042915381

ちなみに下の写真は中劇場の調整室から舞台を見たところです。
調整室の窓は4枚の引き戸を使って幅2.7mに渡って開放できるようにしました。
客席内の音が良く聞こえますよ。

アリオス中劇場調整室 中劇場の調整室から舞台を臨む
 (窓全開時)

 
「4月に入ってから時々、演壇マイクからノイズが出て使えなくなるときがあるので見てほしい」という連絡を受けて現場に行ってきました。

演壇マイクはグースネック型のコンデンサマイクです。


演壇マイク 演壇のマイク


確認をはじめた時にはノイズは出ていませんでしたが、いろいろ触って動かしているうちに「ブーン」とハムが鳴り出しました。施設の方が言われたノイズとはこのことでした。

マイクは同じものが2本常設されているので、まずそれらを入れ替えてみましたが、音量が違うもののどちらもハムが出ました。

となると原因はマイクではない?となり、マイクのベーススタンド → コネクタ部 → ケーブル → ミキサーのチャンネル、と順に確認していきましたが、原因個所が特定できません。

やっぱりマイクが怪しいな、とマイクに戻ってしばらく眺めていました。何気なくウインドスクリーンを外したら...。
なんとマイクヘッドが緩んでいるではありませんか。これか!


緩んだマイクヘッド 緩んでいたマイクヘッド

マイクヘッド締めた状態 締め直した状態

ウィンドスクリーンで覆われていたので見落としていました。
そういえば確認を始めたときにタッチノイズが大きいなと思った記憶が蘇ります。その時に気づくべきでした。
しかも、もう一方のマイクも緩んでいたのです。どちらか一方だったらマイクを入れ換えた時にマイクに問題があると特定できたことでしょう。

マイクヘッドを締め直したらタッチノイズは激減し(当たり前ですが)、ハムも起こらなくなりましたし、起こりそうな気配もない状態になりました。

ウインドスクリーンがふわふわしているので、誰かつまんでくるくる回していじくってたのかな、なんて想像します。

思った以上に時間が掛かってしまいましたが、解決することができて良かったです。
今日も勉強になった一日でした。
3/19に行われた日本音響学会の建築音響研究会(3月度)に出席して発表をしてきました。

会場は2012年8月オープンした静岡市清水文化会館「マリナート」です。
(PFI事業。建築設計:槇総合計画事務所+大成建設、音響設計:ヤマハ)

私はマリナートのとなりにある清水テルサ(2000年完成)を担当していましたが、当時は清水駅の東側に出口はありませんでした。様子が一変しているのに驚きました。

 会場の静岡市清水文化会館
 「マリナート」


前半は小ホールにて以下の発表がありました。

・スピーカの設置状況が再生周波数特性に与える影響について/内田匡哉(内田音響設計室)
・拡散音場は存在するか?/久野和宏
・NC曲線の拡張利用に関する検討/川上福司(Sound Concierge),寺園信一(アコー)
・静岡市清水文化会館マリナート −文化によるまちづくり−/福永知義(槇総合計画事務所)
・静岡市清水文化会館マリナートの音響設計/宮崎秀生(ヤマハ)


 研究発表の会場となった
 小ホール


研究発表のトップバッターは私でした。発表内容の概要は以下のとおりです。

「スピーカの設置状況が再生周波数特性に与える影響について」

ホールや劇場に音響設備のスピーカが設置される場合、その多くは建築意匠と一体となるように内装仕上げの中に設置され、前面には化粧パネル等が取り付けられます。建築意匠的には当然のことであり理解しますが、その状況によってはスピーカの再生音質に大きく影響を与えることがあります。これらは頻繁に経験することですが、その影響をデータとして示した例は多くありません。そこでスピーカの設置状況が再生周波数特性に与える影響について、いくつかの実ホールでの測定結果を紹介しました。

また、そのような周波数特性への影響はイコライザ装置によって電気的に除去できると思われがちですが、実際には影響を除去することはできません。なぜならイコライザによる音響調整は元信号に対して施すもので、影響によるレベル増加(あるいは低減)を考慮して予め元信号を低下(あるいは増加)しているからです。

つまりスピーカの設置環境によって生じた影響は電気的には除去できずに必ず残ります。よってスピーカの設置場所に対する建築面での音響的配慮が基本的なスピーカの再生音質を左右すると言えるので、十分な配慮が必要です。

というものです。興味のある方は資料がありますのでお問い合わせください。


 大ホールでの試聴の様子

 大ホールの客席側
 シーリング投光室をブリッジに
 して高い天井が確保されている


後半は施設見学に加えて、大ホールと小ホールのそれぞれでプロの演奏家によるピアノとチェロの演奏の試聴が行われました。

大ホールでは、低域までの反射音を得るために側壁の内装仕上げボードをコンクリート躯体に直貼りされたとのことで、それが響きに感じられるように思いました。また、空間を最大限に確保したことで得られた余裕ある響きを楽しみました。

 
2/25、彩の国さいたま芸術劇場の小ホールで、「舞台で活躍するピアノの魅力を探る」と題した舞台技術セミナーが行われました。


舞台 開演前の会場の様子


パネラーは国立音楽大学准教授の森太郎氏(楽器音響学、音楽音響学)、松尾楽器商会のコンサートチューナー外山洋司氏、ピアニストの仲道郁代さんと豪華メンバーです。

舞台にはピアノとスクリーンとパネラーの席が用意され、実際に音を出した実験を中心に解説が進められました。

最初に森氏が音と聴覚の基礎を解説されました。2つの音の周波数が微妙にずれていると生じる「うなり」や、音の高さによって聞き取れる最少の音の大きさが違うこと、ピアノの響板がどのくらい振動を音にして放射しやすいかなど、実際に音を出した実験を交えて解説されました。

次に外山氏がピアノの発音の仕組みと調律師が何を目指してどのようなことをしているかを、こちらも実演を交えて解説されました。特に興味深かったのは、ピアノは1音につき3本の弦が張ってありそれぞれを微妙に調整して音を豊かにしているという解説の際に、実際に各音の2本の弦をフェルトでダンピングして1音あたり1本の弦だけの状態にして、通常の状態と仲道さんの演奏で聴き比べしたことです。こんなことまず経験できません。その差は想像どおり、音が単純になってつまらなくなってしまいました。


外山氏の実演 外山氏が2本の弦を
 ダンピングしている様子


また、曲によってそれぞれの音が弾かれる回数が大きく違うので音によってハンマーの硬くなり方が全く違ってしまう、とか、室温の変化によって調律がずれるが音の高さによって狂い方が違う、とか、キャスターの向きによって響板の反りが変わって音が変わる、とか、ピアノの足を置く位置で音が変わる、など勉強になる話題が沢山紹介されました。

森氏と外山氏の解説中、なにかあると仲道さんがコメントをされました。例えば、ピアニストのタッチに合わせてピアノを調律するのは好まない、楽器としてニュートラルであるのが良い、など。

仲道さんはお淑やかなお顔と穏やかな話し方とは裏腹にピアニストの熱い思いを各所で述べられました。なかでも強く印象に残ったのは、ピアノは他の楽器と異なり会場のピアノを使用し、かつ演奏者ではピッチやハンマーの硬さなど楽器の状態を調整できないので、限られた演奏技術を駆使して楽器の状態を克服しつつ音楽的・芸術的表現を行っている、というコメントでした。だから、是非ピアノを良い状態に保つ努力をしてほしい、と。「良いピアノと状態の良いピアノは違う」と仲道さんが強く述べられていたのが印象的でした。

仲道さんの実演 ピアノを弾きながら
 熱く語る仲道さん


ちなみに同劇場のピアノは開館から20年の間に2回オーバーホールをしているそうですが、プロのコンサートやレコーディングに全く問題なく使われているそうです。外山氏は、ピアノの正常な状態を知っていれば問題点は見ただけでも分かります、と言われました。知識の習得と適切なメンテナンスが大切だという、当たり前のことが重要なのです。

さいたま芸術劇場では、いわゆる劇場法制定を受けて、このようなセミナー等を今後も開催していく予定とのことです。
 
700MHz利用推進協会、特ラ連、舞台音響家協会主催の新周波数に対応したワイヤレスマイク(特定ラジオマイク)のテスト会が2/18に北とぴあで開催されました。

A型ワイヤレスマイクの周波数移行はPA関連業務の方にはとても大きな問題です。570名もの方が来場され、各社の説明とデモを熱心に聞いていました。


会場の様子









 多くの参加者が来場した
 会場の様子


今回テストが行われたメーカと機種は以下の通りです。
(D:デジタル式、A:アナログ式、WS:ホワイトスペース+710〜714MHz帯)

 1)SENNHEISER: D9000シリーズ(D、WS帯)
           5000シリーズ(A、WS帯)
 2)SONY:     DWXシリーズ(D、WS帯+1.2GHz帯)
 3)beyerdynamic: TG1000シリーズ(D、WS帯)
 4)Panasonic:   DWMシリーズ(D、1.2GHz帯)
 5)SHURE:    ATXシリーズ(A、WS帯)
           UHF-Rシリーズ(A、WS帯)
           ULX-Dシリーズ(D、WS帯)
 6)LECTROSONICS:SM/HHシリーズ(D、WS帯)

新しいところでは、SONYは4モデルでWS帯と1.2GHz帯を全てカバーするラインナップを揃えたこと、beyerdynamicは送信機・受信機ともに1モデルでWS帯をカバーできること(他メーカ製品はいくつかのモデルでWS帯をカバーしている)、Panasonicは日本全国で使える1.2GHz帯のみを対象とした点、LECTROSONICSが加わった、などが挙げられます。


機材









 花道に並べられた
 各社のワイヤレス受信機


音質テストはなんと、男性・女性ボーカルの声と歌とタンバリン等の楽器を、有線マイクをリファレンスにしてワイヤレスマイクと交互に持ち替えるというシビアなものでした。
また、多チャンネル運用のテストはコーラス隊32人(一部16人)がそれぞれマイクをつけて歌いながら舞台・客席をバラバラに動き回るというものでした。
こんなデモはふつうできません。こんな機会だからできた貴重なテストだったと思います。


テストの様子








 男性・女性ボーカルと
 楽器によるリファレンス
 マイクとの比較テストの様子


それにしてもワイヤレスマイクと有線マイクの音質の違いが以前に比べたらだいぶ少なくなってきたのに驚きました。デジタルとアナログの違いも好みの範疇と言えるでしょう。電波の直進性が強く受信の不安定性が心配されている1.2GHz帯の機種ですが、テスト会では特にWS帯との差を感じませんでした。

最後に会場から質問で「WS帯で使用する周波数が例えば3モデルに渡る場合、機器負担してもらえるのは送信機は3台だがマイクヘッドやバッテリーは1台になると聞いた。しかし、マイクヘッドは頻繁に付け替えるように想定されておらず、故障や劣化の原因となる。これでは移行前と同様の使用状況を確保にはならないのでは?マイクヘッドも3台分負担してもらえないか」というのが出されました。ワイヤレスマイクのメーカの方も、マイクヘッドの頻繁な交換は劣化、故障の原因となるので勧められないとコメントしましたが、700MHz利用推進協会の回答は「費用負担は流用できない機器のみで、流用できる付属品は1台分のみの負担という原則の通り。マイクヘッドは流用可能な付属品と考える」というものでした。その場では更なる議論には至りませんでしたが、安全に利用できるようにしたいという利用者の意向を汲んでもらえるように期待したいと思います。

700MHz利用推進協会のHPに2月に行われた4回のテスト会のアンケート集計結果が載っていますが、そのページの本文に「アンケート結果を次のテスト会に活かします」とあるので、今後も開催されそうです。