ある文化施設の音楽練習室で、天井のスピーカから隣の練習室の演奏音が聞こえてくる、という連絡を受けて現場調査に同席しました。

早速、練習室Aにあるドラムセットを叩いてもらい、隣の練習室Bで耳を澄ますと、確かに天井スピーカからドラムの音が聞こえてきます。

音の大きさを測ってみると、練習室A内でのドラム演奏音は103 dBで、練習室Bのスピーカからの音はスピーカから30cmの距離で39 dBでした (ともに騒音レベル※1)。システム的には考えられない大きさで、しかもクリアに聞こえます。練習室Bの暗騒音※2は25 dB未満※3なので、静かな時には聞こえて、しかも音質的に気付きやすいと言えます。

音が伝わる原理は、練習室Aのスピーカ(スピーカAとします)がマイクになって起電し、それが練習室Bのスピーカ(スピーカBとします)に伝わり再生されたと考えられます。
一見別物のマイクとスピーカですが、音と電気を変換する装置としてはどちらも仕組みは同じなので、スピーカがマイクになり得ます。(糸電話を思い出して下さい。)

しかし、スピーカの音→電気の変換効率はマイクよりずっと低いですし、通常、未放送時はスピーカ回線がアンプ側でショートされるので、これ程の音量を再生できるだけの電圧が隣のスピーカにかかるはずはありません。よって、きちんとショートされていない可能性があります。

そこでスピーカBでアンプ側の線路抵抗を測ると約200Ωと高く、試しに近くのEPS内で同系統の回線をショートさせても変化なしでした。これはおかしいということで、今度はスピーカAで同じく線路抵抗を測るとこちらも約200Ω。これらより、練習室の天井スピーカ系統の最初の1台にあたる、控室のスピーカに異常が疑われました。

アンプからのスピーカ回線は控室の天井裏で2系統に分岐しており、そのうちの1つが控室の天井スピーカを経て練習室に繋がっていました。このスピーカを外して確認すると、ビンゴ! スピーカの接続が間違っていました。

接続を直した後は各スピーカの線路抵抗も数Ωに下がり、スピーカBに耳を近づけてもドラム音は全く聞こえない状態に回復しました。

この控室は、実は最近、改修工事が行われ、天井スピーカをいったん取り外したとのことなので、その再取付の際に接続を間違ったようです。また、再取付後の確認を、控室と同系統である練習室のスピーカまで含めて実施していれば問題を発見できたでしょうが、そこまでは気付かなかったのでしょう。

たった1台のスピーカの誤接続が、”別”の部屋で”音漏れ”という異種の現象を起こす・・・・全ては小さな事の積み重ねだと、関係者一同、大きな経験になりました。


実は、類似の現象が色々な施設で思ったよりもしばしば発生しているようです。その全ての原因が誤配線とは限りませんが、今回のケースがひとつの事例として参考になればと思い、ここに載せておきます。


※1 騒音レベル:人の感覚を考慮した音の大きさを表す尺度で、A特性音圧レベルとも言う。単位はデシベル(dB)
※2 暗騒音:目的音(ここではスピーカからの音)以外のその場の騒音のこと。
※3 25dB未満:音圧レベル計(騒音計)が騒音レベルを25dBまでしか測れないのでこう表現しています。

渋谷駅から東急田園都市線の最後尾に乗ったことある方はご存知かも知れませんが・・・。

しばらく前から、渋谷駅で東京メトロの車掌と交代した東急線の車掌が、最初の車内アナウンスをする時に、車掌室と客室との間のドアを開けて喋るようになりました。

アナウンスがきちんと聞こえているかどうかを自分で聞いて確認しているのです。

これはとても重要なことです。実際にどう聞こえているかを気にしていると、自然と聞きやすい話し方や発声をするようになったり、適切な音量で話せるようになっていくからです。

音を聞くなんて当たり前に思いますが、でも、様々な案内放送を聞いていると、実際の音を気にしている話し手は意外と少ないようです。さらに最近では、例えば車内のうるささに応じて自動的にアナウンス音量を調整する装置などに頼ろうとする傾向が強く、ますます音そのものへの関心が薄くなっています。機械は所詮機械。人間のようにはできないのですが・・・。

実際に音を聞いて確認する・・・本質を捉えた東急電鉄の姿勢に拍手です。

メガホンを左右に振りながら話している人をよく見かけます。

でもメガホンは、向いていない方向ではよく聞こえません。
なので、話しの途中でメガホンの向きを変えると、声が聞こえる状態と聞こえない状態が繰り返されます。

これは、結局、"みんな"が話の内容が"分からない"という結果につながります。

左右に広がっている多くの人にメガホンで拡声する時は、左・右や左・中・右のようにエリアを分けて、エリア毎に一文まるごと拡声しましょう。

同じことを何度か話すことになりますが、きちんと伝えるためには必要なことです。
手間を惜しまず実践してみてください。

世界初TOA電気メガホン

ちなみに上の写真は、1954年(昭和29年)に日本の東亞特殊電機(株)[現在のTOA(株)]が開発した、世界初の電気メガホンEM-202です。(TOA社HPより)
電気メガホンって日本の企業が開発した製品なんです。知ってましたか?

13.7.29追記:
厳密には、紙やプラスチックでできた円錐形の筒状のものを「メガホン」といい、電気を使用したものは「電気メガホン」や「トランジスタメガホン」と言います。
TOA社が世界で初めて開発したのは"電気式"のメガホンです。
上記使い方における注意点は、どちらのメガホンにも共通の内容です。
以上、補足・追記いたします。

先日、公民館を建て替えた300席のホールで、エアモニタマイク用入力のないオーディオミキサー(音響調整卓)でどのようにモニタリング機能と操作性を実現するか、関係者で頭を悩せました。

エアモニタマイクとは、音響調整室で客席内の音の状況を把握するために客席に設置するマイクのことで、その音を調整室でモニタースピーカから聞きながらミキサー操作をします。

客席とガラスで区切られた調整室でミキサー操作するためには必須の機能ですが、最近のミキサーにはエアモニタマイクの入力機能がなくて困ります。


音響の専門スタッフが配置されるホールの場合には、スタッフの知識と技術に甘えてやりくりして使って頂いています。それで良い訳ではありませんが、スタッフさんも理解してくれています。

しかし、今回の公会堂のように専門のスタッフが配属されない施設ではそれは出来ません。
むしろ、必要な機能が適切に分かりやすく使えることが、専門スタッフのいる施設よりもより強く望まれると思います。

にも関わらず、こういう施設向きとして発売されている簡易で小型なミキサーほど、エアモニタに限らず、多くの点で実は配慮が足りないと私は思います。(それについてはまた別に)

公会堂以外にも、学校の講堂や公共の体育施設など、同じ問題を抱える現場が多数あります。
どなたか固定設備用として必要な機能と操作性をきちんと実現したミキサーを作ってくれませんか?
協力は惜しみませんから。


ちなみに・・・

アナログミキサー時代、固定設備用と言われるミキサーにはエアモニタマイク用の入力があり、ヘッドアンプ、ファンタム電源、ハイパスフィルターなどが装備されていました。

また、モニタースピーカからは常時エアモニタマイクの音声を出力していますが、検聴ボタンが押された間だけ該当するチャンネルの音声に切り替わるようにもなっていました。

Panasonic、ビクター、TOAなどの国内大手メーカもアナログ時代はそんな固定設備用のミキサーを製造していました。ヤマハはコンサートSR向けに注力していて、固定設備には今もあまり感心がないようです。

さらに、ホールや劇場用に特化された、今は無き、不二音響(株)製(ブランド名:HYFAX)のミキサーは、エアモニタ信号がアサインできるUTIL出力とアサインできないPGM出力とに分かれていて、楽屋やホワイエなどのスピーカにはエアモニタ信号を流せるが、ハウススピーカには間違っても流れないように(ハウリングするため)配慮されていました。

残念ながら上記のような機能をもったミキサーは現状ありません。
そのため本格的なホールや劇場でも、コンサートSR用に開発されたミキサーを使用し、足りない機能は機器を特注したり、前述のように既存の機能のなかでやりくりして使っているのが実情です。

 徒然なるままに・・・? ブログはじめます。

 JR八王子駅南口に先月オープンした八王子市の新しい市民会館、「オリンパスホール八王子」に行きました。コンサートは、西本智実+マルク・ゴレンシュタイン指揮、 ロシア国立交響楽団です。

 

八王子300


このホールは2000人収容の大型ホールですが、非常にコンパクトに納まっていて舞台が近く感じられます。実際、私は3階席の4列目の席でしたが、舞台が遠いという感じは全くありませんでした。

音は低音が良く出てきて、厚みのあるしっかりとした響きという印象で、とても心地よかったです。オケとホールの響きがすごくマッチしていたように思え、ロシア響だからか分かりませんが、日本のホールらしくない響きとも感じました。音響設計は永田音響設計です。

ホールの芸術監督でもある西本さんに送られた盛大な拍手からは、市民の方々の期待が伺えます。

クラシックに限らず、ポップスやミュージカルなどにも十分対応できるホールですので、今後のイベントが楽しみです。

是非一度足を運んでみてください。